医療業界の基礎知識

=2012年度診療報酬改定の動向=

医療業界の基礎知識(最終回)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2012年度診療報酬改定と第6次医療法改正に向けて各種の審議が進められています。
前号で、9月7日の中医協総会で示された「次期診療報酬改定に向けた今後の検討スケジュール」を参考資料として載せました。その後このスケジュールにあわせ、社会保障審議会や中医協総会及び各種分科会の審議が活発化しています。
今回は、こうした流れの中で2012年度診療報酬改定に向けた動きをまとめてみました。

2012年度診療報酬改定に向けて

2012年度の改定は、「医療保険の診療報酬」と「介護保険の介護報酬」が6年ごとに同時改定される年度に当たります。前回の同時改定は2006年度でしたが、この間、高齢化がますます進み、医療・介護ニーズに大きな変化が出てきています。
2012年度の診療報酬改定にあたって厚労省は、2010年度改定で方向付けした「急性期⇒亜急性期(回復期)⇒慢性期」の流れを重視する施策を継続しながら、2012年度改定は「医療⇒介護」の流れを重視した施策(特にリハビリテーション等)への施設機能分化を進めています。そのポイントは

◎医療施設機能の整備・充実及び役割の明確化。特に28万床程度の医療療養病床の整備と介護施設充実
◎地域医療連携の整備・充実と診療報酬での評価
◎マンパワーの充実と配置基準の整備・強化(チーム医療の評価等)

こうした施策を実施するためには多くの課題があります。そのいくつかを挙げてみると

・厳しい国家財政の中で上昇を続ける国民医療費に対し限られた財源の効率的な配分
・高度化する医療機能に対する評価と国民の医療ニーズに対する評価のマッチング
・救急医療の更なる評価
・病院医療従事者の負担の軽減⇒チーム医療の推進とその評価
・急性期、回復期、慢性期の各医療における在院日数の評価
・手術や処置周辺の適正化
・医療と介護の連携と役割分担
・医療計画との整合性(特に施設機能とマンパワー)
・病院、診療所の役割分担と総合医制度の整備
・薬価制度の見直しと後発医薬品の使用拡大

などがあります。
また、9月に社会保障審議会医療保険部会が「次期改定に向けた背景及び論点等の例」として次のような「視点の例」や「方向の例」をまとめ報告しています。

※「視点の例」や「方向の例」

◎「視点の例」・そのⅠ
・医療機関等の機能分化、質が高く効率的な医療の提供
・患者からみて分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質に配慮した医療

○「方向の例」
・高度急性期、急性期等の病院機能にあわせた入院医療の評価
・慢性期入院医療の適正な評価
・医療従事者の負担軽減に向けた評価の在り方(勤務体制等の改善の評価、外来診療の適正な評価、医師と病棟薬剤師等の他職種と役割分担と連携等の評価)

◎「視点の例」・そのⅡ
・充実が求められる領域を適切に評価していく視点

○「方向の例」
・身体疾患を合併する精神疾患救急患者への対応等急性期の精神疾患に対する医療の適切な評価
・認知症の早期診断等、認知症に対する精神科医療の適切な評価
・緩和ケア、小児がんを含む、がん医療の適切な評価
・生活の質に配慮した歯科医療の適切な評価
・手術等の医療技術の適切な評価
・医薬品、医療材料等におけるイノベーションの適切な評価 等

◎「視点の例」・そのⅢ
・効率化余地がある領域を適正化する視点

○「方向の例」
・後発医薬品の使用促進
・市場実勢価格等を踏まえた医薬品、医療材料等の評価 等

※【医療と介護の機能強化・連携に関するもの】

・在宅医療を担う医療機関の役割分担や連携の評価
・早期の在宅療養への移行、地域生活への復帰に向けた取組の評価
・在宅での療養の質の向上に向けた在宅歯科、在宅薬剤管理の充実
・退院直後等の医療ニーズの高い患者への重点化等の訪問看護の充実
・維持期のリハビリテーション等における医療・介護の円滑な連携
・介護施設における医療提供の評価の在り方

以上のように具体的な事例が挙げられています。こうした具体例を基に今後の審議が活発化すると同時に、細部にわたる報告書がまとめられ公表されてきます。
10月に入ってから既に「DPC機能評価係数の見直し案」「外来管理加算」「地域医療貢献加算」「明細書無料発行義務化」などの審議動向が発表になっていますので資料の整理をしておくことが大切です。

2012年度介護報酬改定の論点

前段で、2012年度は診療報酬と介護報酬が同時に改定されることを記しました。介護老人の増加や厳しい国家財政に伴う限られた医療予算の中で、社会保障予算(特に国民医療費や介護費用)を増加させることは並大抵ではありません。こうした環境の中で今回の同時改定では、「医療⇒介護」の流れを重視して行くことが基本政策になっています。
介護報酬改定に向けて現時点でまとめられている論点をあげると、次のような項目が基本となっています。

○在宅における限界点を高める
・24時間対応サービスの創設
・居宅サービスの見直し
・区分支給限度額の見直し

○施設の居住化(住まい化)を進める
・特別養護老人ホームの住まい化
・特定施設、グループホームの住まい化
⇒居宅介護の推進

○認知症にふさわしいサービスの提供
・ケアモデル、ケアパスの作成
・グループホームにおける重度者への対応

○リハビリテーション重視のサービスへの転換
・施設から在宅までの一貫したリハビリの管理
・介護職のリハビリ前置の浸透

○医療と介護の連携・役割分担
・患者の状態に応じた集約化、医療の受け皿としての機能強化
・訪問看護、ケアマネ等に活用
・医療療養病床から介護療養病床への円滑な転換

○利用者に相応しいケアマネジメントの実施
・自立型ケアマネジメントへの転換
・ケアマネジャーの資質

○介護の質の評価
・現状の各種加算の見直し
・施設サービスにおいてプロセス、ストラクチャーに関連したアウトカムの検討

○介護人材の確保
・処遇改善交付金取扱い
・その他

こうした論点をベースに介護における質的・量的拡大を図りながら「医療・介護の提供体制の将来像の例」を示したのが図1です。

医療・介護の提供体制の将来像の例

厚労省は、こうした「医療・介護サービスのネットワーク」を二次医療圏(全国349か所)毎に1か所以上整備して行く予定です。
地域の医療機関が「医療・介護サービスのネットワーク」の中で、どうした機能を整備しどの役割を果たすのか見極めたうえで、きちんとした対応を図ることがますます重要になってきています。

まとめ(最終回の執筆終了にあたって)

2006年以来、60回に亘って医療業界の基礎知識と題し、医療法改正や診療報酬改定の動向、これらに伴う医療機関の機能別変化や医薬品市場に与える影響等、MRに必要な基礎知識を中心に連載してきました。この間、皆様から種々なご批評やご意見をいただきながらの執筆でしたが、今回無事、最終回を迎えることができました。
長い間ホームページの貴重な一部をお借りし連載できましたことを感謝しお読みいただいた皆様に改めてお礼を申し上げます。
ありがとうございました。

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達及び公表資料及び事例図表
2)総務省公表資料(HP
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
・ワールドネット掲載資料及び社内資料
4)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
5)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等
6)日本静脈経腸栄養学会、日本看護協会 他、関係学会等のHP

=チーム医療の推進と理想的な医療連携に向けて=

医療業界の基礎知識(57)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

民主党政権になって早や3人目の総理大臣が生まれました。内外の目は経済政策を筆頭に、最悪に近い雇用環境の改善や、理想的な社会保障政策実現に向けてその財源をどこに求めるのか等、大変厳しい論調を発しています。
9月に入り、いよいよ2012年度の実効策など、新年度から実施すべき諸政策の審議が活発化してきます。医療政策も2012年度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向けた中医協審議などが具体的に始まりました(本稿の最後に、参考資料として9月7日の中医協総会で示された「次期診療報酬改定に向けた今後の検討スケジュール」を載せました)。
こうした動きの中で今回は医療現場で大きな流れの一つになっているチーム医療について、その現状と今後の方向性をまとめてみました。

多様化する医療への対応

政府・与党社会保障改革検討本部は2011年7月に「社会保障・税一体改革案」をまとめ中医協の総会に提示しました。その中の一つとして示されたのが、3)普遍主義、分権的、多元的なサービス供給体制を確立するための施策としての、「多様な主体の連携・協力による地域包括ケアシステム」です。
その基本をなすのが

◎「地域包括ケアシステム」の構築

 ・機能分化やネットワーク構築により、住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを継続的・一般的に受けられるようにする

◎国民の納得と満足を得られる質の担保と効率的なサービスを提供する

◎コミュニティを基礎に、人的・物的資源を選択的・集中的に投下し、機能強化と効率化を同時実施する

⇒安心で良質な医療・介護の提供ネットワーク
 ・急性期医療のリソースの集中投下による入院期間の短縮・早期 社会復帰、リハビリ医療・慢性期医療への機能分化の維持、在宅医療・介護の拡充、チーム医療の推進や人材確保 等
⇒給付の重点化・効率化
 ・高度医療等への対応、医療保険の機能の重点化 等

となっています。
あわせてこうした流れを先取りする形で2012年度の診療報酬改定論議も進んでいます。
次回の診療報酬改定は介護報酬の改定と連動することから、2010年度の改定を参考にしながら、急性期医療、慢性期入院医療、医療と介護の連携(地域医療の整備・充実)等を中心に、具体的な視点・方向がまとめられる予定です。その中心をなすのが「地域完結型医療の実現」と、その実現を具体化するための「マンパワーの充実と配置基準の整備・強化」にあると予想されます。中でもマンパワーを通しての「チーム医療の充実とコ・メディカルの役割評価」が今後のキーになる可能性が高く、多くの審議時間が割かれています。

チーム医療とは⇒推進に係る基本的な考え方

なぜ今、「チーム医療」がポイントになるのでしょうか。
チーム医療の基本は、「コミュニティを基礎に、人的・物的資源を選択的・集中的に投下し、医療機能の強化と効率化を同時に実施する」ことにあります。

◎したがって「チーム医療」とは

・「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供すること」と理解されている

・質が高く、安心・安全な医療を求める患者・家族の声が高まる一方で、医療の高度化・複雑化に伴う業務の増大により医療現場の疲弊が指摘されるなど、医療の在り方が根本的に問われる今日、「チーム医療」は、我が国の医療の在り方を変え得るキーワードとして注目を集めている

・また、各医療スタッフの知識・技術の高度化への取組や、ガイドライン・プロトコール等を活用した治療の標準化の浸透などが、「チーム医療」を進める上での基盤となり、様々な医療現場でチーム医療の実践が始まっている

・あわせて、患者を中心としたより質の高い医療を実現するためには、1人1人の医療スタッフの専門性を高め、その専門性に委ねつつも、これをチーム医療を通して再統合していく、といった発想の転換が必要になっている

◎「チーム医療」がもたらす具体的な効果としては

・疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上が図れる
・医療の効率性の向上による医療従事者の負担が軽減できる
・専門性の発揮等による「医療現場の活性化」が進む
・医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上などが期待される。
・その他

◎今後、「チーム医療」を推進するためには

・各医療スタッフの専門性の向上
・各医療スタッフの役割の拡大
・医療スタッフ間の連携・補完の推進

といった方向を基本として、関係者がそれぞれの立場で様々な取組を進め、これを全国に普及させていく必要があります。

「チーム医療」推進のための医療スタッフと連携の推進

今、医療の現場が「チーム医療」を中心とした連携推進の方向に大きく変わってきています。そのパターンは

①院内での特定疾患患者等に対して、分野ごとの専門スタッフが協力し合う、通常の「チーム医療」
②急性期病院 ⇒ 一般病院⇒慢性期病院・リハビリ病院等 ⇒ 診療所(在宅を含む)及び関連する保険薬局や介護施設等が連携・協力し合う、地域内ネットワークの「チーム医療」

に、大きく分けることができます。
「チーム医療」を推進するにあたっては、患者それぞれの症状や家族の期待に応えることのできる専門性を持った医療スタッフを揃え、医師等による包括的指示を活用し、スタッフ間の連携・補完を図り、役割を充実させることが大切です。
したがって医師・歯科医師やコ・メディカルといわれるスタッフにしても、一般的な資格だけでなく、所属する専門団体が認める、より専門的な資格を持ち、その能力を発揮するようなシステムが充実してきています。
現在「チーム医療」を推進する現場で活躍している主なスタッフ(職種の例)には

・医師 ・歯科医師 ・薬剤師 ・看護師 ・管理栄養士 ・言語聴覚士 ・作業療法士
・理学療法士 ・診療放射線技師 ・臨床検査技師 ・臨床工学技士 ・医療ソーシャルワーカー ・医療リンパドレナージセラピスト ・細胞検査士 等の職種があります。

この他に、医療クラーク等の事務職員や介護現場で活躍する介護福祉士等の介護職員も重要な役割を果たしています。

◎「チーム医療」を推進する医療スタッフ(専門資格等)

※医療に関する広告が可能な専門性資格(2011年8月23日現在・厚生労働省発表)
・医師  (専門性資格 ⇒57団体・55資格名)
・歯科医師(専門性資格 ⇒5団体・5資格名)
・薬剤師 (専門性資格 ⇒1団体・1資格名)
・看護師 (専門資格名 ⇒1団体・27資格名)

このような広告が可能な専門資格の他に、現時点での広告は不可能であるが、将来の広告可能を目指し各種医療団体が一定期間の研修や試験を行い、資格を認定している制度があります。

※認定資格の代表事例
・日本病院薬剤師会認定の専門薬剤師(8資格名)
・日本緩和医療薬学会(1資格名)
・日本生薬学会(1資格名)

多職種(医療スタッフ)による連携の推進

 現在、「チーム医療」の推進に当たっては下記のような数多くのチーム事例が発表されています。

※この内、現時点での診療報酬上で評価されているチーム医療は次の3チームです。
 ・栄養サポートチーム(NST)⇒ 栄養サポートチーム加算 ⇔ 200点(週1回)
 ・感染制御チーム(ICT)  ⇒ 感染防止対策加算    ⇔ 100点(週1回)
 ・呼吸サポートチーム(RST)⇒ 呼吸ケアチーム加算   ⇔ 150点(週1回)

※各種チームの例とスタッフ
・栄養サポートチーム(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師の他に理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、社会福祉士、歯科医師、歯科衛生士 ⇒ 日本静脈経腸栄養学会が認定)
・感染制御チーム(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師 等)
・呼吸サポートチーム(医師、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床工学技士 等)
・緩和ケアチーム(医師、看護師、薬剤師、理学療法士、医療ソーシャルワーカー等)
・口腔ケアチーム(医師、歯科医師、看護師、薬剤師、歯科衛生士 等)
・摂食嚥下チーム(医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師歯科科衛生士 等)
・褥瘡対策チーム(医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士 等)

これらのチームの他に、病院ごとに医療チームを編成し下記のような「チーム医療」を実践している例も数多くあります。

 ・エキスパートナースによる早期離床チーム ・心臓カテーテルチーム ・ME機器関連対策チーム ・移植医療チーム ・臨床倫理コンサルテーションチーム ・救急医療チーム ・集中治療室医療チーム ・慢性疾患医療チーム 等

関係資料として厚生労働省が示した「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進」を載せました(図Ⅰ参照)。

図Ⅰ
医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進

【事例】栄養サポートチーム(以下、NSTと表示)の現況

「チーム医療」として早くからその必要性を評価されていたのが、数多くの医療機関で行われていた「栄養サポートチーム」の活躍です。診療報酬上では2010年度の改定で「NST管理加算」が新設され、「NST加算」として週1回・200点が認められました。
(ここでは「施設基準」「対象患者」「算定要件」の詳細を略しました)
現在、「チーム医療」として最も多くの医療機関で実施されているのが「NST」です。この活動は、医療における栄養管理の重要性から7学会が1団体として設立した「日本栄養療法推進協議会」が厚労省の認可を受けて始まりました。
その後、日本静脈経腸栄養学会が認定した対象職種(当初の医師、管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師の他に、現在は理学療法士、言語聴覚士、作業療法士、歯科衛生士にも拡大)によって構成される栄養管理チームが設置されていることが基準となって拡大してきました。
日本静脈経腸栄養学会が2011年5月現在で発表した学会認定資格登録者総数は、管理栄養士の322名を最多として、薬剤師228名、看護師219名を含め、総勢866名が認定資格登録者となっています。
なお、学会が2011年5月現在で公表している都道府県別関係施設数を表Ⅰ、表Ⅱとしてまとめました。

◎日本静脈経腸栄養学会認定の都道府県別NST稼働施設数
表Ⅰ
日本静脈経腸栄養学会認定の都道府県別NST稼働施設数

◎日本静脈経腸栄養学会認定の都道府県別NST専門療法士認定教育施設数
表Ⅱ
日本静脈経腸栄養学会認定の都道府県別NST専門療法士認定教育施設数

まとめ

厚労省は2012年度の診療報酬改定において「チーム医療」を評価・拡大するための施策を検討しています。その一環が「2012年度チーム医療実証事業」として実施している「チーム医療の効果検証」です。
実証事業は、大病院から中小規模の病院及び診療所・保険薬局まで、様々な規模の施設のチーム医療や、急性期・救急、回復期・慢性期、在宅医療といった数多くの場面での「チーム医療の取り組み」について実証することを基本方針にし、400床以上34施設、200床以上13施設、20床以上15施設、診療所及び保険薬局6施設の合計68施設を委託施設として選定し、その内訳は急性期12施設、慢性期17施設、在宅8施設、感染管理4施設、栄養7施設、薬7施設、医科歯科13施設、病院管理5施設、地域連携2施設、個別疾患30施設、その他3施設となっています。また、1施設320万円の補助を行い、結果は2012年3月までにまとめ、次期診療報酬改定の参考資料とする予定です。
先に国立国際医療研究センターは「国際栄養学雑誌(Nutrition)」に「NSTの導入で1入院あたり40万円の医療費を削減した」と発表しました。その内容のポイントは、

・白血病などで自家造血幹細胞移植を受けた患者にNSTを導入し、1入院あたり40万円の医療費削減効果があった

・特に「自家造血幹細胞移植による治療」は、術後、食欲不振、高血糖・肝障害などの合併症が起きやすい

・01年~08年に実施した移植169例をNSTの導入前後で比較した結果、NSTの導入で移植関連の合併症が減り、入院期間は平均8日短縮、入院医療費も40万円の削減となった

また、日本看護協会は2012年度の診療報酬改定に向けて「チーム医療の評価・充実」の要望書を提出しました。その基本内容は

◎次期診療報酬改定時に「新たな評価項目」を

 ・ 認知症患者管理加算(認知症ケア体制の整備)
 ・ 糖尿病チームケア加算(糖尿病ケア体制の整備)
 ・ 救急患者院内トリアージ加算(救急医療の整備・強化)
 ・ 周産期入院体制加算(周産期医療におけるチーム医療の評価)
 ・ ハイリスク妊産婦指導料
 ・ 生活機能維持チーム加算

◎現行の加算項目の「評価の強化」を

 ・ 「呼吸ケアチーム加算」の体制強化
 ・ 「がん患者カウンセリング料」の強化
 ・ 「医師事務作業補助体制加算」の強化
 ・ 「小児入院医療管理料」(現行配置より手厚い5対1看護の創設)

です。全てが初めに記した、「医療に関する広告が可能な専門性資格の中の看護師資格(27資格名)」と連動しています。

今回は「チーム医療」についての動きをまとめてみました。記述すべき事柄が多くHP紙面の都合上、内容的には書き足りません。これから、2012年の診療報酬改定に向けて、専門紙や各種関係雑誌等に多くの関連記事が掲載されてきます。MRにとっては、専門性の高いこうした動きをいち早くキャッチし医療現場に対応できるか、大変重要になります。
今までのような、医師・薬剤師中心のプロモーション活動から脱却して関係する薬剤を通し、医療チームの一員としての行動をすることが大切であり、医療チーム全員に情報の共有を通してチームにどれだけ貢献できるか、意識改革が必要です。

参考資料

◎次期診療報酬改定に向けた今後の改定スケジュール案

厚生労働省は9月7日の中医協総会で、2012年度診療報酬改定に向けた今後の検討スケジュールを下表のとおり示しました。
基本的には、9月中に「視点・方向の概論」を提出・検討し、10月に「具体的な視点・方向」を、11月に「基本方針案」の検討を行い、年内に「基本方針提示」のスケジュールになっています。

次期診療報酬改定に向けた今後の改定スケジュール案
(中央社会保険医療協議会総会 2012年9月7日 配布資料より引用)

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達及び公表資料及び事例図表
2)総務省公表資料(HP
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
・ワールドネット掲載資料及び社内資料
4)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
5)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等
6)日本静脈経腸栄養学会、日本看護協会 他、関係学会等のHP

地域別・医療施設機能別取得状況

医療業界の基礎知識(56)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

今回は、第6次医療法改正に向けて整備が進められている「医療提供体制の見直しと医療機関群の設定及び病院機能及び役割変化」の動向を追いながら、現時点における医療施設毎に持っている機能を整理し、地域ごとの現況を図表等にまとめてみました。

「新医療計画制度」の基本

現在進められている「新医療計画制度」のポイント(趣旨)は

【1】各都道府県が、国が定める基本方針に即して、地域の実情に応じて当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために策定
【2】医療提供の量(病床数)を管理するとともに、質(医療連携・医療安全)を評価
【3】医療機能の分化・連携(医療連携)を推進することにより、急性期から回復期、在宅療養に至るまで、地域全体で切れ目なく必要な医療が提供される「地域完結型医療」を推進
【4】地域の実情に応じた数値目標を設定し、PDCAの政策循環を実施

にあります。
その中で、医療計画に対する記載事項として、下記の項目が明示されています。

・4疾病5事業(表Ⅰ参照)に係る目標、医療連携体制及び住民への情報提供推進策
・居宅等における医療の確保
・医師、看護師等の医療従事者の確保
・医療の安全の確保
・二次医療圏、三次医療圏の設定
・基準病床数の算定 等

(表Ⅰ)
「4疾病5事業」の整備と「医療連携体制」の構築

また、「基準病床数制度」では、

・二次医療圏等ごとの病床数の整備目標であるとともに、それを超えて病床数が増加することを抑制するための基準となる病床数(基準病床数)を算定
・基準病床数制度により、病床の整備を病床過剰地域から非過剰地域へ誘導し、病院・病床の地域偏在を是正する

とし、あわせて「医療連携体制の構築・明示」では

・4疾病5事業ごとに、必要な医療機能(目標、医療機関に求められる事項等)と、各医療機能を担う医療機関の名称を医療計画に記載し、地域の医療連携体制を構築
・地域の医療連携体制を分かりやすく示すことにより、住民や患者が地域の医療機能を理解

となっています。

新医療計画に基づく4疾病5事業の偏差値トップは千葉県

厚生労働省が「医療計画の見直し等に関する検討会」で公表した「各都道府県の新たな医療計画にかかる調査研究報告書」によると、4疾病5事業について同検討会で提案された「全国で把握すべき指標」の実績値と、その指標の各都道府県の医療計画における数値目標への採用率を偏差値にして分析したところ、ともに偏差値50以上の疾病・事業数が最も多いのは千葉県の4疾病3事業でした。

◎4疾病で偏差値50以上は千葉・新潟・岐阜・香川

この調査研究は、医療計画を整理・分析することにより都道府県間の計画内容の差異を明らかにし、今後の適切な評価のための基礎資料を得る目的で実施されました。
分析に用いた「全国で把握すべき指標」は、4疾病では、

・り患率
・健(検)診受診率
・ハイリスク群の減少率
・総治療期間
・地域連携(パス利用)率
・死亡率などで構成されています。

5事業については、医療機能情報公開率や地域医療カバー率を共通に、

・休日夜間診療に参加する医療機関割合(小児医療)
・低出生体重児出生率(周産期医療)
・救命救急センターA評価割合(救急医療)
・DMTA研修参加割合(災害医療)
・代替医師派遣延べ数伸び率(へき地医療)

など、各事業に特徴的な指標が設定されています。
分析結果によると、千葉県はがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、小児医療、周産期医療、救急医療の4疾病3事業で、各指標の実績値・採用率がともに偏差値50以上でした。これに次いで疾病・事業数が多いのは、新潟県の4疾病2事業、熊本県の3疾病3事業、岐阜県・香川県の4疾病1事業となっています(表Ⅱ参照)。
評価結果では、実績値・採用率の偏差値がともに50未満の場合、医療計画に「問題あり」としていますが、地域的な傾向として九州地方など西日本が多くなっています。

(表Ⅱ)
4疾病で偏差値50以上は千葉・新潟・岐阜・香川

ブロック別「医療施設機能」の整備状況

医療計画に係る医療連携体制の基本は、住民への情報提供推進策に基づく「地域完結型医療」の推進にあります。
医療情報の提供にあたっては、都道府県単位、各医学会単位、医療機関単位など、各種団体から多くの情報提供がなされています。したがって医療関係者は勿論のこと、患者も多種多様な情報ソースを基に地域の医療機関を選択しています。
ここではブロック毎に、どのような医療施設機能をもった病院が、どのくらい登録されているのか整理してみました。ここに載せた機能分類は、地域の中核的な役割を果たす上で重要な機能と考えていますが、病院ごとに全ての機能を持っていなければならいものではありません。しかし地域の人口や高齢化率などの医療環境や周囲の病院等の施設状況なども加味しながら、地域にあった施設づくりをする必要があります。
今後、当該地区での医療施設整備が進められる中では、病院の持つ機能別役割が最も重要であり、地域の医療連携体制を構築する上で大きなポイントになります。そうした意味でここに載っている病院がどこなのか、どのような特徴があるのか、きちんと整理しそれぞれの医療機関にあった対応をすることが必要になってきます(表Ⅲ参照)。

(表Ⅲ)
ブロック別;医療施設機能整備状況

まとめ

9月からまた新しい内閣になります。その都度、政策が変わってくるため国民にとっては戸惑いもあり、はなはだ迷惑な話です。新しい内閣が国民に幸せをもたらす内閣であることを期待します。特に医療を含む社会保障政策にはそれ相当の費用が掛かります。その費用をどこから捻出するのか、中途半端な財政策を遂行するとすれば上述したような「医療計画制度」も台無しです。実行する医療政策が多くの国民を納得させることのできる内容で、常に継続できるものであってほしいと期待しています。

次回からは、現在、各医療機関が積極的に取り組み成果を上げている「チーム医療」についてまとめてみます。

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達及び公表資料及び事例図表
2)総務省公表資料(HP
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
・ワールドネット掲載資料及び社内資料
4)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
5)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等

医療提供体制の見直しに向けて
=医療機関群の設定と病院機能及び役割変化=

医療業界の基礎知識(55)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2012年度診療報酬改定に向けた審議が着々と進められています。その基本となるのが医療提供体制の見直しに伴う「施設機能の整備と充実」及び「機能別役割の明確化」です。
前回(6月号)でも記しましたが見直しのポイントは、「患者の病態、ニーズを重視した整備」を図るための、二次医療圏を中心としたシームレスな医療提供体制の整備・充実にあると言われています。
今回はこうした動きの中から「医療機関群の設定」と「病院機能及び役割変化」について審議の動向と現況をまとめてみました。

医療機関群設定の視点(基本的な考え方)

現在の医療機関群は医療制度上、次のように位置づけられています。その基本は医療機関群ごとに共通する機能や役割、診療特性などからなっています。

【制度上の位置づけのある医療機関群】

○特定機能病院
○大学病院本院(特定機能病院である大学病院)
○国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)
○地域医療支援病院
○がん診療連携拠点病院(都道府県認定及び地域認定)
○臨床研修指定病院

【制度上の位置づけは必ずしも明確でないが、診療機能として他の医療機関との違いがあると考えられる医療機関群】

○小児専門病院(小児入院管理料算定施設等)
○ケアミックス病院(療養病床併設医療機関等)

上記とは別に、制度上の位置づけはないが地域の拠点的な機能施設として特に指定を受けている医療機関群として、次のような施設があります。

○治験中核及び拠点病院
○救命・救急センター
○僻地・過疎地支援病院 
○災害拠点病院

こうした医療機関群をより高機能な個々の医療機関として整備するために今後も審議を重ね、秋口にはより具体的な内容が発表されるものと考えられます。

医療機関の一般的な分類

上記のような医療制度上の分類とは別に、診療報酬制度等では次のような分類で評価されています。

【1】病院(病床分類:平成15年9月から)

・精神病床、結核病床、感染症病床、一般病床、療養病床

【2】病院(種類・名称分類)

・特定機能病院(大学病院及びナショナルセンター)
・特定承認保険医療機関(高度先進医療の特定療養費取扱い指定病院) 
・地域医療支援病院   ・へき地医療支援病院   ・臨床研修指定病院  
・救命救急センター(ERC)   ・ICU、CCU、HCU等
・地域がん診療拠点病院   ・救急医療施設(一次救急、二次、三次)
・療養病床   ・緩和ケア病棟(ホスピス)    ・回復期リハビリ病院(病棟)
・特殊疾患療養病棟   ・急性期特定入院病棟   ・専門病院 
・単科専門病院   ・中小規模病院(20床以上190床以下)   
・大規模病院(200床以上)
・その他として ・DPC対象認定病院   ・総合入院体制加算病院  等

【3】診療所

・無床診療所   ・有床診療所(19床以下)

【4】その他の医療施設及び医療関連施設

・助産所
・介護老人保健施設(老人保健施設⇒中間施設)
・介護療養型医療施設(中間施設)

【5】薬局

・保険薬局(保険調剤薬局)

医療機関数の現状

病院等医療機関はこうした分類をとおして診療及び施設機能の提供を果たしています。反面、日本では人口当たりでみると、他の西欧先進諸国と比べ病院数及び病床数共に高い反面、医師数やコ・メディカル数においては低い数字が出ています。また、医療費を都道府県別に比べてみると大きなばらつきが見られます。
こうしたバラつきを見直そうと進めているのが「医療提供体制の見直し」です。今回進められている医療機関群の設定と役割は、この見直しを通して地域に合った(基本的には二次医療圏)医療施設や機能の充実を図り、併せて病床数や医療従事者の適正配置を進めようとするものです。
参考までに、7月12日発表された「医療施設動態調査2011年4月末現在」の状況を表1、表2、表3として掲載しました。病院数、病院病床数、ともに減少していることが分かります。

表1 種類別に見た施設数

表2 種類別に見た施設数

表3 病院病床数の推移

このように病院数、病床数共に着実に減少していることが分かります。この減少する原因の多くは医療機関群の整備・拡大によって起こる役割の変化です。なかでも機能変化が在院日数の減少につながり、続いて病院の役割変化となって現われます。この役割変化は連携パス等による、地域内における医療機関同士の連携と提供機能強化につながり、必然的に患者による医療機関を選択する基準となってきます。その結果が医療機関の継続発展となったり、規模縮小等につながります。

まとめ

厚労省は2012年度の診療報酬改定や向けて「医療機関群設定」に向けた検討を重ねています。以前にも記しましたが医療提供体制の見直しによって医療市場は大きく変わります。
必然的に医薬品の使用動向にも影響を与えます。
次回はこうした動きを追いながら医療施設毎に持っている機能を整理し、地域ごとの医療動向をまとめてみます。

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達及び公表資料及び事例図表
2)総務省公表資料(HP
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部刊行
・通信教育講座「医療制度編20010年-2011年度版」
4)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部・
・ワールドネット掲載資料
・社内資料
5)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
6)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等

医療保険制度を理解するために…そのⅢ=社会保障改革政府案にみる医療提供体制と施設機能の見直しについて=

医療業界の基礎知識(54)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」は、2011年2月の会議発足以降、震災での中断を挟みながら10回を超える会議を行ってきました。
この間、5月12日提出の厚生労働省改革案及び2回にわたって総理が示した事項や、与党(民主党・国民新党)報告等が出され検討されてきましたが、これ等を総合的に勘案した最終案が、6月2日の「社会保障改革に関する集中検討会議」で示され、医療に関する項目としては、「医療サービスの提供体制の効率化・重点化と機能強化の具体策等」を盛り込んだ内容が、社会保障改革案としてまとめられました。
今号では、その中から「社会保障改革政府案にみる医療提供体制と施設機能の見直しについて」と題し、そのポイントをまとめてみました。

改革の優先順位と個別分野における具体的改革の方向

◎改革の優先順位

厚生労働省案に示す「社会保障制度改革の基本的方向性」(1.全世代対応型・未来への投資、2.参加保障・包括的支援(全ての人が参加できる社会)、3.普遍主義、分権的・多元的なサービス供給体制、4.安心に基づく活力)を踏まえ、

【1】子ども・子育て支援、若者雇用対策
【2】医療・介護等のサービス改革
【3】年金改革
【4】制度横断的課題としての「貧困・格差対策(重層的セーフティネット)」「低所得者対策」

についてまず優先的に取り組むこととし、【2】では次のように示されています。

◎医療・介護等のサービス改革

【1】サービスの提供体制の効率化・重点化と機能強化を図る。そのため、診療報酬・介護報酬の体系的見直しと基盤整備のための一括的な法整備を行う。
・病院・病床機能の分化・強化と連携、在宅医療の充実等、地域包括ケアシステムの構築・ケアマネジメントの機能強化・居住系サービスの充実、施設のユニット化、重点化に伴うマンパワーの増強
・平均在院日数の減少、外来受診の適正化、ICT活用による重複受診・重複検査・過剰薬剤投与等の削減、介護予防・重度化予防

【2】保険者機能の強化を通じて、医療・介護保険制度のセーフティネット機能の強化・
給付の重点化などを図る。
a)被用者保険の適用拡大と国保の財政基盤の安定化・強化・広域化
 ・短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、市町村国保の財政運営の都道府県単位化と併せ財政基盤を強化
b)介護保険の費用負担の能力に応じた負担の要素強化と低所得者への配慮、保険給付の重点化
 ・1号保険料の低所得者保険料軽減強化
 ・介護納付金の総報酬割導入、重度化予防に効果のある給付への重点化
c)高度・長期医療への対応(セーフティネット機能の強化)と給付の重点化
 ・高額療養費の見直しによる負担軽減と、その規模に応じた受診時定額負担等のせた検討
d)その他
 ・総合合算制度、高齢者医療制度の見直し、低所得者対策・逆進性対策等の検討
 ・後発医薬品の更なる使用促進、医薬品の患者負担の見直し、国保組合の国庫補助の見直し、高齢者医療費支援金の総報酬割導入、70~74歳2割負担

上記の項目にもみられるように「医療・介護等のサービス改革」については、多岐にわたる範囲で改革が求められています。
中でも、病院・病床機能の分化・強化と連携、在宅医療の充実などを推し進める改革シナリオのなかでは、現行の「一般病床」を「高度急性期」「一般急性期」「亜急性期等」に再編、「地域一般病床」を創設するとして、「将来像に向けての医療・介護機能強化の方向性のイメージ」を示しています(図1 参照)。
改革シナリオによると、2011年度の「一般病床」107万病床から、2025年度には「高度急性期」18万床、「一般急性期」35万床、「亜急性期等」26万床、「地域一般病床」24万床に再編するとともに、平均在院日数の短縮による効率化を図るため、「一般病床」で2011年には19~20日程度だったものを、2025年度には「高度急性期」15~16日、「一般急性期」9日、「亜急性期等」60日、「地域一般病床」19~20日とする【医療・介護サービスの需要と供給(必要ベッド数)の見込み】を明示しています(表1及び表2 参照)。
これは医療施設機能の向上を図ることにより、サービスの効率化・重点化だけでなく、早期の退院・在宅復帰に伴い患者のQOLも向上させることが最大の狙いであるとみられています。ただ単純に病院・病床機能の分化と言っても、地域によっては医療施設等の資源が十分でないところも多々あり、バラつきが見られることから、地域医療計画の見直し等と連動させながら整備を急ぐ必要もあり、今後の議論に影響を及ぼしてくるとみられています。

【将来像に向けての医療・介護機能強化の方向性のイメージ】
将来像に向けての医療・介護機能強化の方向性のイメージ

【医療・介護サービスの需要と供給(必要ベッド数)の見込み】
医療・介護サービスの需要と供給(必要ベッド数)の見込み

【参考:医療・介護分野における主な充実、重点化、効率化要素】
参考:医療・介護分野における主な充実、重点化、効率化要素

医療・介護サービスの需要と供給が医療現場に与える影響

病院等の役割と持つべき機能及び近い将来の必要病床数が明示されたことで医療現場(医療市場)は大きく変化してきます。
図1でも示されているように「施設」から「地域」へ、「医療」から「介護」へと医療現場が誘導される中で、細川厚労相は民主党政権が2009年の衆院選マニフェストで当面凍結するとした前政権の「介護療養病床の廃止案」を今回初めて認め、介護療養型老人保健施設などへの転換を完了する方針を打ち出しており、将来的には病床全体の減少が避けられない状況にあります。

◎改革ポイントの一つに「地域一般病床」の創設を明示

前段で記したように今回の改革案のポイントの一つに、現行は「一般病床」として評価されている107万病床を、2025年度には「高度急性期」18万床、「一般急性期」35万床、「亜急性期等」26万床、「地域一般病床」24万床に再編する案が出されました。図2にも示しているように3区分されている「一般病床」とは別に、地域おける多様な医療ニーズに対応できる病床として「地域一般病床」を創設する案です(図2 参照)。

【地域一般病床を中心とした医療連携の在り方】
地域一般病床を中心とした医療連携の在り方

【地域一般病床の機能と役割】
・地方における一般病院の多くは、亜急性期の患者を多く入院させ、長期入院に対応せざるを得ない状況にある。これを

⇒地域基幹病院並みの施設機能は持たないが、急性期入院を要する一般患者に対応できる施設機能を整備するとともに、在宅療養や療養型病床施設の後方支援として、緊急時の急性期的な対応が要求される状態の、軽~中程度の急性期を担う施設機能を持っている(地域内における患者の急性増悪への対応と基幹病院への転送等、地域内における医療連携の中間的役割)。

【地域一般病床や地域内中小病院の取組課題】
・地域ニーズにあった専門特化や総合的機能(急性増悪患者への初期対応等)

⇒単科専門、領域専門等の急性期医療に特化
⇒急性期病院との連携強化
⇒在宅や介護施設との連携強化(複合化)

・地域内に大きな競合病院がない場合は急性期病院を選択し機能を整備

このように現行の一般病床が、より機能別に見直されるようになると、現状のDPC取得病院の全てが急性期専門病院として存在できるとは限りません。
今回の「社会保障改革政府案」は将来予測(2025年)として「医療提供体制と施設機能の見直し」がまとめられていますが、これを先取りする形で近い将来、第6次医療法改正が行われます。巷間伝わる改正案としては

◎医療提供体制の整備・充実及び役割の明確化

・シームレスな医療提供体制の整備(入口と出口の整備)
・患者の病態、ニーズを重視した整備
・地域における急性期拠点病院への集約化
・地域医療支援センターの設立と「地域医療支援病院」の承認要件の強化・拡充
・大学病院プラス数百病院による高度急性期(地域中核)医療提供体制に
・エビデンスに基づいた判断と整備
・在院日数の短縮が課題となる一般急性期と回復期医療病床の今後の在り方(診療報酬上での評価の見直し等)
・各ステージにおけるリハビリテーションの重要性と評価
・地域の中小病院の機能の明確化(回復期リハ、初期救急対応、一定の医療レベルの提供 等)

◎ 地域医療連携の整備・充実

・マンパワーの充実と配置基準の整備・強化(特に急性期中核機能としてのマンパワーの確保と高度な医療の維持)
・チーム医療の拡充とコ・メディカルの役割評価
・地域連携パスの評価と活用
・看護体制の強化と診療報酬上での評価充実
・病院薬剤師の評価体制

◎ 身近な地域での多様なサービス体制の整備

◎ 国民が安心できる医療サービスの実現

以上のように、医療機関の持つべき機能を明確化し、地域内において果たすべき役割を評価するシステムが確立してきます(図3:「医療・介護の提供体制の将来像の例」参照)。高齢化社会の到来によって多様化する患者ニーズ(特に地域内ニーズ)にきちんと対応できる医療機関に患者が集中します。その見極めが今後の大きな課題になると同時に、データに即した活動が診療報酬での適正評価となってきます。

【医療・介護の提供体制の将来像の例】
医療・介護の提供体制の将来像の例

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達及び公表資料及び事例図表
2)総務省公表資料(HP
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部刊行
 ・通信教育講座「医療制度編2010年-2011年度版」
4)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
 ・ワールドネット掲載資料
 ・社内資料
5)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
6)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等

医療保険制度を理解するために…そのⅡ=医療費適正化計画と医療提供体制の見直し=

医療業界の基礎知識(53)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

第6次医療法改正に向けて各種の審議が活発化しています。その中心となっているのが確実に増え続ける医療費の適正化対策で、中でも大きな課題が「医療計画の見直し」です。
医療計画は、地域の体系的な医療提供体制の整備を促進するため、医療資源の効率的活用、医療関係施設間の機能連携などの確保を図ることを目的に、1985年12月の第1次医療法改正によって制度化されました(1986年8月施行)。
1990年度からは、都道府県単位に作成された「都道府県医療計画」の着実な推進を図るため、日常生活圏である二次医療圏ごとに地域の特性を踏まえた、より詳細な具体的施策を盛り込んだ「地域保健医療計画」を策定・推進することになりました。
その結果、医療計画は都道府県ごと、地域保健医療計画は二次医療圏ごとに策定することが決められています。
その後、第3次医療法改正における「地域医療支援病院」および「療養型病床群(現在の療養病床)」の整備目標とともに、第4次医療法改正によって新しい病床区分が導入された後、次のように「都道府県医療計画」へ記載すべき事項が決められました。

【1】二次医療圏として区分する区域の設定
主として病院の病床(【2】に規定する病床ならびに精神病床、感染症病床および結核病床を除き、診療所の療養病床を含む)の整備を図るべき地域的単位として区分する区域の設定に関する事項

【2】三次医療圏として区分する区域の設定
2つ以上の二次医療圏を併せた区域で、主として(厚生労働省令で定める)特殊な医療を提供する病院の療養病床または一般病床で、当該医療に係るものの整備を図るべき地域的単位としての区域の設定に関する事項

※1 この区域については、原則として都道府県の区域を単位として設定することとなっています。ただし、北海道のように区域が著しく広いなどの場合は、2つ以上の三次医療圏を設定することもできます。
※2 厚生労働省令で定める特殊な医療とは、次の4つです。
・先進的な技術を必要とするもの
・特殊な医療機器の使用を必要とするもの
・発生頻度が低い疾病に関するもの
・救急医療であって特に専門性の高いもの

【3】療養病床および一般病床に係る基準病床数、精神病床に係る基準病床数、感染症病床に係る基準病床数ならびに結核病床に係る基準病床数に関する事項

【4】地域医療支援病院の整備の目標、その他機能を考慮した医療提供施設の整備目標に関する事項

【5】医療提供施設の設備、器械または器具の共同利用等病院、診療所、薬局その他医療に関する施設の相互の機能の分担および業務の連携に関する事項

【6】休日診療、夜間診療等の救急医療の確保に関する事項

【7】へき地の医療の確保が必要な場合には、当該医療の確保に関する事項

【8】医師および歯科医師ならびに薬剤師、看護師その他の医療従事者の確保に関する事項

【9】前各号に掲げるもののほか、医療を提供する体制の確保に関する必要な事項

の9項目です。
第5次医療法改正後は、一次から三次といった階層型の医療提供体制から、住民・患者の視点に立った「日常医療圏」(イメージは二次医療圏)単位の診療ネットワーク作りが柱になっています。具体的には、新たに医療計画へ盛り込む事項として、

(1)日常医療圏の中で保健医療福祉サービスを完結(連携による切れ目のない保健医療介護の提供)→ 図1参照
(2)がんや脳卒中、糖尿病など主要な疾病ごとに診療ネットワークを構築 → 図2参照
(3)期待される保健医療提供体制の数値目標や達成するための具体的方策の3つが示されました。

図1 住民・患者の視点に立った「医療提供体制」の転換イメージ
高齢世代人口と生産年齢人口の比率

図2 「4疾病5事業」の整備 と「医療連携対策」の構築
高齢世代人口と生産年齢人口の比率

医療費適正化計画の基本

「医療費適正化計画」は、2008年度から実施された厚生労働省の肝いり政策の一つで、5年を1期としています。計画の柱は、2012年度の特定健診実施率と特定保健指導終了率をそれぞれ70%、45%に引き上げる「生活習慣病対策」と都道府県ごとにバラつきがある「入院日数(平均在院日数)短縮策」の2つを柱にした医療費の適正化策にあります。

「生活習慣病対策」は、医療費の伸びの要因が高齢者の生活習慣病にあるとして、これを予防するための対策と国民の疾病に対する意識向上を図ることを目標にしています。また、「入院日数(平均在院日数)短縮策」については、一部に言われる「平均在院日数が高いことが医療費の増加と関係する」との考えから、医療機関の機能分化や連携をとおして病床の効率的な活用を目指すことを目標にしています。

○「医療計画制度」の趣旨と基本内容

(1)各都道府県が、厚生労働大臣が定める基本方針に即して、かつ、地域の実情に応じて、当該都道府県における医療提供体制の確保を図るために策定
(2)医療提供の量(病床数)を管理するとともに、質(医療連携・医療安全)を評価
(3)医療機能の分化・連携を推進することにより、急性期から回復期、在宅療養に至るまで、地域全体で切れ目なく必要な医療が提供される「地域完結型医療」を推進
(4)地域の実情に応じた数値目標を設定し、PDCAの政策循環を実施

○基準病床数制度の実施

(1)二次医療圏等ごとの病床数の整備目標であるとともに、それを超えて病床数が増加することを抑制するための基準となる病床数を算定
(2)基準病床数制度により、病床の整備を病床過剰地域から非過剰地域へ誘導し、病院・病床の地域偏在を是正

医療連携体制の構築・明示

(1)四疾病五事業ごとに、必要な医療機能(目標、医療機関に求められる事項等)と各医療機能を担う医療機関の名称を医療計画に記載し、地域の医療連携体制を構築
(2)地域の医療連携体制を分かりやすく示すことにより、住民が地域の医療機能を理解

◎医療費適正化計画の中間結果
こうした中で厚生労働省は4月8日、全国医療費適正化計画の進捗状況に関する中間評価の概要を公表しました。その概要は以下の通りです。

全国医療費適正化計画中間評価(概要)

2011年4月8日・厚生労働省保険局

1.医療費適正化計画の概要

・国及び各都道府県は、5年を1期として医療費適正化計画を定め、中間年度に進捗状況に関する評価(中間評価)を行う。(2008年医療制度改革で創設)
・平成20年度に策定した全国医療費適正化計画では、国民の健康の保持の推進及び医療の効率的な提供の推進について目標と取組を設定。

2.医療費を取り巻く現状

○医療費:33.1兆円(2006年) → 36.0兆円(2009年実績見込み)

図3 国民医療費の動向
高齢世代人口と生産年齢人口の比率

○平均在院日数は減少。32.2日(2006年) → 31.3日(2009年)

※ 医療の効率的な提供の推進により2012年において29.8日にすることを目標として定めている。
・療養病床数(回復期リハビリテーション病棟を除く)は減少。
・療養病床全体:35.2万床(2006年10月) → 32.0万床(2009年7月)
うち医療療養:23.4万床(2006年10月) → 22.7万床(2009年7月)
介護療養:11.8万床(2006年10月) →  9.3万床(2009年7月)

3.目標・施策の進捗状況等

(1)国民の健康の保持の推進
○特定健診実施率:38.9%(2008年:公表値) → 40.5%(2009年:速報値)

※平成24年度において70%とすることを目標として定めている。
・健保組合と共済組合が相対的に高く、市町村国保、国保組合、協会けんぽ、船員保険において低いという二極構造。
・国においては、集合契約の円滑な締結やがん検診等との同時実施の促進、広報による制度の普及啓発、有効な取組の把握等を行っている。
・都道府県においては、各種研修会の実施、連絡会議の設置、市町村国保への技術的助言、
・マスメディア・HP等を活用した広報等を行っている。
・保険者の取組としては、がん検診との同時実施、未受診者への受診勧奨、未受診理由等の把握、機会を捉えた個別通知の実施、地域人材の活用等が有効。

○特定保健指導終了率:7.7%(2008年:公表値) → 13.0%(2009年:速報値)

※平成24年度において45%とすることを目標として定めている。
・市町村国保が相対的に高い。
・保険者の取組としては、電話や個別訪問による個別通知の実施、健診から初回面接までの期間の短縮、未利用者への利用勧奨等(特に電話や個別訪問)が有効。
・一般的な住民向けの健康増進対策
※喫煙に関する普及啓発、食生活に関する普及啓発、運動の習慣化に関する普及啓発を都道府県・市町村が実施。

(2)医療の効率的な提供の推進
○医療機関の機能分化・連携

・地域連携パスに関する診療報酬算定の届出をしている医療機関は増加。

○地域連携診療計画管理料:78(2006年) → 613(2009年)

○地域連携診療計画退院時指導料:222(2006年) → 2,106(2009年)

・地域連携パスに関する運営協議会の設置、県内におけるパスの標準化、パスのモデルの公表、パスに関する研修等、地域連携パスの普及に関する取組を多くの都道府県が実施。
・かかりつけ医・かかりつけ薬局の普及啓発に関する取組を多くの都道府県が実施。

○在宅医療・地域ケアの推進

・訪問看護ステーション数は横ばい。5,470(2006年) →  5,434(2009年)
・在宅療養支援診療所数は増加。  9,434(2006年) → 11,955(2009年)
・訪問看護師等の在宅医療に関わる各種人材への研修、在宅医療関係者で聴構成される協議会の運営を多くの都道府県が実施。

○療養病床の再編成

・全国医療費適正化計画において、療養病床の目標数を定めていたが、計画に則して再編成を推進することが実態にそぐわないのではないかとの懸念があることから、療養病床に係る目標は凍結し、目標数へ向けた機械的削減は行わない。
・患者の状態像等に応じて医療機関が自主的に行う病床転換を円滑に進めるための支援は、引き続き必要。

(3)その他医療費適正化の推進に関する取組(都道府県独自の取組)
○適切な受診行動の促進・レセプト点検

・重複受診者等に対する保健師による訪問指導、医療費通知等を保険者が実施。
・レセプト点検の充実強化を図るため、レセプト点検員の資質向上のための研修会、市町村国保のレセプト点検による査定率等に応じた都道府県調整交付金による支援を都道府県が実施。

○後発医薬品の使用促進

・パンフレットや後発医薬品希望カードの配布、自己負担差額通知の実施に対する助成、普及促進研修会等を都道府県が実施。

4.今後の取組

○特定健診等実施率の向上

・中間評価の内容を踏まえ、各保険者が実施率向上に有効な取組を推進していくことが必要。
・特定健診等の実績に基づくインセンティブ制度のあり方や特定健診の項目等について、本年より検討会で議論を開始。

○医療の効率的な提供の更なる推進

・病院・病床の役割分担を更に進めるとともに、急性期医療の機能を強化し、リハビリ・在宅医療などの充実・連携を図ることにより、継ぎ目のない医療提供体制の構築。
・介護療養病床については、現在国会に提出している法案において、転換期限を6年延長。

○都道府県独自の取組の推進

・医療費適正化を計画的に進めるには、都道府県が主体的な取組を行うことが重要。全国計画や他県の中間評価の内容も踏まえ、有効な取組の導入の検討を行う。

まとめ

今回は先に発表された「全国医療費適正化計画中間評価」を中心にまとめてみました。「平均在院日数の短縮」や「地域医療計画の見直し」を経て医療機関の役割は必然的に変わってきます。こうした動きの中で第6次医療法改正の基本は

◆ 医療施設機能の整備・充実及び役割の明確化
・地域医療支援センターの設立と「地域医療支援病院」の承認要件の強化・拡充

◆ 地域医療連携の整備・充実
・平均在院日数の短縮
・身近な地域での多様なサービス体制の整備
・国民が安心できる医療サービスの実現

◆ マンパワーの充実と配置基準の整備・強化
・チーム医療の拡充とコ・メディカルの役割

などにあるといわれています。これらによって医療機関の持つべき機能など、医療経営環境は大きく変化します。次回はこのような流れの中で、医療機関の機能別役割変化についてまとめてみます。

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達資料
2)総務省公表資料(HP
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部刊行
・通信教育講座「医療制度編20010年-2011年度版」
4)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
・ワールドネット掲載資料
・社内資料
5)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
6)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等

医療保険制度を理解するために…そのⅠ=厳しさを増す医療市場環境=

医療業界の基礎知識(52)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

3月11日、我が国未曾有の大惨事ともいわれる「東日本大震災」が起こりました。筆舌に尽し難い現状を見るに、何と言ってよいか、言葉もありません。ただただ「心より謹んでお見舞い申し上げます」の一言です。
被災地の一日も早い復興を祈念いたします。

こうした厳しい環境の中で2011年度が始まりました。2011年度国家予算案の一般会計と特別会計を合わせた総予算が、2010年度と比べて、5兆2,098億円増の220兆2,754億円と、2年連続で増加しています。経済環境が厳しい中で予算が大幅に増えた原因は、前年度比8兆3,693億円増になった国債費の82兆1,779億円(占有比37.31%)と、1兆366億円増の社会保障費が75兆280億円(占有比34.06%)に拡大しているためです。
ご承知のように国債費は国の借金であり、社会保障費も予算の使い道がはっきりしている「自由度の低い硬直化予算」で、この2項目で総予算の71.4%を占めています。
社会保障費が大幅に伸びる原因にはいくつかのポイントがあります。

代表的なのが、(1)高齢化を背景にした年金、医療費、介護費等の増加 (2)少子化に対応した子ども手当の上積み、などです。政府の発表によると、1991年から2010年の20年間に国の社会保障費は148兆円増加しています。単純に計算しても年平均7.4兆円の増です。逆に財源の基である税収はこの20年間で211兆円の減少です。日本は「支出は増えるが収入は減少する」いわゆる「借金大国‥借金漬けに陥った日本財政」と言われる所以です。
勿論、社会保障費が伸びることは悪いことではありません。むしろ国民の生活を「ゆとりある姿」にするためには最も重要なポイントであると考えます。そのために増加する社会保障費をどう手立てするかが政府に課せられた大きな課題です。

前置きが長くなりましたが、新年度が始まり新入社員として薬業界に、また他の業界から当業界に入ってきた方も多いと思います。新たに迎えた若い方々のために今回と次回の2回に分けて「医療政策と医療保険制度の基本」をまとめてみます。

社会保障制度と医療保険制度の特徴

社会保障制度とは

社会保障とは、国家が国民に対して保障する公的な社会サービスです。日本では、憲法第25条で社会保障が以下のように規定されており、生存権の根拠となっています。

一. 全ての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
二. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

憲法には、社会保障の内容に関する記述はありませんが、1950年に社会保障制度審議会(内閣総理大臣の諮問機関)が行った「社会保障制度に関する勧告」の中で、次のように定義されています。

『いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子、その他困窮の原因に対し、保険的方法または直接の公の負担において経済的保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生および社会福祉の向上を図り、もって、すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいう。』

そのため、社会保障の機能としては、
(1) 社会的安全装置(社会的セーフティネット)
(2) 所得再分配
(3) リスク分散
(4) 社会の安定
が挙げられます。

また、制度的には、
(1) 生活保護など国が生活困窮者に健康的で文化的な最低限度の生活を保障する公的扶助(所得保障)
(2) 健康保険、年金保険、介護保険、労働災害保険など、原則として加入者の負担によって給付がまかなわれる社会保険
(3) 児童、障害者、高齢者などが社会生活を営むために必要な能力の育成、回復、補強に伴う一定の財・人的サービスを提供する社会福祉
(4) 結核予防や栄養改善などを行う公衆衛生
(5) 国民の老後における健康の保持と適切な医療を確保するために総合的な保健医療サービスを提供する長寿医療(後期高齢者医療)
の5部門があります。

これらを「狭義の社会保障」と呼び、戦争犠牲者対策や恩給、社会保障関連制度としての住宅対策(公営住宅の建設)、雇用対策(失業対策)を含めた場合を「広義の社会保障」と呼んでいます。

医療保険制度とは

日本の医療保険制度は国民生活を豊かにするための社会保障制度の一つとして1961年から施行・実施されています。その特徴は1961年以来、すべての国民がいずれかの医療保険に加入(強制加入)する「国民皆保険」と、どの医療機関でも受診できる「フリーアクセス」にあります。これによって、国民は「誰でも、いつでも、どこででも、所得に見合った費用で、良質な医療を受けることができる」ようになっています。この国民皆保険によって、わが国は世界一の長寿国になりました。
しかし、急速な人口の高齢化、医療の高度化などにより医療費の増大に歯止めがかからなくなってきているうえに、経済基調の変化に伴って、医療費の伸びと経済成長との不均衡が拡大し、このままでは国民皆保険そのものが崩壊の道をたどることにもなりかねない恐れが出てきているのが現状です。

○ 医療保険制度を考える「3要素+1」
「はじめに」で記しましたが医療保険制度は国の保護の下にあります。ある意味では100%税金で賄われているともいえます(自由度の低い硬直化予算)。国民医療費の内訳を大雑把に分けてみると、国民が納める保険料が約50%、国と地方自治体が負担する税金が約35%、患者の自己負担が約15%になります。医療制度の確立に必要な要素には

・医療「財源」(Financing)
・医療「提供体制」(Delivery)
・診療報酬「支払い方式」(Payment)

の3つがあります。どれ一つ欠けても成り立ちません。この3つにプラスして重要なのが

・「情報提供」(Information)

で、医療の標準を定め国民が選ぶことのできる体制を整備・確立することにあります。
こうした中で、国民の(1)健康に対する関心の高まり、(2)医療に対するニーズの多様化・高度化、(3)より広範囲で良質なサービスへの欲求、以上3つに応えることが急務とされ、そのための医療制度の抜本的な構造改革が検討・実施に移されています。

日本の医療保険制度が抱える問題点

冒頭の2011年度予算案でも簡単に記しましたが日本は今、大変厳しい経済・財政環境にあります。こうした厳しい国家・地方自治体財政の中で、「世界に冠たる日本の医療制度」を守るために「社会保障や医療だけは聖域」という論理が成り立たなくなっています。ここでは今まで、世界No.1の評価を受けた日本の医療保険制度が抱える問題点を列挙してみます。

(1)人口構造の変化

厚生労働省のまとめた「2009年人口動態統計月報年計の概況」でみると、出生数は前年比2万1,131人減の107万25人で、過去最少だった2005年の106万2,530人に次ぐ低さになったほか、2年ぶりに減少へ転じました。死亡数は、高齢化が進んでいるものの天井感が強く、ほぼ横ばいの114万1,920人、7年連続で100万人を超えました。
人口の減少傾向が加速しており、出生数から死亡数を差し引いた「人口の自然増減数」の減少幅は、過去最大の▲7万1,895人になる見通しです。出生数が前年に比べ2万人強の大幅減に陥ったことに加え、死亡数も110万人の大台を更新していることから、自然減が3年連続になりましたが、人口の減少幅は今後さらに拡大しそうです。

表1 高齢世代人口と生産年齢人口の比率
高齢世代人口と生産年齢人口の比率

表2 将来推計人口(2005~2055年)
将来推計人口(2005~2055年)

医療保険制度にとって最も頭の痛い問題は、税金や保険料の支払いを通じて医療保険制度を支える生産年齢人口が減少していくことです。あわせて、日本経済がなかなか上向かないことや、失業者およびニートの増加等を背景に有業率が60%前後で推移していることなどが保険料収入に大きな影響を与えています。

(2)国家と健保の財政悪化

国民医療費は、毎年1兆円ずつ増え続けています。国庫負担ベースでは2,500億円です。2010年度の国庫負担は9兆4,043億円ですから、2012年度には5,000億円増えて9兆9,000億円になると予想されます。税収の3分の1を医療費の国庫負担で費やすわけで、大変重い負担と言えます。
保険料の負担も限界に差し掛かっています。たとえば、中小企業で働く会社員とその家族約3,500万人が加入する協会けんぽの保険料が自由化され、都道府県別に設定されるようになり、これから毎年保険料率アップのための調整が行われます。保険料は労使折半であるため、本人負担だけでなく企業も負担増になります。
また、大企業の社員や家族約3,000万人が加入する健康保険組合も赤字額が増えています。事業主と社員が折半で負担する保険料率も上昇傾向にあり、社員の月給と賞与が目減りしているため保険料収入が減り、逆に、1人あたり医療費は増える一方で、後期高齢者保険支援金等と合わせ支出が増加するため、大変厳しい運営を余儀なくされています。

(3)不効率な医療提供体制

医療提供体制等を示すおもな指標について、社会経済生産性本部が、わが国とOECD30カ国を対象に比較したのが表3です。

表3 OECD加盟国における日本の医療水準
OECD加盟国における日本の医療水準

日本の医療は「アクセスの良さ」「質の高い医療」「低い医療コスト」という3要素を、上手くバランスさせていることがわかります。反面、顧客満足度という視点で見た場合、サービス産業生産性協議会が経済産業省と連携して開発したJCSI(日本版顧客満足度指数)の調査によると、日本の29サービス業界のうち「介護サービス業界」が3番目に高い評価を得ていますが、「病院業界」は13位にとどまっています。

(4)薬剤費のコスト構造

国民医療費の構成比の中でいつも問題になるのが全体の約21%を占める薬剤費比率です。しかし疾病治療にとって医薬品は欠かすことができません。今回の大災害でも、避難している人の多くが医薬品の不足に悩んでいます。しかし医療費を財源論で考えたとき、財務省は長期収載品から後発品へのスイッチで薬剤費を減らせるとみています。先発品と後発品では成分や効能が同じでも1.5倍~3倍の価格差があり、先発品を使用すれば、その分、患者負担に加え、保険料、税負担も増加するという論理です。財務省によると、後発品のある先発品、いわゆる長期収載品の金額シェアは36%(2005年)もあり、機械的な試算をすれば、国民の負担が全体で約1.3兆円(患者負担:約0.2兆円、保険料負担:約0.6兆円、公費負担:約0.4兆円)重くなっていると指摘しています。

そのため、後発品の使用促進で思うような成果があげられない場合、2010年度改定でも追加引き下げが行われたように、長期収載品の大幅な薬価引下げも視野に入れられています。政府は、医療費の国庫負担をどのようにして減らしていくか躍起になっています。医薬品業界にとっても過去に経験しなかった厳しい市場環境になることが予想されます。

(5)老人医療費を支える仕組みの限界

老人医療費は、国庫、保険者からの拠出金、患者の一部負担でまかなわれていました。とりわけ、保険者からの拠出金は、政管健保(現在は協会けんぽ)や組合健保の医療保険財政に重くのしかかっていたため、介護保険制度に加え、高齢者にも応分な保険料負担を求める後期高齢者医療制度の創設が避けて通れなくなり、施行されました。
社会保障制度は、少子化・高齢化・人口減少時代に入った今こそ必要視される行政サービスですが、保険料収入の減少や社会保障関係費(国庫負担)の削減で逆に所得の再分配機能が低下する傾向にあります。また、後期高齢者も特別扱いできなくなっています。制度そのものが予想外に評判が悪かったことから、新医療制度に改めることになりました。現在、75歳以上後期高齢者の給付費11兆7,000億円は公費50%、健保組合など現役世代の支援金40%、高齢者の保険料10%でまかなわれています。また、65歳~74歳の前期高齢者の給付費5兆3,000億円は、国保や健保組合などで負担し合っています。

そういう状況を踏まえ、厚生労働省は75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度を廃止した後の新制度について、65歳以上の全員が市町村の国民健康保険に加入した場合の財政試算を公表しました。厚生労働省は後期高齢者医療制度を2012年度末に廃止し、2013年度から新しい制度に移行する予定ですが、65歳以上高齢者の新たな受け入れ先として、市町村国保を最有力視しているようです。ちなみに、国保に加入する高齢者は約2,830万人で、会社に勤める高齢者は健保組合など被用者保険へ継続加入することになります。

まとめ

日本の医療費は、高齢化の進展等に伴い、毎年度3~4%程度(1兆円程度)増加しており、その結果、保険料・税負担といった国民負担も増大してきています。こうした中で、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとするためには、早急に改革に取り組む必要があります。今後、税負担の比重が高まることが見込まれる中で、医療保険制度における保険料・税負担の上昇をできる限り抑制するための見直しについて検討されています。
こうした動きの中で次回は、「医療費適正化計画と医療提供体制の見直し」についてまとめてみます。

※引用参考資料

1) 厚生労働省各種通達資料
2) 総務省公表資料(HPから
3) セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部刊行
・通信教育講座「医療制度編2010年-2011年度版」
4) セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
・ワールドネット掲載資料
・社内資料
5) 株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
6) その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等

多様化する公立病院の経営形態 そのⅡ

医療業界の基礎知識(51)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2012年度の診療報酬改定に向けた審議等の動きが活発化してきました。2012年度は医療保険の診療報酬と介護保険の報酬が同時に改定される、いわゆる「ダブル改定年」にあたります。
現在進められている審議の中からいくつかのポイントをあげてみると、ダブル改定の最大のポイントは病床の再編にあるとみられており、次のような事項が検討されています。

  • 入院医療と介護療養などの役割の明確化を図る
  • 既にDPC対象病床が一般病床の50%を超えているなかで、一般病床を急性期に特化した役割を明確にする
  • 急性期医療を提供する一般病院を、二次医療圏における地域中核病院として位置づけ、そのための機能を評価する仕組みを整備する
  • 非DPCの一般病床は、急性期入院医療を担う病棟と亜急性期や回復期の医療を担う病棟に分け、評価の見直しを図る
  • 療養病床も、医療型と介護型への振分けを図り役割を明確にする
  • 地域中核等、急性期医療提供病院の整備を図る中で、地域の医療機関、介護施設との連携を図る(ネットワーク体制の整備・充実⇒地域医療支援センターの体制整備等)

など、それぞれの医療機関が持つ機能を高めながら、医療圏毎における医療機関の連携を通して地域医療の充実を図ることなどが検討されています。

自治体病院が目指す役割と機能を考える

そのⅠでも記しましたが、自治体病院が担う役割・機能及び必要性は「民間医療機関では対応困難な医療分野を中心に医療圏の地域特性や医療機能に配慮して、公的医療機関としての役割を担う」ことを基本目的とし、

Ⅰ)民間医療機関では対応困難な医療の提供
Ⅱ)医療圏の地域特性や医療機能を踏まえた医療の提供
Ⅲ)公的医療機関として担う必要がある医療の提供
Ⅳ)その他

などの事項の遂行が求められています。
しかし現在の医療提供体制をみると地域によってその提供内容に大きなバラツキがあり、ある地域では自治体病院の存在価値そのものが否定されているかのような地域も見られます。

地域中核病院にみる自治体病院の役割

自治体病院の役割は、地域における中核病院として「高度技術や専門的スタッフ及び高度医療機器が必要な医療や、特殊医療、地域性や診療報酬体系上の不採算な分野の医療」を担う役割があると記しました。地域中核病院の持つべき代表的な機能や役割の中に、「地域完結型医療の提供を目指す」ための「地域医療連携の中心的な役割を果たす」ことがあります。
この「地域医療連携の中心的な役割」を果たすためにはいくつかの代表的な機能を整備(届出)する必要があります。いわゆる「持つべき機能」です。筆者は以前から、数多くの届出事項の中から急性期中核病院の持つべき機能の代表的な項目として、次の5つを取り上げて資料の整理をしています。勿論、これらの機能以外に中核機能病院を評価する項目は沢山ありますが、今回は紙面の都合などを考慮して絞りまとめてみました。

1) DPC対象病院  2)地域医療支援病院  3)救命・救急センター
4)がん診療連携拠点病院  5)総合入院体制加算届出病院

項目の中に「総合入院体制加算届出病院」を入れているのは、一般病院において一番レベルの高い「7対1」の入院看護基準を満たし、チーム医療の実践など、質の高い医療提供を行っていることを評価しているためです。

都道府県ごとに見た地域中核病院数と自治体病院の比率

厚労省が発表している資料を基に上記5項目の届出軒数をまとめてみると

1)DPC対象病院      1390病院(2010年8月1日現在)
2)地域医療支援病院     318病院(2010年11月1日現在)
3)救命・救急センター    202病院(2010年3月1日現在)
4)がん診療連携拠点病院   388病院(2011年3月1日現在)
5)総合入院体制加算届出病院 203病院(2010年6月1日現在)

が存在しています。
この資料を基に都道府県別にまとめたのが(表Ⅰ)です。
ここでは都道府県ごとに、対象別届出病院を上段に、届出自治体病院数を中段に記入し、下段に対象病院数対自治体病院数の比率を示しています。
全国値の結果は

1)DPC対象病院      1390病院 ⇒ 299病院(21.5%)
2)地域医療支援病院     318病院 ⇒  81病院(25.5%)
3)救命・救急センター    202病院 ⇒  76病院(37.6%)
4)がん診療連携拠点病院   388病院 ⇒ 140病院(36.1%)
5)総合入院体制加算届出病院 203病院 ⇒  77病院(37.9%)

となっており、1)のDPC対象病院を除く地域医療支援病院、救命・救急センター、がん診療連携拠点病院、総合入院体制加算届出病院など、設備投資やマンパワーの充実等に資本投資が嵩む項目の比率が高いことがわかります。
結果として自治体病院が、「民間医療機関では対応困難な医療分野を中心に医療圏の地域特性や医療機能に配慮して、公的医療機関としての役割を担う」必要性の高い

Ⅰ)民間医療機関では対応困難な医療の提供
Ⅱ)医療圏の地域特性や医療機能を踏まえた医療の提供
Ⅲ)公的医療機関として担う必要がある医療の提供

などを担っていることがわかります。
これを都道府県単位で整理してみると、青森県、岩手県、山形県、千葉県、神奈川県、新潟県、富山県、岐阜県、静岡県、愛知県、滋賀県、大阪府、兵庫県、広島県、徳島県、愛媛県、高知県、沖縄県などでは自治体病院の占める割合が高くなっています。
反面、秋田県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、京都府、奈良県、和歌山県、岡山県、福岡県、熊本県などは自治体病院の占める比率が低くなっていることがわかります。

★表Ⅰ




地域中核病院として5機能の届出取得が高い自治体病院

次に、特定機能病院を除く対象5項目の内、4項目以上の機能を取得している病院を表Ⅱにまとめてみました。対象病院は47病院で、5項目すべてを届出ているのが17病院、4項目は30病院でした。また設立母体の内訳は、都道府県立21病院、政令指定都市立9病院、市町村立17病院となっています。
結果として都道府県及び政令指定都市のような大規模の自治体が設立母体となっている病院の比率が高いことがわかります。地域の中核的な病院を維持管理するためには、施設に相当した設備投資やマンパワーの充実が求められ、資本投資が必要なことがわかります。ここに公立病院の経営や改革の基本の難しさがあることも事実です。

★表Ⅱ

まとめ

以上、2回に分けて自治体病院の姿をまとめてみました。
地方財政の厳しい今、自治体病院にとっては大変厳しい経営環境が続きます。社会保障制度の充実、特に医療環境の整備は「待ったなし」になっています。
医療を担うMRやMSにとって、担当病院がどう変化するのか、その見極めをしっかりと行い医療制度の確立に必要な3要素、すなわち、医療「財源」(Financing)の確保、医療「提供体制」(Delivery)の整備・確立、診療報酬「支払方式」(Payment)の評価・見直しがどう進められるのか見極めながら、担当病院が必要とする、情報提供(Information)を通して「協働作業」を進めることが必要です。

※引用参考資料
1)厚生労働省各種通達資料
2)総務省公表資料(HPから:http://www.soumu.go.jp/
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部刊行
・通信教育講座「医療制度編20010年-2011年度版」
4)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
・ワールドネット掲載資料
・社内資料
5)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
6)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等

多様化する公立病院の経営形態-「公立病院改革プラン」の実施状況調査から

医療業界の基礎知識(50)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2007年6月に成立した「地方公共団体の財政健全化に関する法律(地方公共団体財政健全化法)」の施行に伴い、財政赤字に悩む地方自治体にとって財政負担となっている公立病院(自治体病院)の経営改善が急務となっています。総務省は2007年12月に「公立病院改革プラン」を公示し、経営改善の一環として「経営形態の見直し」を選択肢の中心とする指針を打ち出し、病院事業を実施する地方自治体に対し「改革プランの策定と実施」を要請してきました。
その結果、総務省は2011年1月に「公立病院改革プランの実施状況」に関する調査結果(調査日:2010年9月30日)をまとめ公表しました。
今回は、今号と次号の2回に分けて「公立病院改革プラン」の策定状況及び実施状況についてその概要をまとめながら、医療現場における「自治体病院の位置づけ」や「今後の在り方」等を記してみます。

公立病院の現状

厚労省が2011年2月4日に発表した「医療施設動態調査」によると、2010年11月現在、全国に存在する公立(自治体)病院は990病院(都道府県立234病院、市町村立702病院、地方独立行政法人54病院)で、全病院数(8,670病院)の11.42%を占めています。またその病床数は237,026床で全病床数1,593,094床の14.88%と、大変大きな比重を占めています。反面、2009年2月時点との比較をしてみると、病院数で29(0.18%)、病床数で6,796床(0.27%)も減少しています。
また、公立病院の設置数を都道府県単位でみると、北海道が最も多く100病院を超え、続いて兵庫県の40病院超で、岩手県、宮城県、愛知県、青森県、千葉県、新潟県、長野県、大阪府、静岡県が25病院を超えています。反対に少ないのは、栃木県、大分県、福井県、鳥取県、奈良県、沖縄県で10病院以下になっています。

◎経営状況については
・総務省自治財政局編「地方公営企業年鑑」
・公立病院の損益収支の状況「平成17年度~平成21年度版」
 を参照してください。

公立病院が担う役割・機能と改革のポイント

「公立病院改革プラン」では、公立病院が担う役割と機能について「公立病院は、民間医療機関では対応困難な医療分野を中心に医療圏の地域特性や医療機能に配慮して、公的医療機関としての役割を担う」ことを基本目的として示し、次のような事項の遂行を求めています。

Ⅰ)民間医療機関では対応困難な医療の提供
・高度技術や専門的スタッフ及び高度医療機器が必要な医療
・高度医療、特殊医療、地域性や診療報酬体系上の不採算な分野の医療

Ⅱ)医療圏の地域特性や医療機能を踏まえた医療の提供
・地域内医療機関の整備状況を見て1次医療、2次医療レベルが必要な場合の地域医療の確保(市町村立は1次、都道府県立は2次中心)
・地域で質的・量的に不足している医療

Ⅲ)公的医療機関として担う必要がある医療の提供
・法令や歴史的経過から、行政が主体的に取り組む必要性がある医療、新たな課題に対する先導的に取り組む医療

Ⅳ)その他
・地域の医療レベル向上のための教育・研修機能
・予防・検診への対応等保健行政的医療の支援
 

公立病院改革プランの策定状況

総務省が2011年1月に公表した報告書の概要は次の通りです。

Ⅰ 都道府県立病院の状況(地方独立行政法人を含む)[47団体]
・2009年度までに策定済み  ⇒ 44都道府県
・2010年度までに策定済み  ⇒ 茨城県、京都府
・2011年3月までに策定予定 ⇒ 奈良県

Ⅱ 市町村立、一部事務組合立及び広域連合立病院の状況[590団体]
・2009年度までに策定済み  ⇒ 47都道府県587団体
・2010年度までに策定済み  ⇒ 千葉県1団体、岡山県1団体の2団体
・2011年3月までに策定予定 ⇒ 広島県神石高原町の1団体

公立病院改革プランの実施状況

(◎調査対象:2010年9月末現在でプランを策定している635団体904病院)

Ⅰ 経常収支黒字化に係る計画

公立病院改革プランの策定にあたっては、「地方公共団体は、平成20年度内に公立病院改革プランを策定し、経営効率化は3年、再編・ネットワーク化、経営形態見直しは5年程度を標準とする」よう求められています。特に厳しい地方財政の中で

・経営指標に係る数値目標を設定し
 1)財務の改善関係(経常収支比率、職員給与費比率、病床利用率など)
 2)公立病院として提供すべき医療機能の確保関係等
・一般会計からの所定の繰出後、「経常黒字」が達成される水準を目途にすること(地域に民間病院が立地している場合、「民間病院並の効率性」達成を目途)
・病床利用率が過去3年連続して70%未満の病院は病床数等を抜本的見直し

等が基本となっています。
これらのポイントを基にした経常収支黒字化に係る計画では、

・2010年度に経常収支が黒字の病院   ⇒ 369病院(40.8%)
・2011年度に経常収支黒字化目標の病院 ⇒ 105病院(11.7%)
・2012年度に経常収支黒字化目標の病院 ⇒ 154病院(17.0%)

と、全体の69.5%の628病院が黒字及び黒字化を目標にしています。
反面、全体の30.5%、276病院は2013年度以降に経常収支黒字化を目指しており、厳しい財政のもとでの経営改善が容易ならぬ状況下にあることを示しています。

Ⅱ 再編・ネットワーク化に係る計画

厳しい地方財政状況の中、社会保障予算は増える一方です。特に少子高齢化が進むなかで高齢者に対する年金や医療費の支出増とともに、患者が期待する医療内容を提供する施設づくりとなれば多様な費用と努力が必要となってきます(先に記した・地域に民間病院が立地している場合、「民間病院並の効率性達成を目途」も競争原理の中では当たり前のことです)。
その結果、求められているのが単独での事業継続が厳しくなっている病院の「再編・ネットワーク化」です。そのために明示されているのが以下のポイントです。

・都道府県は、医療計画の改定と整合を確保しつつ、主体的に参画し
・二次医療圏等の単位での経営主体の統合を推進する
・医師派遣拠点機能整備の推進を図る
・病院間の機能重複を避け、統合・再編を含め検討し、そのためのモデルパターンを提示する

≪プランの内容と策定状況≫

 ・2008年度までに再編・ネットワーク化計画を策定した病院 ⇒ 228病院(25.2%)
 ・2009年度以降に再編・ネットワーク化計画を策定予定病院 ⇒ 539病院(59.6%)
 ・再編・ネットワーク化計画の策定予定なしの病院     ⇒ 137病院(15.2%)

≪2009年度策定状況及び2009年度実績を踏まえた今後の見込み≫

・2009年度に策定した病院                ⇒  79病院( 8.7%)
・2010年度策定予定の病院(策定済みを含む)       ⇒ 115病院(12.7%)
・2011年度策定予定の病院                ⇒ 132病院(14.6%)
・2012年度以降策定予定等の病院             ⇒ 241病院(26.7%)
・策定予定なし                     ⇒ 109病院(12.1%)

2010年9月末までに策定された再編・ネットワーク化計画の主な事例

ここでは総務省が「公立病院改革プラン実施状況等の調査結果」として公表した主な事例を掲載しました。


まとめ

 今回は、今、実際に進められている「公立病院改革」について、総務省自治財政局の公表資料を中心にまとめてみました。次回はいくつかの事例を挙げながら、各都道府県における公立病院の果たすべき役割等や位置づけ等を纏めてみます。

※引用参考資料
1)厚生労働省各種通達資料
2)総務省公表資料(HPから:WWW.soumu.go.jp
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部刊行
 ・通信教育講座「医療制度編20010年-2011年度版」
4)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部
 ・ワールドネット掲載資料及び社内資料
5)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
6)その他:日経新聞、読売新聞、朝日新聞、メディファックス 等

医療環境の変化と医療提供体制の見直しに向けて

医療業界の基礎知識(49)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2011年の新年、明けましておめでとうございます。
民主党政権が誕生して2度目の新年を迎えました。新政権の発足後、既に二人目の首相が誕生していますが党内抗争が激しいため、このまま内閣を維持継続できるのか、新年早々新聞紙上を始め各種マスコミを賑わしています。
この間、皆さんの周囲はどう変わりましたでしょうか。少しも変わらない、いや悪くなっている、と言った意見が多いのではないでしょうか。
今年が素晴らしい1年であるよう期待して、今年もこのシリーズを担当いたします。

1月は国民生活に最も重要な2011年度の予算を決める通常国会が召集されます。通常国会の開催は1月中の召集日から150日間(延長は別日数)と決められていますが、政府は中旬に行う内閣改造後の28日に召集を予定しており(1月7日時点)、2001年の細川内閣の31日に次ぐ遅い召集日となる可能性が高く、予算審議が「いつから行われ、成立がいつになるのか」予断を許さない厳しい状況が今から予想されます。
今回は中医協を始め各種審議会の動向を基にして、2012年度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向かって現在審議が進められているいくつかのポイントを整理してみました。

2012年度「診療報酬」「介護報酬」同時改定に向けてのポイント

2010年度の診療報酬改定のポイントは次に示す「主な項目」でも分かるとおり、医療提供体制の整備と連携の強化促進にありました。特に上流(急性期病院)と中流(一般病院)の流れを整理し、役割を明確にするための報酬評価を図っています(表Ⅰ:2101年度診療報酬改定で伸びた診療領域を参照)。

  • 地域中核等、急性期医療提供病院の整備
  • NICU等の負担軽減を図る為、後方病院との連携
  • 救急病院と後方病院との連携
  • 地域の医療機関・介護施設との連携
  • 医療と介護職種間の連携
  • 院内の医療関係職種間の連携(チーム医療の推進)

2012年度「診療報酬」「介護報酬」同時改定に向けてのポイント

これを受けて2012年度は、下流(慢性期病院や診療所及び介護施設等)の川幅を整理・拡大し患者への医療提供体制を整備・明確化する、と言われています。
厚労省保険局医療課の鈴木康裕課長は昨年の講演でそのポイントを述べていますが、ここではその中のいくつかをまとめてみました。

Ⅰ. 検討課題

  • 慢性期入院医療や在宅医療等との地域医療連携の推進
  • 訪問看護や訪問薬剤師、PT・OTによる訪問リハビリテーションなど、チーム医療の評価

Ⅱ. 2012年度同時改定は、医療保険枠と介護保険枠の間で報酬項目の出入りを進める1つのチャンスであり積極的に進める

Ⅲ. 慢性期入院医療等の医療提供体制の見直し

  • 社会保障国民会議が作成した医療・介護サービスの需要と供給のシナリオでの一般病床を機能分化し、急性期の医療資源を集中投入し、医療必要度の低い患者は介護施設で療養する等を考慮し、一般病床を絞る方向も考慮

Ⅳ. 次々期以降の同時改定も視野に入れて検討

  • 在宅医療における複数医師による訪問診療や連携
  • 訪問看護等の地域連携強化

Ⅴ. 2012年度同時改定は、診療報酬の簡素化も考慮

  • 「モノと技術:分配におけるエビデンス」
  • 「簡素化と努力に応じた評価」
  • 「負担軽減と役割分担」⇒医師、看護師に対する負担軽減を「できる範囲で支援する」方向につなげるための「チーム医療の評価・充実」
  • 「地域特性」を考慮する
  • 地域でしっかり汗をかいている医療機関を評価する仕組みを考慮

Ⅵ. 根源的な議論は11年の夏までに。それ以降は、各項目についての議論をすることになる

2012年度「診療報酬」「介護報酬」同時改定向けての提案

こうした流れを受けて日本慢性期医療協会の武久洋三会長は所属学会の講演で、第6次医療法改正も視野に入れ、次期改定に向けて中医協・慢性期入院医療包括評価調査分科会に次のような提案をすると述べています(実際に提案されています)。

Ⅰ 今後の医療提供体制は

  • 医療保険適用の「急性期病床」及び「慢性期病床」と医療保険と介護保険の療法が適用(必要な)される「医療介護施設」「介護保険施設」「在宅居住系」に分類される

Ⅱ 慢性期病床の施設別位置づけ

  • 一般病棟(13対1)
  • 一般病棟(15対1)
  • 医療療養病棟(20対1)

に整理し、患者に分かりやすい医療施設(提供体制)を整備する。併せて現在の一般病床を「慢性期病床」と位置づけ、慢性期DPCの導入を図りたい、とまとめています。

医療機関の役割に応じた再編を

民主党の実力者の一人は2010年9月1日の記者会見で、医療機関の再編について次のような発言をしています。

Ⅰ 「国民生活の再生」⇒「地域医療の再生に向けて」

  • 地域の中核的な病院に必要な機能を集約し、病院・診療所間のネットワークを構築する

Ⅱ 医療機関再編のポイント

  • 人口規模の大きい地方都市を中核都市として位置付け、「医療、介護、福祉のネットワークを整備し「地域経済・社会の再生」の成長産業として育成する。

「入院中心」から「在宅・訪問診療等の強化による地域での療養中心」へ

医療機関の役割見直し案の一つとして厚労省がまとめたのが下記の図です。参考までに掲載しました。

「入院中心」から「在宅・訪問診療等の強化による地域での療養中心」へ

一般病床の再編は必至か

以上のような談話や発言のほかに、将来構想の一つとしての「どこでもMY病院」などにみられる連携に基づく病院や病床の再編計画のための審議が活発化しています。

Ⅰ ダブル改定の最大のポイントは病床の再編に

  • 入院医療と介護療養などの役割の明確化を図る
  • 一般病床を急性期に特化し役割を明確にする
  • 既にDPC病床が一般病床の50%を超えている中で、DPC病床に機能評価係数Ⅱを導入し機能別役割の明確化が図られているが、これは、今後も機能評価係数を充実・拡大化し、「一般病床=DPC病床」化への流れを推進することを示していると考えてもよいのではないか
  • また、DPC病院も今後4回ぐらいの改定を経て、調整係数はなくなることが予定されており、今後は機能評価係数の拡大等による施設機能強化による競争時代に入ってくる

Ⅱ 非DPCの一般病床は、急性期入院医療を担う病棟と、亜急性期や回復期の医療を担う病棟に分け、連携構想の中間に位置づけられる可能性も考えられる

Ⅲ 療養病床は、医療型と介護型への振分けをより進める方向へ

まとめ

最後に厚労省が示している医療提供体制改革のシナリオを表にまとめてみました。

医療提供体制改革のシナリオ

※引用参考資料

1)厚生労働省各種公表資料及び通達資料
2)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部:ワールドネット掲載資料
3)セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部:社内資料及び各種発刊資料
4)株式会社ファーマネットワーク社内研修資料
5)その他

「医療制度改革と診療報酬改定の動向」・そのⅡ

医療業界の基礎知識(48)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

厚生労働省は11月24日、「2008年度の国民医療費が前年度比2.0%増の34兆8084億円となり、過去最高を更新した」と発表しました。公表資料からみた主なポイントは

  • 総額は、2008年度の診療報酬改定の影響もあり2.0%増の34兆8084億円で、過去最高に
  • 国民1人当たりの医療費も2.0%増加し過去最高の27万2600円に
  • 国民所得に対する割合は9.9%で、上昇率も過去最大の0.88ポイントとなり、次年度以降10%を超えることが確実に
  • 医療財源の内訳は、国庫負担を含む税金で37.1%、健康保険料が48.3%(表Ⅰ・主な医療保険制度の現状を参照)、窓口負担など患者負担が14.1%、その他(労災医療費など)0.5%

表Ⅰ
医療制度改革と診療報酬改定の動向

  • 今後も、医療技術の進歩や高齢者増加などの傾向は大きく変わらないため、国民医療費は「年平均で2.2%程度は増える」と分析

※「国民医療費」とは、国民が病気やけがの治療のために支出した1年間の医療費の総額で、「正常な出産や健康診断など」の費用を除いています。(国民医療費の範囲など、国民医療費の細部については既掲載の資料を参照してください)
また、厚生労働省が先の8月16日に公表した「2009年度医療費の動向」によれば、「概算医療費の総額は前年度比3.5%増の35兆3000億円」となり、初めて35兆円の大台を突破し、7年連続で過去最高を更新しています。
 

人口の高齢化とともに拡大する国民医療費

概算医療費は、診療報酬明細書(レセプト)を集計したもので、労災医療費などを加えた国民医療費(医療費全体を示す)の約98%に当たります。医療費は毎年3%~4%の自然増が見込まれますが、2009年度の伸び率は休日数の影響などを補正しても3.6%増であることから、診療報酬改定がなかった年として、厚労省は「おおむね従来と同程度の水準」とみています。

・70歳以上の高齢者医療費で44%占める
概算医療費のうち、70歳以上の高齢者医療費は前年比4.6%増の15兆5000億円で、全体の44.0%を占めています。1人当たり医療費でも、70歳未満の16万8000円(2.7%増)に対して、70歳以上は2.5%増の77万6000円に上っています。
また、患者の受診延べ日数が-0.6%の26億2000万日と減少傾向にある一方、1日当たりの医療費は+4.1%の1万3400円と増加が続いていることから、高齢化の進展に加え、医療技術の高度化が医療費を膨張させている要因とみられています。

◎医療機関種類別の医療費の伸び率

医療機関別の概算医療費は、病院が18兆7000億円(3.4%増)、診療所が8兆1000億円(1.9%増)となっています。
病院の内訳をみると、大学病院が2兆1400億円の5.6%増、公的病院が6兆8300億円の3.3%増、法人病院が9兆3800億円の3.4%増であるのに対し、個人病院は3000億円で4.2%減となっています。個人病院は、依然として前年度割れとなっていますが、過去3年続いた12%~14%の減少からは持ち直しています。

医療機関種類別の医療費の伸び率

医科診療所の診療科別医療費は、内科3兆9613億円(2.7%増)、小児科3422億円(0.2%減)、外科5051億円(0.7%増)、整形外科8031億円(4.1%増)、皮膚科2938億円(0.3%増)、産婦人科2448億円(2.3%減)、眼科6294億円(0.7%増)、耳鼻咽喉科3761億円(2.0%減)となっており、整形外科の4.1%増が目立っています。また、外科は統計を取り始めて以来、初めて前年度割れから脱し、内科も前年度の-0.7%から大きく増加に転じています。

2013年度からの導入を目指す「新高齢者医療制度改革案」審議が活発化

◎70~74歳の窓口負担を2割に引き上げ

厚生労働省は10月25日の高齢者医療制度改革会議で、後期高齢者医療制度に代わる新たな制度の費用負担に関する論点と財政影響の試算を示しました。将来的に、高齢者の医療給付費に投入する公費割合を定期的(例えば4年ごと)に見直す仕組みとし、2013年度の制度移行時には75歳以上の公費負担割合を現在の47%から50%に引き上げることを提案しています。また、引き上げによる所要額は約3500億円が見込まれています。
患者の自己負担割合については、70~74歳の負担割合を現行の1割から2割に順次引き上げていくことが適当としています。現在、70~74歳の負担割合は2割負担と法定されていますが、毎年度の予算措置により1割負担に凍結されています。仮に1割負担で恒久化した場合、各保険者や公費の負担額が2000億円増となることから、患者と保険者の負担増の両面に配慮して順次2割に引き上げるとしました。新制度移行までに70歳に達し1割負担となった人は引き続き1割負担とし、それ以外の人は70歳になった時点で2割負担になります。

◎増加する財源をどこが負担するか

高齢者医療制度の支援金に関しては、被用者保険者間の按分方法を2010年度から支援金の3分の1は総報酬割、3分の2は加入者割としていますが、新制度移行後はすべて総報酬割にすべきと提案されました。総報酬割導入による負担額(2013年度推計)は、協会けんぽでは2100億円減となる一方、健保組合では1300億円増、共済組合では800億円増といずれも増加するようになります。
厚労省は、これらの費用負担案を採用して新制度に移行した場合の医療費の将来推計も示し、国民医療費は2010年度の37.5兆円から2025年度には52.3兆円に、医療給付費は31.9兆円から45.0兆円に増加すると試算しています。医療保険給付費は、保険料負担が18.2兆円から23.6兆円に、公費負担が11.2兆円から18.2兆円に増え、全体で12.4兆円増加します。
 また、新制度移行後の2013年度の保険料は、現行制度のまま高齢者の保険料負担率を見直した場合と比較して、協会けんぽと市町村国保がそれぞれ600億円の負担減となる一方、健保組合では200億円、共済組合では600億円の負担増となります。

まとめ

以上のように高齢化が進む中で「世界に冠足る医療保険制度」を維持・発展させるためにも、財源の確保が最重要課題です。1月に開催される次期通常国会での予算審議がどう進むか、厳しい国家財政の中での審議動向が注目されます。
参考までに厚生労働省が高齢者医療制度改革会議で示した費用負担案等を下記に掲載しました。

Ⅰ 費用負担に関する論点
費用負担に関する論点

Ⅱ 高齢者の保険料の負担率
高齢者の保険料の負担率

Ⅲ 患者負担率
高齢者の保険料の負担率

※引用参考資料

1) 厚生労働省各種公表資料及び通達資料
2) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:ワールドネット掲載資料
3) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:News等 社内資料
4) ㈱ファーマネットワーク社内研修資料

医療制度改革と診療報酬改定の動向―2012年度;診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて―

医療業界の基礎知識(47)

医療業界の基礎知識 Vol.47は、「医療制度改革と診療報酬改定の動向」と題し、2012年度の診療報酬・介護報酬の同時改定についてファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介します。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2011年度の国家予算編成を前にして臨時国会の審議が停滞しています(11月1日現在)。昨年の事業仕分け第1弾で「診療報酬の配分」が対象になり、仕分け人からは、「診療報酬の配分が固定的で医療の課題に対応できていない。なぜ変わらないのか」と中医協へ厳しい批判が浴びせられ、政務三役による裁定で「診療報酬の新たな財源の大半を病院勤務医に充てる」という、配分見直しの方向付けがなされました。
その結果、2010年度の診療報酬改定は、「2年後の医療報酬・介護報酬の同時改定を見据えた改定」として、次のような項目が評価策として強化・実施されています。

  • NICUの負担軽減の為の後方病院との連携
  • 救急病院と後方病院との連携
  • 地域の医療機関・介護施設との連携
  • 医療と介護職種間の連携
  • 院内の医療関係職種間の連携(チーム医療の評価)

などがその代表例です。
また、医療制度改革の一環として進められている、医療施設の役割に応じた機能別改定もポイントの一つで、特に急性期基幹病院と一般病院の流れを整理することで、国民(患者)の理解を高めることに意を注いだ改定として、急性期病院に多くの報酬配分がなされました。

◎ 急性期病院の主な改定ポイント

  • 救命救急センター、二次救急医療機関の評価
  • ハイリスク妊産婦や新生児に対する集中治療の評価
  • ハイケアユニット入院医療管理料の大幅な引き上げ
  • 早期入院加算の評価  428点⇒450点へ
  • 手術料の評価 ⇒ 大幅な引き上げ(30%~50%も)
  • 病院勤務医の負担軽減(綜合入院体制加算等)
  • 医療事務作業補助体制加算の点数引き上げ
  • 医療連携(がん、認知症、肝炎等の専門病院の評価)
  • DPCの見直し(調整係数の段階的廃止と新たな機能評価係数Ⅱとして6項目の導入)

◎2010年度の診療報酬改定で伸びた領域(2010年4月・5月診療分)

このように今回は、急性期を主体とした病院機能の充実と医療提供体制の強化に重点をおいた改定を行うと同時に、次期改定に向けて、在宅医療の充実を評価し地域特性の議論を深める第一歩とした改定を行ったと厚労省はまとめています。

2012年度;診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて‥‥最近の主な動き

厚労省は、次回2012年度の改定は診療報酬と介護報酬の同時改定でもあり、慢性期病院や診療所の役割を整理・拡大し、患者への医療提供体制を整備・明確化するとしています。
その考え方の一つには厳しい国家財政に伴う社会保障財源、特に医療費の伸び率をこのまま拡大できない事情があります。そのために検討されているのが「健康保険制度の見直し」です。
ここでは検討項目等、最近の動きの一部を抜粋してまとめてみました。

◎現行の健康保険制度が最善か

・誰でもが医療を必要な時に、望んだ場所で受けられる「量的な保障」がある一方、医療施設機能を含めた「質の保障」の選択に限りがある
・「質を高める」ためには、お金も人材もかかる。そのためには「財政の裏づけ」が絶対条件であるにもかかわらず限りがある
・現行の健康保険制度では、公的保険制度以外の範囲でそれを保障するだけの手当てが出来ていない

◎現行の健康保険制度では限界ではないか

・医療界の自助努力は必要であるが、旧特定療養費制度の見直し等(厚生労働大臣の定める「評価療養」及び「選定療養」)、混合診療の一部拡大を図ることも大切になる

◎同時改定に向けてのポイント‥‥①

厚労省保険局医療課の鈴木課長は外部団体主催の講演会において「2012年度;診療報酬・介護報酬同時改定に向けて」のポイントとして、次のように発言しています。
(ここでは要旨のみを記載しました)

Ⅰ. 検討課題
・ドラッグラグの解消と後発医薬品の使用促進
・慢性期入院医療や在宅医療等との地域医療連携の推進
・訪問看護や訪問薬剤師、PT・OTによる訪問リハビリテーションなど、チーム医療の評価

Ⅱ. 2012年度同時改定は、医療保険枠と介護保険枠の間で報酬項目の出入りを進める1つのチャンスになる

Ⅲ. 慢性期入院医療等の医療提供体制の見直し
・社会保障国民会議が作成した医療・介護サービスの需要と供給のシナリオでの一般病床を機能分化し、急性期の医療資源を集中投入し、医療必要度の低い患者は介護施設で療養する等を考慮し、一般病床を絞る方向も考慮

Ⅳ. 次々期以降の同時改定も視野に入れて検討
・在宅医療における複数医師による訪問診療や連携を評価
・訪問看護等の地域連携強化

Ⅴ. 2012年度同時改定は、診療報酬の簡素化も考慮
・「モノと技術:分配におけるエビデンス」
・「簡素化と努力に応じた評価」
・「負担軽減と役割分担」⇒医師、看護師に対する負担軽減を「できる範囲で支援する」方向につなげるための「チーム医療の評価・充実」
・「地域特性」を考慮し、地域でしっかり汗をかいている医療機関を評価する仕組みを考慮

Ⅵ. 根源的な議論は11年の夏までに。それ以降は、各項目についての議論をすることになる

◎同時改定に向けてのポイント‥‥②

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は次期改定に向けて、中医協・慢性期入院医療包括評価調査分科会に対し、(医療法改正も視野に)次のような事項について提案する予定であると述べています。その要旨は

Ⅰ 今後の医療提供体制は
・医療保険適用の「急性期病床」及び「慢性期病床」と、 医療保険と介護保険の両方が適用(必要な)される「医療介護施設」「介護保険施設」「在宅居住系」に分類される

Ⅱ 慢性期病床の施設別位置づけとしては
・一般病棟(13対1)  現在の一般病床を「慢性期病床」と位置づけ、
・一般病棟(15対1)  慢性期DPCの導入を考慮すべき
・医療療養病棟(20対1)

と、まとめています。
また、先には民主党代表選時の9/1の共同記者会見で立候補者から次のような発言もありました。

Ⅰ「国民生活の再生」⇒「地域医療の再生に向けて」
・地域の中核的な病院に必要な機能を集約し、病院・診療所間のネットワークを構築する

Ⅱ 医療機関再編のポイント
・人口規模の大きい地方都市を中核都市と位置付け、医療、介護、福祉のネットワークを整備し「地域経済・社会の再生」の成長産業として育成する

以上のように、2012年度の改定に向けて「医療提供体制を整備し明確化する」、すなわち病院の機能別再編成が大きな課題として取り上げられており、今後は病院の機能別集約化と一般病床の絞り込みによる減少が進められことが予想されます。

まとめ

今後の医療審議会や中医協等の審議内容を追いながら考慮する必要がありますが、現状の動きをまとめてみると、次のように「一般病床の再編必至!」が考えられます。

◎ダブル改定の最大のポイントは病床の再編になるのではないか
・入院医療と介護療養などの役割の明確化を図る
・既にDPC病床が一般病床の50%を超えている現状から、一般病床を急性期に特化し役割を明確にする

◎DPC病床に機能評価係数Ⅱを導入し今後も拡大するポイントは、「一般病床=DPC床」化への流れを示している、と考えてもよいのではないか

◎DPC病院の一般病床は、急性期入院医療を担う病床と、亜急性期や回復期の医療を担う病床に分けられる

◎したがって、現在のDPC病院の全てが「急性期DPC病院」として存続できるとは考えられないのではないか

◎療養病床も、医療型と介護型への振分けが今まで以上に進むと予想される

以上、現時点での動向をまとめてみました。
2010年度の診療報酬改定で、スタッフを増員することなく7~8%の増収が図られた社会医療法人病院もあります。そのポイントは、「事前の情報収集と整備・投資による改定項目の先取りが効果となって表れている」と関係者は述べています。「次期改定まで1年以上ある」ではなく、すでに改定に関する項目がいくつか具体化しつつある中で「先取り効果を発揮する」体制作りが緊要です。

※引用参考資料

1) 厚生労働省各種通達資料
2) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:ワールドネット掲載資料
3) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:News
4) ㈱ファーマネットワーク社内研修資料

医師臨床研修制度の状況―2010年度の実績と2011年度の実施体制について―

医療業界の基礎知識(46)

厚生労働省は9月15日、「医師臨床研修マッチングの参加登録状況について」のレポートを公表しました。今回は、この公表資料を基に「2010年度の実績と2011年度の実施体制について」まとめてみました。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

2010年度の研修医の採用実績は、全体で7,506人に

公表された「2010年度の臨床研修医の採用実績」によると、2010年度に研修医を募集した臨床研修病院と大学病院(合計1,059病院)で採用された研修医は合わせて7,506人で、前年度と比較して138人減少し、2年連続で減少しています。

◎6都府県とその他41道府県の年次推移

例年に比べ大きな違いはなかったものの、今年度は都市部の6都府県(東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡)以外の地域での採用実績の割合が全国の採用実績の52.2%を占めており、08年度比で減少していた都市部以外の地域での採用が10年度は再び増加し、09年度と比べて0.8ポイント上昇しています。しかしその差は僅かで、下表にみられるとおり、都市部と地方の差に大きな変化は見られませんでした。

都道府県別でみると、採用実績が最も増えたのは石川県と福井県で24人増、次いで鹿児島県の20人増、岐阜県の19人増となっています。一方、採用実績が減ったのは、東京都(53人減)、福岡県(36人減)、北海道(30人減)などでした。

◎臨床研修病院と大学病院別の年次推移

次に臨床研修病院と大学病院の採用実績の割合を見ると、大学病院が全体の47.2%(対前年度比0.4ポイント増)を占めており、2006年度の44.7%を底に、その後は4年連続で上昇しています。

2011年度の臨床研修実施体制

厚労省は同日、2010年度の採用実績とともに2011年度の臨床研修の実施体制も公表しました。それによると、2011年度に研修医を募集する基幹型臨床研修病院と大学病院は2010年度より21施設減の1038施設で、2年連続で減少しています。研修医の募集定員は1万900人(対前年度比201人増)で、このうち432人分は募集定員20人以上の病院に設置が義務付けられている小児科・産科の研修プログラム(将来小児科医または産科医になることを希望する研修医を対象とした研修プログラム→各2人ずつ、計4人)に関する特例の定員分となっています。大学病院の募集定員の割合は全体の47.1%で、2004年度の新医師臨床研修制度施行後、初めて対前年度比で増加に転じ、3年前の水準に戻っています。

※ 基幹型臨床研修病院の推移

※ 6都府県とその他41道府県の募集定員の推移

※ 臨床研修病院の募集定員の推移

都道府県別募集定員の状況

2011年度募集定員は、通常の定員分(A)10,468人と特例の定員分(B)432人の合計10,900人となっており、前年度より201人増加していますが、特例の定員分432人を差引くと、通常の定員だけでは231人減少していることになります。
募集定員をA+Bの合計人数でみると最も多いのが東京都の1,572人で、次いで神奈川県689人、大阪府687人、愛知県584人、福岡県516人、北海道434人、埼玉県425人、千葉県390人、兵庫県389人、京都府293人、静岡県240人、岡山県212人の12都道府県が200人を超えています。反面、山梨県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、佐賀県、宮崎県の7県は100人以下となっています。

まとめ

以上、厚労省が9月15日に公表した「医師臨床研修マッチングの参加登録状況について」をもとに概要をまとめました。
新医師臨床研修制度として制度が発足して約10年経過しましたが多くの問題点が噴き出てきたため、来年度からの小児科・産科の新研修プログラムの追加等、見直しが進められています。2011年度の募集定員10,900人にしても、あくまでも募集定員であり、この定員を満たせる都道府県や募集をしている病院の充足率(採用率)等には+-大きな差が出てきます。
新年度にはこれら定員を満たせた都道府県や病院等の状況が発表になりますが、MRにとってはこれらの情報をいち早く入手し次の行動に移すためにも、前段階として現状における担当エリアや病院ごとの募集人員を調査し、今から対応する必要がありますので、適切な行動管理を行うことを期待します。

※引用参考資料

1) 厚生労働省各種通達資料
2) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:ワールドネット掲載資料
3) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:News
4) ㈱ファーマネットワーク社内研修資料

大きく変わる医療環境Ⅳ―シリーズのまとめ―

医療業界の基礎知識(45)

「医療業界の基礎知識」の第45回目は、前回に引き続き、「大きく変わる医療環境」と題し、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、DPC病院における機能変化の動向についてご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

4月から3回にわたり「大きく変わる医療環境―機能分化が進むDPC対象病院―」と題し、そのポイントのいくつかを記しました。今回は、本シリーズのまとめとしてDPC対象病院の現況を数字で表してみます。

DPC対象病院の現況

DPC対象病院は2003年度に特定機能病院を対象としてスタートしました。
スタート時は病院数82病院、病床数66,983床が対象でしたが、2004年度に62病院が追加された後、2010年7月現在の総合計は、対象病院1,391病院、病床総数458,707床迄に拡大しています。この数値を厚労省が発表している「医療施設動態調査」の3月度分と比較してみると、病院数では全一般病院7,621病院の18.25%が、病床数では904,506床の50.71%を占めています。(表Ⅰ参照)

また、1,391病院、458,707床を病床規模別に分類したのが表Ⅱで、2003年度当初は全てが500床以上の病院が対象でしたが、2009年度以降、200床未満の中小病院の対象が増加し、現在は100床未満から500床以上まで全ての規模に拡大していることがわかります。
あわせて2011年度以降の対象取得を目指す「2010年度準備病院」が279病院、42,865床あり、病院数合計では全一般病院数の21.6%強を占める可能性が出てきています。また病床数では既に50%を超えており、これからはDPC対象病院を中心とした急性期一般病院の競争激化が予想されます。

都道府県別DPC病院の状況

DPC対象病院を都道府県別にみると、病院数やそれぞれの対応機能等に地域差があることがわかります。対象病院数では首都圏、近畿圏、名古屋圏、福岡圏などの大都市圏を中心に多くが存在している反面、地域における中核的な医療機能等、総合的な面では都道府県毎にバラつきがみられます。

因みにDPC対象病院を、特定機能病院、地域医療支援病院、救命救急センター、がん診療連携拠点病院の高機能を取得している病院数でとらえてみると、DPC対象1,390病院(8月から退出した長野県・健保岡谷塩嶺病院を除く)のうち、全体の60.4%にあたる839病院がDPC単独取得病院となっています。ただ839病院のうち40%弱は専門性の高い機能を持った病院で、特定疾患では地域医療の中心的な役割を担っています。
ここでは都道府県別に上記5つの機能の届出病院数を表にまとめてみました。

3府県に見る DPC「新たな機能評価係数Ⅱの上位病院」一覧

今回導入された「機能評価係数Ⅱ」は、これからのDPC対象病院のあり方を示唆するいくつかのポイントを持っています。
設定の6項目(7月時点では5項目)は「急性期医療を提供すべき病院が持つべき機能」を表しており、その内、データ提出係数は全病院が0.0037を取得しているとおり、DPC対象病院が持つべき基本係数となっています。

今回の係数設定で大きな差のついた「救急医療係数」は、救急医療に積極的に取り組むことで、地域の医療機関としての立場や役割が明確になってくる点がポイントになっています。また、「効率性係数」は在院日数を短縮し病床利用率の効率化を図るとともに、地域完結型医療の中核的な役割の構築や連携パスへの積極的な対応が評価されています。
「複雑性係数」は患者構成を表し、重症患者の割合が高く、より専門性の高い病院の係数が高くなっています。

こうした係数の位置づけを考えると、それぞれの項目別係数から病院ごとの特徴や地域での役割を読むことが出来るほかに、今後増加するであろう200床前後の中規模民間病院が目指すポジショニングの明確化を知る上でも参考になります。
ここでは埼玉県、大阪府、熊本県の3府県の「機能評価係数」上位病院を表にまとめてみました。

まとめ

以上、4回にわたって急性期医療を担うDPC対象病院の現況を記しました。
医療制度改革の第一のポイントは医療提供体制の見直しにあり、地域完結型医療提供体制を確立するうえで中心的な役割を担う「急性期病院=DPC対象病院」の機能評価が重要になっています。

今回の診療報酬改定においては「新たな機能評価係数Ⅱ」によるDPCの評価見直しが行われました。次回、次々回の診療報酬改定では、より一層DPC病院の見直しが進められます。その見直し項目や内容を先取りすることこそ病院経営にとっての先決になります。医療人として、こうした動きをどうキャッチし、顧客に提供できるか。的確な情報入手と分析及び提供の重要性が増してきています。

※引用参考資料

1) 厚生労働省各種通達資料
2) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:ワールドネット掲載資料
3) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:News
4) ㈱ファーマネットワーク社内研修資料料

※追記
8月1日から、DPC対象病院の「機能評価係数Ⅱ」に新たな「地域医療係数」が追加されました。これにより当初予定されていた全ての係数(6項目)が揃いました。詳細は、7月30日付の官報で告示されましたので確認してください。

大きく変わる医療環境Ⅲ―機能分化が進むDPC病院―

医療業界の基礎知識(44)

「医療業界の基礎知識」の第44回目は、前回に引き続き、「大きく変わる医療環境」と題し、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、DPC病院における機能変化の動向についてご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

 厚生労働省は5月26日に開催された中央社会保険医療協議会(以下、中医協)の総会に主な施設基準の届出状況等(2007年、08年、09年の各年7月の状況)を報告しました。
それによれば、「入院基本料」や「特定入院基本料」の届出状況において、一般病棟入院基本料は看護配置基準の低い15対1や25対1以下に区分される病院の一部が療養病棟入院基本料に移行するなどで、07年の715,413床から08年は700,358床、09年は690,880床になるなど減床しています。反面、療養病棟入院基本料は07年の209,968床から09年は212,638床へと増床しています。
 また、特定機能病院入院基本料を届出ている病院は、07年の63,799床から09年は64,883床へ、専門病院入院基本料は07年の5,890床から09年は7,587床と増床し、一般病床の中では機能が充実し施設基準の高い病床が増加していることがわかります。
4月の診療報酬改定においても施設基準の届出等が必要な項目が見直され、大幅に点数が評価された項目もありました。特に急性期一般病院においては、入院基本料の施設基準を高め、届出ることで収入アップにつながるなど、医療提供体制の見直しや機能強化に標準を定めた動きが進んでいます。
 今回は、「大きく変わる医療環境」のまとめとして、「機能分化が進むDPC病院」と題してその現況を整理してみました。

減少が進む病院数と病床数

 厚労省が6月14日に発表した「3月度医療施設動態調査」の「種類別にみた施設数及び病床数」によれば、確実に病院数と病床数が減少していることがわかります。(表1、2参照)

種類別にみた施設数及び病床数・表1

種類別にみた施設数及び病床数・表2

 病院が地域の中で勝ち残る条件には多くの基本がありますが、その中から代表的ないくつかのポイントをまとめてみると

◎病院経営・今後のポイント

(1)急性期病院か、亜急性期一般病院や回復期リハビリ等の専門機能病院か、慢性期病院か等、自院の進むべき方向性の選択及び明確化
 ・急性期病院は7:1の看護体制と平均在院日数7日以内、一般病院は13:1以上が基本、
 最低でも15対1、慢性期病院は25:1以上の入院基本料取得
・自院の現状と地域需要(患者動向)を的確に分析し、冷静に対応(高齢化に伴う福祉や介護施設への変換・移行も考慮)

(2)「医療はサービス産業」―医療技術とサービスの向上が基本―
 ・受益者負担の増加や医療機関同士の競争激化への対応
 ・患者の厳しい選択眼に対応できる施設作りと運営
 ・患者に対するホスピタリティーの発揮が組織全体の使命⇒常に向上意欲の持続を
 ・地域での役割や連携を踏まえた病院運営が必要

◎病院が勝ち残る「4つの基本」

(1)技術力と魅力
 ・良質な医療を的確に提供できるマンパワーの資質向上(チーム医療の充実と確立)
 ・地域トップレベルの医療機能・特長の整備・充実

(2)患者や地域の医療機関を呼べる力、頼られる仕組
 ・職員全員のホスピタリティー能力の向上
 ・拡大する診療圏における地域連携ネットワークづくり

(3)経営企画力
 ・経営者と幹部職員の資質向上
 ・財務体質の強化
 ・情報収集と分析能力

(4)適地医療、医療適地を考慮した体制作りと投資力
・医療制度改革等の環境変化に対応できる組織力
・地域での役割や「地域内で完結できる医療連携」を重視した運営組織の確立

◎医療機能評価と医療機関のポジショニング

(1)地域が求めている医療とかけ離れていないか
 ・地域の医療対象人口や対象疾病の分析を的確に行っているか
 ・地域内での立地位置の検証を正しく見定めているか

(2)自院の持つ医療機能を常に高めているか
 ・「専門化、特色付け」には、常に地域内での№1を求められる

(3)経営資源の総合的な活用
 ・医療制度改革等の環境変化に対応できる組織力
 ・情報収集と分析能力は(担当職員のレベル向上を図っているか)

 などです。勿論、上記以外に実行すべき多くのポイントがありますが、紙面が限られているため一部のみ記しました。

急性期病院の全てがDPC対象病院として勝ち残れるか

 厚労省が6月14日に発表した「医療施設動態調査」をベースにDPC対象病院の現況を簡単にまとめてみると、2010年4月からの対象病院1,334病院は、10年3月現在の一般病院数7,621病院に対し17.5%を占めています。また病床数は一般病床904,506床に対し約50%の448,000床強に達しています。
 したがって今後も参加が予定されている対象病院を考慮した場合、全てのDPC対象病院が今までと同じように急性期の病院として地域の中核的な役割が果たせるかどうか、疑問符がつく可能性があります。また、収入においても前年度分が保障されるとは限りません。また、施設機能の見直し等によっては対象病院から外されることも考えられます。
 2010年度の診療報酬改定では、DPC対象病院においても新たに次のような評価・見直しが行われました(前号でポイントを記載)。

1.入院基本料の早期の加算引き上げ等、診断群分類点数表や医療機能別係数に反映
2.DPCにおける調整係数の段階的廃止及び新たな機能評価係数の導入
3.診断群分類点数表の設定方法の見直し

 前号でも記しましたが、今までの医療機関別調整係数の一環として従来の機能評価係数Ⅰに加え、新たに機能評価係数Ⅱが追加されました。このポイントは、DPC対象病床を重症度と在院日数で色分けし、対象病院の中でも「優れた医療機能を持つ病院を診療報酬で優遇する」ことにあります。その一つが「3種類の逓減制」導入による「診断群分類点数表の見直し」でした。
 基本は、入院初期の1日当たりの医療資源平均投入量が、1入院期間での1日当たりの医療資源平均投入量に比べ

(1)非常に大きい場合
 入院期間Ⅰまでの点数を1日当たりの医療資源平均投入量により設定して引き上げ、それ以降の点数を引き下げる

(2)大きな違いがない場合
 入院期間Ⅰまでの点数の加算分を15%から10%に引き下げ、それ以降の点数を引き上げる

(3)これ以外の場合
今までの設定方法を適用する

 と、なっています。これによって優れた医療機能を持つ病院は、平均在院日数を短縮し病床を効率よく活用することで、1日当たりの診療報酬点数を高め、経営効率を改善することができるようになります。したがって、経営の基本である「日当点×患者数=医業収入」の効率化を図り収入アップにつなげることができるのです。
 要は自院の現況を把握し解析結果に応じた改善を、医師だけでなくコ・メディカル(事務職も含めた)全員が意識し、患者に提供する医療内容を積極的に変えて行く組織体制ができるかどうかです。
そのためには

(1) 正確な診療情報が診療録に記載される院内の体制整備
(2) 質の高いCPが作成され、その運用をチェックする仕組みの整備
(3) データを分析し、その内容に応じて診療を変えるスタッフが優遇される人事考課制
度の整備・確立
(4) 経営者の意を汲み、変われない現場に対し変わることを後押しするスタッフが院内にいる
(5) これらの意識改革をとおして地域完結型医療推進の役割を担える病院としての意識と存在価値の向上を図る

ことなどが重要になります。
 こうした中で民間の急性期病院では、①意識改革が非常に進んでいる病院 ②意識改革があまり進んでいない病院 ③現状のままで殆ど変わっていない病院の3つの姿が見受けられます。

意識改革が進む民間の急性期病院では
・チーム医療の実践
・職員のホスピタリティーや医療に対する役割意識が明確
・医療機能の絞込み
・地域医療連携の推進
・医師以下、職員全員のコスト意識等、経営感覚の向上

 に努めています。一般企業から見れば当たり前のことですが、規制という枠の中で守られ競争意識が薄かった医療経営が、サービス産業として評価されるようになった昨今、大きな競争原理が働くのは必然的なことと思われます。

まとめ

 下記の図は、機能別集約化が進む一般病床の状況に照らして病院が今後どのように変化するかを「ポートフォリオによる医療機能評価」として示したものです。

ポートフォリオによる医療機能評価

 これから診療報酬改定の都度、DPC評価の見直しが進むことで、2014年度~2016年度の診療報酬改定ぐらいまでには対象病院にも大きな影響が出てきます。その影響はDPC対象病院の存在価値そのものにも現れ、役割や機能の見直しを含めた医療提供体制の改変が今後、急ピッチで進むと予想されます。
 以上、急性期病院としてのDPC対象病院に関するいくつかの問題点を記しました。
次回は、このシリーズのまとめとして特定の地域をとりあげ現状を分析してみます。

※引用参考資料

1) 厚生労働省各種通達資料
2) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:ワールドネット掲載資料
3) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:News
4) ㈱ファーマネットワーク社内研修資料

大きく変わる医療環境Ⅱ―DPC病院における機能変化の動向―

医療業界の基礎知識(43)

「医療業界の基礎知識」の第43回目は、前回に引き続き、「大きく変わる医療環境」と題し、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、DPC病院における機能変化の動向についてご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

診療報酬が改定され1ヶ月余りが過ぎました。新点数表に基づく4月分の請求で喜ぶ医療機関がある反面、「こんなはずではなかったが」と、厳しい状況を噛み締めている医療機関もあります。
前回、医療制度の確立に必要な「3要素+1」について基本的な考え方を記しました。全てが重要であることは論を待ちませんが、なかでも「医療財源」の確保がポイントになります。しかし、厳しい政治環境や経済環境の中で、今後も確実に伸張する国民医療費の財源をどう確保するのか、なかなかまとまらないのが現況です。
財務省は5月11日、2009年度末時点における国債や借入金などを含めた「債務残高(いわゆる国の借金)」が過去最高になった、と発表しました。その内容は、前年同期に比べて36兆4265億円(4.3%)多い882兆9235億円で、総務省が発表した4月1日現在の推計人口(約1億2739万人)に基づいて計算すると、赤ちゃんを含めた国民一人当たりの謝金残高は約693万円となっています。このような借金国の日本が、これからも伸張する医療費をどこから捻出するのか、末恐ろしい気がします。
こうした中で今回は、医療提供体制の基本である医療施設の変化について、DPCの見直しや施行病院の拡大等を中心に、急性期病院の機能別変化等をまとめてみました。

「サービス提供体制の構造改革」と「人的・物的資源の計画的整備」が基本に

2010年度・診療報酬改定のポイントは、
◎ 重点課題1「救急、産科、小児科、外科等の医療の再建」
◎ 重点課題2「病院勤務医の負担軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」

等にありました。その結果、多くの再評価及び見直しなどが行われましたが、その基本は

◎サービス提供体制の構造改革としての
 1.病院機能の効率化・高度化
  ⇒地域医療計画の見直しに伴う中核病院を中心とした、人・モノの配置
 2.地域における医療機能のネットワーク化と役割の充実(連携パス等の活用)
 3.地域における医療・介護・福祉の一体的提供
 4.医療・介護を通じた専門職間の役割分担の見直しと協働体制の構築
◎ 人的・物的資源の計画的整備
 1.人的資源の確保とコ・メディカルの能力と役割の強化(チーム医療)
 2.物的資源(機能)の整備

等に整理することができます。これらの中からいくつかをより具体的にまとめてみると

◎ 「患者に良いシステムやイノベーション」には高評価
 1.自院の持つ役割の明確化(地域の中核的な機能や専門特化への対応)
 2.中核機能を活かした「地域完結型医療提供体制」への積極的な取組み
 3.患者が求める医療を的確に対応・提供
◎ 「経営上の視点」からの高評価
 1.「日当点」×「患者数」= 収益 の原則を確保
 2.患者が求める領域間連携のための組織的工夫の設営と研修
◎ 「専門領域における機能横断的なスモールユニットの形成と活用」
 1.患者への安心感(時代の流れに対応した組織作り)
 2.機能横断的な組織の確立と活用で患者による施設シェアリングを援助
 3.スペシャリティ特化(グループ組織内専門医体制)による患者重視体制の確立

などがあり、冒頭の4月分の請求で喜ぶ医療機関がある反面、「こんなはずではなかったが」と、厳しい状況を噛み締めている医療機関もある状況に結びついてきます。

DPC対象病院を中心とした急性期中核病院の取得機能別軒数にみる地域特性

2010年4月からDPC病院が1334病院に拡大しました。このDPC対象病院が持つ機能別特長を分析したのが別表Ⅰですが、筆者なりに「急性期地域中核病院」として持つべき代表的な施設機能を取り上げ地区別にまとめてみると、地域ごとに違いがあることが分かります。
別表ではDPC対象病院以外に、「地域医療支援病院」「救命救急センター」「がん診療拠点病院」等の高施設機能別病院数を記しましたが、この中でDPC単独取得病院数が811病院と、全体の60.8%を占めています。細かい内訳は紙面の都合上掲載していませんが、平均の60.8%以上の地区が北海道、南関東、甲信越北陸、近畿、九州で、56.2%と低い東海地区は別格として「競争が激しい医療機関乱立の二次医療圏」を多く抱える都道府県を中心とした地区に多くの病院が存在します。
DPC対象病院は2010年度の改定から下記のような評価・見直しが行われました。過去のように「急性期病院として生き残るためにDPC対象病院になる」とした時代は早晩過ぎ去り、DPC対象病院による厳しい競争時代になることが予想されます。

DPC対象病院を中心とした急性期中核病院の取得機能別軒数にみる地域特性

DPC対象病院は競争時代に突入

2010年度の診療報酬改定では重点課題1に見られるとおり「救急、産科、小児科、外科等の医療の再建」に意をつくした改定になっています。特に「質が高く効率的な急性期入院医療の推進」としてDPCの評価・見直しが行われ、機能評価係数Ⅱが導入されるなど、DPCにとって制度導入後では最大の見直しとなっています。

評価・見直しの基本は
1.入院基本料の早期の加算引き上げ等、診断群分類点数表や医療機能別係数に反映
2.DPCにおける調整係数の段階的廃止及び新たな機能評価係数の導入
3.診断群分類点数表の設定方法の見直し

にありました。この結果、調整係数の段階的廃止と新たな機能評価係数(Ⅱ)の導入により2010年度の改定は、DPC病院「競争時代突入」への第一歩といわれています。
今回の改定では、「前年並みの医療費を保障する」と巷間伝えられてきた医療機関別係数の平均が1.08となり、僅か0.98がアップの財源になっています。この医療機関別係数の部分は今後下がる傾向にあり、あと4回ぐらいの改定を経て調整係数はなくなる予定です。
調整係数廃止後は、出来高部分の機能評価係数Ⅰの比率を低める方向へもってゆき、調整係数に置き換わる部分(機能評価係数Ⅱ)を拡大する方向にあります。したがって今後は、新たに導入された機能評価係数Ⅱによる「施設機能強化」への競争時代に入ってくると予想されています。

機能評価係数Ⅱを6指数に分類

新たに導入された機能評価係数Ⅱは、4月~7月までの調整係数5項目と8月以降に追加される調整係数1項目(地域医療指数)の6項目からなっており、現時点では5項目分が公表されています。
その内訳は、全病院に0.0037が付いた「データ提出指数」以外の項目で病院間に大きな差がついています。「効率性指数」では最高が0,0075で39病院が同じ値になり、全病院平均の0.0037を超えているのが約47.8%の637病院に対し、0.0000が19病院もありました。「複雑性指数」の全病院平均は0.0034で最高の0.0069が48病院、平均以上が587病院、最低の0.0000が17病院となっています。「カバー率指数」では、最高の0.0064に60病院が、全病院平均の0.0026を超えているのが550病院、最低の0.0000は1病院のみでした。
全体の係数に大きく影響を与えたのが「救急医療係数」で、最高の0.0124に53病院が、全病院平均の0.0061を超えているのが614病院、最低の0.0000が2病院でした。5項目の合計値の最高は済生会熊本病院の0.0340で、最低の0.0061との差は0.0279となり、約5.6倍の開きが出ています。
参考までに上位20位までの病院及び20位までの大学病院の一覧表を添付しましたが、一般病院と大学病院の係数で大きな差となったのが救急医療指数でした。

機能評価係数Ⅱを6指数に分類1

機能評価係数Ⅱを6指数に分類2

まとめ

以上、地域の中核病院のブロック別軒数一覧表にあわせ、2010年度診療報酬改定で導入された「新たな機能評価係数」に基づくDPC病院の現状について簡単に記しました。厳しい医療経営環境の中で、医療提供体制の見直しがますます進められます。その代表的な例がDPC病院の評価・見直しや定額払い制度の拡大です。
次回は、DPC病院の今後のあり方について纏めてみます。

※引用参考資料

1) 厚生労働省各種通達資料
2) 厚労省保険局医療課「平成22年度DPC病院評価係数」
3) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:ワールドネット掲載資料
4) CSD㈱ユート・ブレーン事業部:News
5) ㈱ファーマネットワーク社内研修資料

大きく変わる医療環境Ⅰ―2010年度診療報酬改定と影響を考える―

医療業界の基礎知識(40)

「医療業界の基礎知識」の第40回目は、「診療報酬改定のポイントと審議動向」のうち、「2010年度診療報酬改定に係る基本的考え」について、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、ポイントをまとめてご説明しています

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

12月も半ばに入り社会保障審議会医療保険部会や中医協の診療報酬基本問題小委員会等による、2010年度診療報酬改定に向けた審議が活発化してきました。また、中医協・薬価専門部会では、特許期間中の新薬の薬価を引き下げない「薬価維持特例制度(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)」の導入スキーム案などの審議が進められています。現時点では2010年度の予算案が決まっていないため、診療報酬改定の基本案は固まったものの細部に関する課題等については、まだ完全な形にはまとまっておりません。
 こうした現況の中で今回は全体的な流れを知っておくために必要な事項として、12月8日に開催された社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で決定した「2010年度診療報酬改定に係る基本的考え」の中からいくつかのポイントを整理してみました。

2010年度診療報酬改定の基本的考え方

1.基本認識・重点課題等

  • 医療は、国民の安心の基盤であり、国民一人一人が必要とする医療を適切に受けられる環境を整備する
  • 医療費が国際的にみてもGDPに対して極めて低水準にあるなかで、これまで医療現場の努力により、効率的で質の高い医療を提供してきたが、高齢化の進展による患者増などにより、医療現場は疲弊してきている
  • 前回の診療報酬改定においても、こうした医療現場の疲弊や医師不足などの課題が指摘される中で所要の改定が行われたが、これらの課題は必ずしも解消しておらず、我が国の医療は、依然として危機的な状況に置かれている
  • このような状況については、前回改定の改定率が必ずしも十分でなかったため、今回の改定においては、医療費全体の底上げを行うことにより対応すべきであるとの意見があった。一方で、賃金の低下や失業率の上昇など、国民生活も厳しい状況に置かれており、また、保険財政も極めて厳しい状況にある中で、医療費全体を引き上げる状況にはなく、限られた財源の中で、医療費の配分の大幅な見直しを行うことにより対応すべきとの意見があった。また、配分の見直しのみでは医療危機を食い止めることは困難なところまできているので、今回は医療費全体の底上げと配分の見直しの両者により対応すべきとの意見があった
  • このような議論を踏まえた上で、2010年度診療報酬改定においては、「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」及び「病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」を改定の重点課題として取り組むべきである
  • また、その際には、診療報酬だけで現在の医療が抱える課題の全てを解決できるものではないことから、診療報酬が果たすべき役割を明確にしつつ、地域特性への配慮や使途の特定といった特性を持つ補助金をはじめとする他の施策との役割分担を進めていくべきである

2.改定の視点

 ● 「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」、「病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」といった重点課題以外にも、がん対策や認知症対策など、国民の安心・安全を確保していく観点から充実が求められている領域も存在している
 このため、「充実が求められる領域を適切に評価していく視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである

 ● 一方、医療は、これを提供する側と受ける側との協働作業であり、患者が必要な情報に基づき納得した上で医療に参加していける環境を整えることや、安全であることはもちろん、生活の質という観点も含め、患者一人一人の心身の状態にあった医療を受けられるようにすることが求められる
 このため、「患者から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである

 ● また、患者の視点に立った場合、質の高い医療をより効率的に受けられるようにすることも求められるが、これを実現するためには、国民一人一人が日頃から自らの健康管理に気を付けることはもちろんのこと、生活習慣病等の発症を予防する保健施策との連携を図るとともに、医療だけでなく、介護も含めた機能分化と連携を推進していくことが必要である
 このため、「医療と介護の機能分化と連携の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである

 ● 次に、医療を支える財源を考えた場合、医療費は保険料や公費、患者負担を財源としており、国民の負担の軽減の観点から、効率化の余地があると思われる領域については、その適正化を図ることが求められる
 このため、「効率化の余地があると思われる領域を適正化する視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである

◆2010年度診療報酬改定の基本方針(2つの重点課題と4つの視点から)

Ⅰ 重点課題

(1) 救急、産科、小児、外科等の医療の再建
 ● それぞれの地域で関係者が十分に連携を図りつつ、救急、産科、小児、外科等の医療を適切に提供できる体制をさらに充実させていく

 ● このため、地域連携による救急患者の受入れの推進や、小児や妊産婦を含めた救急患者を受け入れる医療機関に対する評価、新生児等の救急搬送を担う医師の活動の評価や、急性期後の受け皿としての有床診療所も含めた後方病床・在宅療養の機能強化、手術の適正評価などについて検討する

(2) 病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)
 ● 救急、産科、小児、外科等の医療を適切に提供できる体制を充実させていくためにも、これらの医療の中心的役割を担う病院勤務医の過酷な業務に関する負担の軽減を図ることが必要であり、これらの医療を担う医療機関の従事者の確保や増員、さらには定着を図ることが出来るような環境を整備する

 ● 看護師や薬剤師等医師以外の医療職が担う役割の評価や、看護補助者等医療職以外の職員が担う役割の評価など、入院医療の充実を図る観点からの評価について検討するとともに、医療クラークの配置の促進など、医師の業務そのものを減少させる取組に対する評価などについて検討する

 ● 診療所を含めた地域の医療機関や医療・介護関係職種が、連携しつつ、それぞれの役割を果たしていけるような仕組みが適切に機能することが、病院勤務医の負担の軽減につながると考えられることから、この点を踏まえた診療報酬上の評価について検討する

Ⅱ 4つの視点

(1) 充実が求められる領域を適切に評価していく視点
 ● 我が国の医療の中で充実が求められている領域については、診療報酬においても適切に評価していく

 ● がん医療の推進や認知症医療の推進、新型インフルエンザや結核等の感染症対策の推進や肝炎対策の推進、質の高い精神科入院医療の推進や歯科医療の充実などに対する適切な評価について検討する

 ● 一方、手術以外の医療技術の適正評価についても検討するとともに、新しい医療技術や医薬品等については、イノベーションの適切な評価について検討する

(2) 患者からみて分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点
 ● 医療の透明化や、診療報酬を患者等に分かりやすいものとすること。医療安全対策の推進や、身の特性や生活の質に配慮した医療の実現、疾病の重症化予防などに対する適切な評価

(3) 医療と介護の機能分化と連携の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点
 ● 質の高いサービスをより効率的に受けられるようにするために、医療と介護の機能分化と連携を推進していく。医療機関・介護事業所間の連携や医療職種・介護職種間の連携などを推進していく

 ● 質が高く効率的な急性期入院医療や回復期リハビリテーション等の推進や、在宅医療や訪問看護、在宅歯科医療の推進など、医療と介護の機能分化と連携などに対する適切な評価

 ● 医療職種はもちろんのこと、介護関係者をも含めた多職種間の連携などに対する適切な評価についても検討する

(4) 効率化余地があると思われる領域を適正化する視点
 ● 医療費は保険料や公費、患者負担を財源としており、国民の負担を軽減する観点から、効率化の余地があると思われる領域については、その適正化を図る

 ● 後発医薬品の使用促進や、市場実勢価格等を踏まえた、医薬品・医療材料・検査の適正評価などについて検討する

 ● 相対的に治療効果が低くなった技術については、新しい技術への置き換えが着実に進むよう、適正な評価の在り方について検討する

Ⅲ 後期高齢者医療の診療報酬について(略)

Ⅳ 終わりに

 ● 中央社会保険医療協議会においては、本基本方針の趣旨を十分に踏まえた上で、国民、患者の医療ニーズに即した具体的な診療報酬の改定案の審議を進められることを希望する

診療報酬改定項目の審議状況

診療報酬改定項目の審議状況
中医協における現時点までの審議をとおして、委員間でほぼ合意に達した改定項目は次のとおりです。
◎初診・再診料
 ・ 再診料の病診統一
 ・ 外来管理加算の5分要件の撤廃
◎入院基本料
 ・ 引上げの方向へ
◎療養病棟
 ・ 療養病棟の機能の評価(質的向上への取組みを含め)
◎有床診療所
 ・ 有床診療所入院基本料の逓減制の緩和
 ・ 在宅医療や介護施設の後方病床としての機能の評価
◎病院勤務医負担軽減策
 ・ 医療事務作業補助体制加算の緩和
 ・ 入院時医学管理加算の評価の充実
◎医療連携
 ・ 地域クリティカルパスの評価
◎医療安全
 ・ 手厚い院内感染対策に対する評価
 ・ 専従の医薬品安全管理責任者の配置に対する評価
◎在宅医療
 ・ 在宅療養支援病院の要件緩和
◎リハビリテーション
 ・ 廃用症候群の患者に対するリハビリテーションの評価
 ・ 維持期リハビリテーションの評価の継続
 ・ 回復期リハビリテーション病棟入院料の「質の評価」の継続
 ・ 休日診療提供体制の充実した回復期リハビリ病棟の評価
◎後発医薬品の使用促進
 ・ 処方せんに記載された先発品と含量規格が異なる後発品や先発品と類似した別剤形の後発品の調剤の容認
 ・ 薬剤料を包括外で算定している入院患者に対する変更
 ・ 医師が患者に対し後発品の説明後、使用の以降をたずねる取組みの評価

まとめ

2010年度診療報酬改定にあたって厚労省は、技術料本体部分について1.73%のプラス改定を財務省に求めています。反面、財務省は厳しい財政状況から診療報酬全体を引上げなくても配分の見直しで調整できるとしながら、薬価等の引下げ分を含めて診療報酬全体で3%の引下げを求めています。
今後、年末の予算案決定まで、厳しい綱引きが行われることが予想されます。

※引用参考資料

1) ユート・ブレーン㈱:ワールドネット掲載資料
2) ユート・ブレーン㈱:調査資料
3) 厚生労働省各種通達資料

2010年度診療報酬改定に向けて その5―診療報酬改定のポイントと審議動向―

医療業界の基礎知識(41)

「医療業界の基礎知識」の第41回目は、「診療報酬改定のポイントと審議動向」のうち、「2010年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」を、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、ポイントをまとめてご説明しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2010年度診療報酬改定に係る検討状況について第174通常国会が18日に召集されました。会期は6月16日までの150日間と決められていますが、昨年の鳩山政権誕生後、本格的な国会審議は初めてと言ってもよく、2009年度第2次補正予算案及び2010年度予算案の審議が速やかに行われ成立するかどうか、その動向を見守りたいと思います。
こうした現況の中で15日に中医協総会が開催され、昨年来審議されてきた2010年度の診療報酬改定の最終案が「2010年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」としてまとめられました。
この結果を受けて厚労省は、ホームページに「2010年度診療報酬改定について、皆様からの御意見をお聞かせください」と題し、「2010年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」」の全容を掲載し、22日まで国民の意見を受け付けています。その後、これ等の意見を参考にしながら中医協での審議を進め、2月中旬には改定の詳細を決定することになっています。
ここでは発表された「2010年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」が多頁にわたっているため、その項目の概要を抜粋・記載し、最後に医薬品関係の使用に関係する項目の内容をまとめてみました。

「2010年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」の基本項目

◎重点課題 1 救急、産科、小児、外科等の医療の再建

1 地域連携による救急患者の受入れの推進
2 小児や妊産婦を含めた救急患者を受け入れる医療機関に対する評価及び新生児等の救急
搬送を担う医師の活動の評価
3 急性期後の受け皿としての後方病床・在宅療養の機能強化
4 手術の適正評価

◎重点課題 2 病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)

1 入院医療の充実を図る観点からの評価
2 医師の業務そのものを減少させる取組に対する評価
3 地域の医療機関の連携に対する評価
4 医療・介護関係職種の連携に対する評価について

○ Ⅰ 充実が求められる領域を適切に評価していく視点
1 がん医療の推進
2 認知症医療の推進
3 感染症対策の推進
4 肝炎対策の推進
5 質の高い精神科入院医療等の推進
6 歯科医療の充実
7 手術以外の医療技術の適正評価
8 イノベーションの適切な評価

○ Ⅱ 患者からみて分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点
1 医療の透明化に対する評価
2 診療報酬を患者等に分かりやすいものとすることに対する評価
3 医療安全対策の推進
4 患者一人一人の心身の特性や生活の質に配慮した医療の実現に対する評価
5 疾病の重症化予防

○ Ⅲ 医療と介護の機能分化と連携の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点
1 質が高く効率的な急性期入院医療等の推進
2 回復期リハビリテーション等の推進
3 在宅医療の推進
4 訪問看護の推進
5 在宅歯科医療の推進
6 介護関係者を含めた多職種間の連携の評価
7 調剤報酬

○ Ⅳ 効率化余地があると思われる領域を適正化する視点
1 後発医薬品の使用促進
2 市場実勢価格等を踏まえた医薬品・医療材料・検査の適正評価
3 相対的に治療効果が低くなった技術等の適正な評価

○ Ⅴ 後期高齢者医療の診療報酬

診療報酬改定財源の一部を医薬品等医療材料(モノの部分)分野に求める体制作り

 診療報酬改定財源の一部を医薬品等医療材料(モノの部分)分野に求める体制作り2010年度の診療報酬改定は全体で0.19%の引き上げとなり、医療関係者の間では久しぶりの引上げを評価する声があります。反面、引上げ率の低さなど「悲喜こもごも」といった感がありますが、医療費ベースで1.55%の引上げは現在の経済環境や生活環境を考えると、それなりに高い引上げ率ではないかと思われます。
引上げ率の内容を精査するにはまだ時間を要しますが、今回は本体部分(技術料)の引き上げ幅を見直すと同時に、配分比率も従来の「医科1:歯科1:調剤0.4」を「医科1:歯科1.2:調剤0.3」にするなど大きな差が出ています。
また、引上げ財源の捻出に薬価や材料価格の引下げから求める状況は今迄と変わりませんが、今回は、引下げ率を高めるだけでなく後発医薬品の使用促進を図り、医療費全体に占める医薬品等の費用比率を下げる政策が随所に見られます。
ここでは「調剤報酬の見直し」と「後発医薬品の使用促進策」について、ポイントをまとめてみました。

※ 調剤報酬について

(1) 長期投薬時における一包化薬調剤料と内服薬調剤料の差を縮めるため、一包化薬調剤料を見直し、内服薬調剤料の加算として位置付けた上で長期投薬時の評価を適正化するなど、患者に分かりやすい点数体系とする。
また、併せて、長期投薬の増加を踏まえ、現行22日分以上の調剤料が一律となっている内服薬調剤料について適切な評価を行う。

(2) 湯薬の調剤料について、投薬日数の伸びとそれに伴う調剤に要する手間にかんがみ、適切な評価を行う。

(3) 特に安全管理が必要な医薬品(ハイリスク薬)が処方された患者に対して、調剤時に関連副作用の自覚症状の有無を確認するとともに、服薬中の注意事項等について詳細に説明した場合の評価を新設する。

(4) 処方せん受付回数が4,000回超/月等の場合に適用される調剤基本料の特例について、夜間・休日等の対応や訪問薬剤管理指導を行い、地域医療を支える薬局であっても、近隣に比較的規模の大きい病院が1つしかないために、結果として適用となる場合があることから、時間外加算等や在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定に係る処方せんについて受付回数から除いた上で特例の適用の要否を判断することや評価の引上げを行うことなど、所要の見直しを行う。

効率化余地があると思われる領域を適正化する視点

○後発医薬品の使用促進について
(1) 薬局における後発医薬品の調剤を促すため、調剤基本料の後発医薬品調剤体制加算の要件(処方せんベースでの後発医薬品の調剤率30%以上)を変更し、数量ベースでの後発医薬品の使用割合で規定することとする。
 具体的には、使用割合が20%以上、25%以上及び30%以上の場合に段階的な加算を適用することとし、特に25%以上及び30%以上の場合を重点的に評価することとする。

(2) 薬局の在庫管理の負担を軽減する観点から、「変更不可」欄に署名等のない処方せんを受け付けた薬局において、
 ① 変更調剤後の薬剤料が変更前と同額又はそれ以下であり、かつ、
 ② 患者に説明し同意を得ること

を条件に、処方医に改めて確認することなく、処方せんに記載された先発医薬品又は後発医薬品と含量規格が異なる後発医薬品の調剤を認めることとする。
また、同様の観点から、患者に説明し同意を得ることを条件に、処方医に改めて確認することなく、処方せんに記載された先発医薬品又は後発医薬品について、類似した別剤形の後発医薬品の調剤を認めることとする。
 なお、薬局において、含量規格が異なる後発医薬品又は類似した別剤形の後発医薬品への変更調剤を行った場合には、調剤した薬剤の銘柄、含量規格、剤形等について、当該処方せんを発行した医療機関に情報提供することとする。

(3) 医療機関における後発医薬品の使用を進めるため、薬剤部門が後発医薬品の品質、安全性、安定供給体制等の情報を収集・評価し、その結果を踏まえ院内の薬事委員会等で採用を決定する体制を整えるとともに、後発医薬品の採用品目数の割合が20%以上の医療機関について、薬剤料を包括外で算定している入院患者に対する入院基本料の加算として、評価を行う。

(4) 外来患者が、より後発医薬品を選択しやすいようにするため、保険医療機関及び保険医療養担当規則等において、保険医は、投薬又は処方せんの交付を行うに当たって、後発医薬品の使用を考慮するとともに、患者に後発医薬品を選択する機会を提供すること等患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならない旨を規定することとする。

○市場実勢価格等を踏まえた医薬品・医療材料・検査の適正評価について
・医薬品、医療材料、検査等について、市場実勢価格等を踏まえた適正な評価を行う。

○相対的に治療効果が低くなった技術等の適正な評価について
・画像診断において、新しい技術への置き換えが着実に進むよう、適正な評価体系に見直す。
・検査、処置及び手術については、診療行為の実態や用いている医療機器の価格を踏まえて診療科間の平準化を図る観点から、適正な評価体系に見直す。

以上、1月15日に開催された中医協総会において審議され公表された「2010年度診療報酬改定に係る検討状況について(現時点の骨子)」の中から一部分を抜粋しまとめました。公表された資料は多頁に亘っています。厚労省のホームページをとおしてご覧になることを勧めます。

※引用参考資料

1) ユート・ブレーン㈱:ワールドネット掲載資料
2) ユート・ブレーン㈱:調査資料
3) 厚生労働省各種通達資料(平成22年1月15日付け・中医協関係発表資料)
  (厚労省ホームページをご覧ください)

2010年度診療報酬改定に向けて その4―診療報酬改定のポイントと審議動向―

医療業界の基礎知識(40)

「医療業界の基礎知識」の第40回目は、「診療報酬改定のポイントと審議動向」のうち、「2010年度診療報酬改定に係る基本的考え」について、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、ポイントをまとめてご説明しています

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

12月も半ばに入り社会保障審議会医療保険部会や中医協の診療報酬基本問題小委員会等による、2010年度診療報酬改定に向けた審議が活発化してきました。また、中医協・薬価専門部会では、特許期間中の新薬の薬価を引き下げない「薬価維持特例制度(新薬創出・適応外薬解消等促進加算)」の導入スキーム案などの審議が進められています。現時点では2010年度の予算案が決まっていないため、診療報酬改定の基本案は固まったものの細部に関する課題等については、まだ完全な形にはまとまっておりません。
 こうした現況の中で今回は全体的な流れを知っておくために必要な事項として、12月8日に開催された社会保障審議会の医療部会と医療保険部会で決定した「2010年度診療報酬改定に係る基本的考え」の中からいくつかのポイントを整理してみました。

2010年度診療報酬改定の基本的考え方

1.基本認識・重点課題等

  • 医療は、国民の安心の基盤であり、国民一人一人が必要とする医療を適切に受けられる環境を整備する
  • 医療費が国際的にみてもGDPに対して極めて低水準にあるなかで、これまで医療現場の努力により、効率的で質の高い医療を提供してきたが、高齢化の進展による患者増などにより、医療現場は疲弊してきている
  • 前回の診療報酬改定においても、こうした医療現場の疲弊や医師不足などの課題が指摘される中で所要の改定が行われたが、これらの課題は必ずしも解消しておらず、我が国の医療は、依然として危機的な状況に置かれている
  • このような状況については、前回改定の改定率が必ずしも十分でなかったため、今回の改定においては、医療費全体の底上げを行うことにより対応すべきであるとの意見があった。一方で、賃金の低下や失業率の上昇など、国民生活も厳しい状況に置かれており、また、保険財政も極めて厳しい状況にある中で、医療費全体を引き上げる状況にはなく、限られた財源の中で、医療費の配分の大幅な見直しを行うことにより対応すべきとの意見があった。また、配分の見直しのみでは医療危機を食い止めることは困難なところまできているので、今回は医療費全体の底上げと配分の見直しの両者により対応すべきとの意見があった
  • このような議論を踏まえた上で、2010年度診療報酬改定においては、「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」及び「病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」を改定の重点課題として取り組むべきである
  • また、その際には、診療報酬だけで現在の医療が抱える課題の全てを解決できるものではないことから、診療報酬が果たすべき役割を明確にしつつ、地域特性への配慮や使途の特定といった特性を持つ補助金をはじめとする他の施策との役割分担を進めていくべきである

2.改定の視点

  • 「救急、産科、小児、外科等の医療の再建」、「病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)」といった重点課題以外にも、がん対策や認知症対策など、国民の安心・安全を確保していく観点から充実が求められている領域も存在している
     このため、「充実が求められる領域を適切に評価していく視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである
  • 一方、医療は、これを提供する側と受ける側との協働作業であり、患者が必要な情報に基づき納得した上で医療に参加していける環境を整えることや、安全であることはもちろん、生活の質という観点も含め、患者一人一人の心身の状態にあった医療を受けられるようにすることが求められる
     このため、「患者から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである
  • また、患者の視点に立った場合、質の高い医療をより効率的に受けられるようにすることも求められるが、これを実現するためには、国民一人一人が日頃から自らの健康管理に気を付けることはもちろんのこと、生活習慣病等の発症を予防する保健施策との連携を図るとともに、医療だけでなく、介護も含めた機能分化と連携を推進していくことが必要である
     このため、「医療と介護の機能分化と連携の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである
  • 次に、医療を支える財源を考えた場合、医療費は保険料や公費、患者負担を財源としており、国民の負担の軽減の観点から、効率化の余地があると思われる領域については、その適正化を図ることが求められる
     このため、「効率化の余地があると思われる領域を適正化する視点」を今回の診療報酬改定の視点の一つとして位置付けるべきである

◆2010年度診療報酬改定の基本方針(2つの重点課題と4つの視点から)

Ⅰ 重点課題

(1) 救急、産科、小児、外科等の医療の再建

  • それぞれの地域で関係者が十分に連携を図りつつ、救急、産科、小児、外科等の医療を適切に提供できる体制をさらに充実させていく
  • このため、地域連携による救急患者の受入れの推進や、小児や妊産婦を含めた救急患者を受け入れる医療機関に対する評価、新生児等の救急搬送を担う医師の活動の評価や、急性期後の受け皿としての有床診療所も含めた後方病床・在宅療養の機能強化、手術の適正評価などについて検討する

(2) 病院勤務医の負担の軽減(医療従事者の増員に努める医療機関への支援)

  • 救急、産科、小児、外科等の医療を適切に提供できる体制を充実させていくためにも、これらの医療の中心的役割を担う病院勤務医の過酷な業務に関する負担の軽減を図ることが必要であり、これらの医療を担う医療機関の従事者の確保や増員、さらには定着を図ることが出来るような環境を整備する
  • 看護師や薬剤師等医師以外の医療職が担う役割の評価や、看護補助者等医療職以外の職員が担う役割の評価など、入院医療の充実を図る観点からの評価について検討するとともに、医療クラークの配置の促進など、医師の業務そのものを減少させる取組に対する評価などについて検討する
  • 診療所を含めた地域の医療機関や医療・介護関係職種が、連携しつつ、それぞれの役割を果たしていけるような仕組みが適切に機能することが、病院勤務医の負担の軽減につながると考えられることから、この点を踏まえた診療報酬上の評価について検討する

Ⅱ 4つの視点

(1) 充実が求められる領域を適切に評価していく視点

  • 我が国の医療の中で充実が求められている領域については、診療報酬においても適切に評価していく
  • がん医療の推進や認知症医療の推進、新型インフルエンザや結核等の感染症対策の推進や肝炎対策の推進、質の高い精神科入院医療の推進や歯科医療の充実などに対する適切な評価について検討する
  • 一方、手術以外の医療技術の適正評価についても検討するとともに、新しい医療技術や医薬品等については、イノベーションの適切な評価について検討する

(2) 患者からみて分かりやすく納得でき、安心・安全で、生活の質にも配慮した医療を実現する視点

  • 医療の透明化や、診療報酬を患者等に分かりやすいものとすること。医療安全対策の推進や、身の特性や生活の質に配慮した医療の実現、疾病の重症化予防などに対する適切な評価

(3) 医療と介護の機能分化と連携の推進等を通じて、質が高く効率的な医療を実現する視点

  • 質の高いサービスをより効率的に受けられるようにするために、医療と介護の機能分化と連携を推進していく。医療機関・介護事業所間の連携や医療職種・介護職種間の連携などを推進していく
  • 質が高く効率的な急性期入院医療や回復期リハビリテーション等の推進や、在宅医療や訪問看護、在宅歯科医療の推進など、医療と介護の機能分化と連携などに対する適切な評価
  • 医療職種はもちろんのこと、介護関係者をも含めた多職種間の連携などに対する適切な評価についても検討する

(4) 効率化余地があると思われる領域を適正化する視点

  • 医療費は保険料や公費、患者負担を財源としており、国民の負担を軽減する観点から、効率化の余地があると思われる領域については、その適正化を図る
  • 後発医薬品の使用促進や、市場実勢価格等を踏まえた、医薬品・医療材料・検査の適正評価などについて検討する
  • 相対的に治療効果が低くなった技術については、新しい技術への置き換えが着実に進むよう、適正な評価の在り方について検討する

Ⅲ 後期高齢者医療の診療報酬について(略)

Ⅳ 終わりに

  • 中央社会保険医療協議会においては、本基本方針の趣旨を十分に踏まえた上で、国民、患者の医療ニーズに即した具体的な診療報酬の改定案の審議を進められることを希望する

診療報酬改定項目の審議状況

診療報酬改定項目の審議状況中医協における現時点までの審議をとおして、委員間でほぼ合意に達した改定項目は次のとおりです。
◎初診・再診料
 ・ 再診料の病診統一
 ・ 外来管理加算の5分要件の撤廃
◎入院基本料
 ・ 引上げの方向へ
◎療養病棟
 ・ 療養病棟の機能の評価(質的向上への取組みを含め)
◎有床診療所
 ・ 有床診療所入院基本料の逓減制の緩和
 ・ 在宅医療や介護施設の後方病床としての機能の評価
◎病院勤務医負担軽減策
 ・ 医療事務作業補助体制加算の緩和
 ・ 入院時医学管理加算の評価の充実
◎医療連携
 ・ 地域クリティカルパスの評価
◎医療安全
 ・ 手厚い院内感染対策に対する評価
 ・ 専従の医薬品安全管理責任者の配置に対する評価
◎在宅医療
 ・ 在宅療養支援病院の要件緩和
◎リハビリテーション
 ・ 廃用症候群の患者に対するリハビリテーションの評価
 ・ 維持期リハビリテーションの評価の継続
 ・ 回復期リハビリテーション病棟入院料の「質の評価」の継続
 ・ 休日診療提供体制の充実した回復期リハビリ病棟の評価
◎後発医薬品の使用促進
 ・ 処方せんに記載された先発品と含量規格が異なる後発品や先発品と類似した別剤形の後発品の調剤の容認
 ・ 薬剤料を包括外で算定している入院患者に対する変更
 ・ 医師が患者に対し後発品の説明後、使用の以降をたずねる取組みの評価

まとめ

2010年度診療報酬改定にあたって厚労省は、技術料本体部分について1.73%のプラス改定を財務省に求めています。反面、財務省は厳しい財政状況から診療報酬全体を引上げなくても配分の見直しで調整できるとしながら、薬価等の引下げ分を含めて診療報酬全体で3%の引下げを求めています。
今後、年末の予算案決定まで、厳しい綱引きが行われることが予想されます。

※引用参考資料

1) ユート・ブレーン㈱:ワールドネット掲載資料
2) ユート・ブレーン㈱:調査資料
3) 厚生労働省各種通達資料

2010年度診療報酬改定に向けて その3―DPC対象病院の現状―

医療業界の基礎知識(39)

「医療業界の基礎知識」の第39回目は、前回に引き続きDPC対象病院の現状について、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、ポイントをまとめてご説明しています

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

11月に入り遅ればせながら新しく選任された中医協メンバーの下で、2010年度の診療報酬改定に向けた審議が動き出しました。前2回においてDPC制度の基本と2010年度診療報酬改定への見直し案について記しましたが、今回はDPC対象病院の現状について、ポイントのいくつかをまとめてみました。
厚労省は既にDPC制度の抜本的な見直しとして、現行の調整係数を廃止し「新たな機能評価係数」を導入することを決めています。
その目的は、DPC対象病院の中でも優れた医療機能を持つ病院を診療報酬で優遇することにあり、現時点の1,283病院、435,000床(一般病床の約48%を占有)から、2010年度には約1,400病院、460,000床強にまで拡大することが見込まれているDPC対象病院を、病院の持つ医療機能別に応じた診療報酬体系で評価することを検討しています。
その評価ポイントとして挙げられ審議が進められているのが次の項目です。

1.正確なデータ提出に対する評価
2.効率化(在院日数の指標)に対する評価
3.複雑性指数(患者構成の指標)に対する評価
4.診断群分類のカバー率による評価
5.その他
 〔・救急医療提供指数 ・診療ガイドラインを考慮した診療体制の確保
  ・医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、社会福祉士の人員確保とチーム医療の推進
  ・院内クリニカルパスの利用率 等〕

DPC評価の見直し ⇒ 3種類の逓減制へ

 今シリーズの「そのⅠ」でも記しましたが、見直し案では、「入院初期の1日当たりの医療資源平均投入量が、1入院期間での1日当たりの医療資源平均投入量に比べ」

(1)非常に大きい場合
 ・入院期間Ⅰまでの点数を1日当たりの医療資源平均投入量により設定して引き上げ、それ以降の点数を引き下げる

(2)大きな違いがない場合
 ・入院期間Ⅰまでの点数の加算分を15%から10%に引き下げ、それ以降の点数を引き上げる

(3)これ以外の場合
 ・現行の設定方法を適用する

 としており、医療機関が持つ機能により診療報酬上での評価に大きな違いが出てきます。
 要は病院の持つ機能によって、(1)は「地域の中核的な役割を持つ総合的な急性期病院」、(2)は「規模よりも専門性に特化した急性期病院」、(3)は「一般的な急性期病院」などに分けられることが考えられます。

DPC対象病院でも、加算等の届出内容によって機能に大きな差異があります

 表Ⅰ及び表Ⅱは、DPC対象病院、地域医療支援病院入院診療加算、救命救急入院料、がん診療連携拠点病院加算、入院時医学管理加算の5機能を届出ている病院数を都道府県別にまとめたものです。都道府県によって病院数や届出数などに大きな違いがあることが分かります。
【※入院時医学管理加算は施設基準が厳しすぎて届出が進まないため、現時点での届出病院は172病院です(内、自治体病院が63病院で届出比率が36.6%となっています)】

表1

表2

次にDPC対象病院1,283病院を複数機能届出病院数別に分けてみると

  • DPC対象病院+特定機能病院       83病院/ 83病院
  • DPC対象病院+地域医療支援病院      192/226病院
  • DPC対象病院+救急センター        184/199病院
  • DPC対象病院+がん診療連携拠点病院     333/376病院
  • DPC対象病院+入院時医学管理加算    165/172病院
  • DPC+上記3機能以上併設        117病院( 9.1%)
  • DPC+上記2機能併設         162病院(12.6%)
  • DPC+上記1機能併設           233病院(18.2%)
  • DPC対象取得のみ            771病院(60.1%)

となっており、DPC及び他の複数機能を届出ている病院が512病院であるのに対し、DPC対象単独取得のみの病院が771病院(60.1%)を占めています。これをブロック別にまとめたのが表Ⅲで、東北地区と中国地区を除いた全ての地区でDPC対象単独病院比率が50%を超えています。

表3

地域の中核的役割を担い「質が高い効率的な入院医療の推進」を図る急性期病院としての届出項目としては、上記の他に代表的な施設項目として、地域連携診療計画管理料、超急性期脳卒中加算、7対1入院基本料などがあります。
これ等を取得することで「医療資源平均投入量」を高めることが、これからのDPC病院としての必須であることは間違いありません。

まとめ

これからの医療提供体制の基本は、患者の早期社会復帰を図るための「疾病管理を実現し対応する」⇒「地域完結型医療」の整備・確立にあります。そのために今は「医療機関の機能別役割を評価する」診療報酬体系に移行する過渡期にあります。巷間、言われている「診療報酬改定の基本を、病院に厚く、診療所に薄い評価で」はなく、上記の、「患者が求める医療提供体制の中で役割を果たせる病院や診療所などの医療機関を評価する」システムが整備されてくると思います。したがって、現在DPCを取得している病院(準備病院を含む約1,400病院、460,000床強)の全ての病院・病床がDPC対象として存続できるとは限りません。

医療に携わる識者の中には「日本の病院の多くは今まで完全治癒まで面倒をみる例が多いが、これでは効率的な医療の提供ができず、医療費の増加に結びつきやすい」と述べながら、「現在の急性期病床46万床は多すぎる。多く見積もっても30万床ではないか。施設の機能的整備が進まなければ15万床は亜急性期を担うようになるのではないか」とも語っています。要はDPC病院に対する早期退院の診療報酬インセンティブを高めることで、病院が持つ機能を通して病床の効率的な活用が図られ、国民医療費の効果的な運用が進められるのです。また病院病床もいたずらに減少させるのではなく合理的に整備され、有機的活用の下で患者に提供されることになります。

以上、「病院が大きく変わる」環境を、私見を交えながらまとめました。11月中旬以降、中医協の審議も集中的に進められるものと思います。
次回は与党の考え方や中医協の審議動向を踏まえ、診療報酬改定の動向を追ってみます。

※引用参考資料
1) ユート・ブレーン㈱:ワールドネット掲載資料
2) ユート・ブレーン㈱:調査資料
3) 厚生労働省各種通達資料

2010年度診療報酬改定に向けて その2 ―DPCの見直し―

医療業界の基礎知識(38)

「医療業界の基礎知識」38回目は、前回に引き続き、2010年度診療報酬改定に向けた主なポイントのうち、DPCの見直しについて、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章がご説明していきます

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

DPC対象病院の総数は7月現在1,283病院で、一般病院数7,665病院の16.7%を占めています。また、病床数で見ると、一般病院病床906,928床に対し対象病院の病床数は434,977床で、48.0%を占めており、2008年度準備病院及び2009年度準備病院の病床数を加えると50.7%を超えています(表1)。
このようにDPC対象病院は拡大していますが、全ての対象病院を同一の枠内で考えてよいのか、検討されています。特に平均在院日数が14日を超えるDPC対象病院をこれからも地域の中核的な急性期病院として評価すべきかどうか等、今後の大きな課題です。
今回は、こうした意味でDPCに関係した診療報酬改定に焦点を当てながら動向をまとめてみました。

表1
医療業界の基礎知識38 表1

2010年度診療報酬改定に向けて

新しい政権の下、2010年度の診療報酬改定に向けた審議・検討が重ねられています。
その1で記したように、厚労省は2010年度の基本方針にあわせ、改定の「視点・方向」の例として4つのポイントを示しています。
また、民主党が先の総選挙においてマニフェストで国民に示した医療政策では、「地域医療を守る医療機関の入院についてはその診療報酬を増額します」と記しており、現在、医療制度改革として進められている「新たな医療計画と連動する医療連携体制」の中心をなす、「4疾病・5事業」による医療連携の構築を図ることができる医療機関の診療報酬を増額することが考えられています。
※4疾病とは(◎脳卒中 ◎がん ◎急性心筋梗塞 ◎糖尿病)
※5事業とは(◎小児医療 ◎救急医療 ◎災害時医療 ◎周産期医療 ◎へき地医療)

あわせて、厚労省政務官に就任した足立参院議員は「2010年度の診療報酬改定は現行の仕組みで行うことになるだろうと」と述べながら、「地域医療を守る公益性のある病院群は診療報酬で支援する」、この中には「地域医療に携わる診療所も含まれる」との考えを示しています。こうした発言等をベースに2010年度の診療報酬改定を予想してみるといくつかのポイントを読むことができます。

○ 医療の効率化
○ 定額医療の拡大と地域医療完結型連携体制の確立・評価
○ DPC制度の見直しと急性期医療の機能強化と評価
○ コ・メディカルを含めたマンパワーの評価
○ 医療費の効率的な配分(後発医薬品の使用促進等)  等

DPCの見直し

 2010年度診療報酬改定のポイントとしてDPCの見直し審議が進められています。病院経営者の多くはDPC対象病院のメリットとして次のような事項を挙げ、DPC対象病院になることで、地域における自院の位置づけを急性期病院として捉えています。

・ 今後、急性期病院として生き残るための条件
・ 出来高よりも収入が安定する(定額制で一定の収入が保障される)ジェネリックの導入拡大や検査の適正化で、コスト削減が図れる入院・外来シフトの効率化が図れる医療連携推進の中核病院として、後方連携の推進で病院の方向性を明確にできるベンチマーキングの徹底で、職員一人当たりの生産性など、病院目標の明確化と医師や職員の意識改革が図れるなどです。 このような捉え方がある中で現在までにDPCの見直しに関する多くの項目が審議されています。ここではその中の代表的な項目を下記に示します。

◎ 次期改定での導入が妥当と考えられる項目

 1.DPC病院として正確なデータを提出していることの評価
(正確なデータ提出のためのコスト、部位不明・詳細不明コードの発生頻度、様式1の非必須項目の入力割合 等)
  ⅰ 部位不明・詳細不明コード/全DPC対象患者
  ⅱ 様式1の非必須項目の入力患者数/非必須項目の対象となる患者数
  ⅲ DPC調査において、データ提出の遅滞があった回数

 2.効率化に対する評価
   (効率性指数、アウトカム評価と合わせた評価等)
  ⅰ 全DPC対象病院の平均在院日数/当該医療機関の患者構成が、全DPC対象病院と同じと仮定した場合の平均在院日数(再入院調査の結果と合わせて評価)

 3.複雑性指数による評価
  ⅰ 当該医療機関の各診断群分類毎の在院日数が、全DPC対象病院と同じと仮定した場合の平均在院日数/全病院の平均在院日数

 4.診断群分類のカバー率による評価
  ⅰ 当該医療機関で(一定数以上の)出現した診断群分類の数/全診断群分類の数

◎ 診断群分類点数表の見直しについて(中医協案)

 中医協が審議を進め最終的にまとめたのが、次のような「見直し案(現行に対する対応案)」で、3種類の逓減制になっています。

1.概要
 現在、診断群分類点数表は、診断群分類毎に平均在院期間及び平均点数を用いて、入院初期に手厚くなるように包括評価しているものの、救急疾患等一部の診断群分類点数において、入院初期の医療資源投入量が包括評価点数を上回ってしまう等、実際の医療資源の投入量に合わなくなってきている状況も指摘されている。
 そのような乖離については、これまで調整係数により補正されていたが、調整係数が段階的に廃止されるため、今後の包括評価の在り方についての検討が必要となり、この度、DPC評価分科会において対応案がまとまった。

2.現在の1日当たりの点数設定と問題点
 現在は、診断群分類ごとの1入院期間での1日当たり医療資源の平均投入量及び平均在院日数、入院期間の25(5)パーセンタイル値を基に点数設定を行っているが、次の2つの問題点がある。
 1) 入院初期の医療資源の投入量が非常に大きい場合には、入院初期では、医療資源の投入量が診断群分類点数を大きく上回っていることがある。
 2) 逆に、入院期間を通じて1日当たり医療資源の平均投入量の変化が少ない場合には、入院期間Ⅰ日以降において、医療資源の投入量が診断群分類点数を上回っていることがある。

3.対応案
 診断群分類点数表を、実際の医療資源の投入量に合ったものとするため、それぞれ、入院初期と1入院期間での、1日当たりの医療資源の平均投入量に応じ、以下の通り設定する案。
 ア 入院初期の1日当たりの医療資源の平均投入量が、1入院期間での1日当たりの医療資源の平均投入量と比して、非常に大きい場合(図1)
  ・入院期間Ⅰ日までの点数
    入院期間Ⅰ日までの1日当たりの医療資源の平均投入量
  ・入院期間Ⅰ日からⅡ日までの点数
    入院期間Ⅰ日までの点数及び1入院期間での1日当たりの医療資源の平均投入量を基に、面積がA=Bとなるように設定
  ・入院期間Ⅱ日から特定入院期間までの点数
    入院期間Ⅰ日からⅡ日までの点数から15%減じた点数

図1
医療業界の基礎知識38 図1

 イ 入院初期の1日当たりの医療資源の投入量が、1入院期間での1日当たりの医療資源の平均投入量と比して、大きな違いがない場合(図2)
  ・入院期間Ⅰ日までの点数
    点数の段差の設定を15%から10%に変更
  ・入院期間Ⅰ日からⅡ日までの点数
    入院期間Ⅰ日までの点数及び1入院期間での1日当たりの医療資源の平均投入量を基に、面積がA=Bとなるように設定
  ・入院期間Ⅱ日から特定入院期間までの点数
    点数の段差の設定を15%から10%に変更

図2
医療業界の基礎知識38 図2

 ウ 他の場合は、現行の「(1)通常の設定方法」により点数表を設定する(図3)

図3
医療業界の基礎知識38 図3

まとめ

 今回はDPCの見直し案に関し、次期改定で導入が予定されている評価項目と入院期間の見直しに伴う機能評価についてまとめてみました。
 次回は拡大するDPC対象病院が持つ機能の特長や動向等について分析し、地域の中核的なDPC病院としてのあり方をまとめてみます。

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達資料
2)ユート・ブレーン㈱ 社内資料
3)ユート・ブレーン㈱ ワールドネット掲載資料

2010年度診療報酬改定に向けて その1―DPC制度の動向―

医療業界の基礎知識(37)

「医療業界の基礎知識」37回目は、2010年度診療報酬改定に向けた主なポイントのうち、DPC制度の動向にフォーカスし、ご説明していきます。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

政権が自民党から民主党に変わり、各省庁から発表された2010年度予算の概算要求(シーリング)が見直される予定ですが、厚生労働省が8月27日に要望事項としてまとめ発表した概算要求額は次のとおりです。

・一般会計の要求額   26兆4133億円(09年度当初予算比 5.0%増)
・内、社会保障費予算  24兆8624億円(09年度当初予算費 1兆776億円増)

この社会保障費予算のうち、自然増が1兆800億円(医療3600億円、年金3200億円、介護1300億円、福祉等2700億円)を占め、09年度に比べ6500億円の大幅増となっています。こうした内容を受けて新しく就任した水田邦雄事務次官は、2009年度までの社会保障費2200億円抑制方針が撤廃されたことで、2010年度診療報酬については「後発医薬品の使用促進などを積極的に行えばプラス改定をする環境が整った」との認識を表明しました。
また、新任の外口崇保険局長は、社会保険審議会の医療保険部会と医療部会における診療報酬改定の基本方針について、「今後、多くの課題を踏まえながら基本方針についての議論を進めていきたい」と述べながら、2010年度の基本方針について次のようなポイントを示しています。

 1.診療報酬の改定
 2.高齢者医療制度の見直し
 3.国保の財政強化
 4.協会けんぽ財政状況の見極めと保険料率の見直し
 5.厳しい経済情勢から健保組合への財政援助
 6.高額療養費制度の見直し
 7.レセプトオンライン請求の推進
 8.薬価維持特例制度への議論の必要性
 9.後発医薬品の使用促進
10.特定健診・保健指導への支援
11.医療と介護の連携

あわせて厚生労働省は8月26日の社会保障審議会医療部会に、2010年度診療報酬改定の基本方針策定として、次のような項目を重視する方向を提案しています。

◎ 厚労省が示した「視点・方向」の例

1.患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高める医療の実現する視点
・医薬品の患者への情報提供などを通じた医療安全対策の推進
・高齢者の心身の特性を踏まえた医療の提供 等

2.質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携を推進する視点
・急性期医療の機能強化
・回復期リハビリテーションなどの機能強化
・質の高い精神科入院医療の評価
・在宅医療・在宅歯科医療の充実 等

3.我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域の評価のあり方について検討する視点
・手術などの医療技術の適正評価 等

4.医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域の評価のあり方について検討する視点
・後発医薬品の使用促進 等
 
こうした動きを踏まえながら、今回から4回に分けて診療報酬改定に向けた主なポイントについて、そのいくつかを解説します。その①と②では「DPC制度の動向」について、制度の基本とDPC対象病院の地域別現状等をまとめてみました。

◆ DPC制度とは

DPC制度は、以前から急性期入院医療の評価のあり方に関する検討を重ねてきた中央社会保険医療審議会(以下、中医協)において、2002年度診療報酬改定を答申する際、「患者の疾病に応じた医療機関別包括払いを原則とした方式に改める」という方針が示されました。その後、中医協で10回を超える議論を経て諮問・答申が行われ、2003年3月に閣議決定され、2003年4月1日から7月1日にかけて順次、特定機能病院等を対象にDPC(診断郡分類)を用いた医療機関別入院1日当たり包括評価がスタートしました。

◎ DPC(急性期入院医療の診断群分類別包括評価)とは

D(Diagnosis:診断群)、P(Procedure:手続き、順序、手順)の、C(Combination:組合せ)の略で、日本独自の新しい診断群分類のことで、これを患者ごとの一連の診療手順(P)を組合せ(C)、分類した制度です。

◎ DPC包括評価とは

組合せ分類の一つひとつに、1日当たりの包括点数を設定し、これをベースに算定するのが「急性期入院医療に係る診断群分類別包括評価」で、通常「DPC包括評価」と言われています。

◎ DPC包括評価の目的

DPCは単なる支払い方式の変革ではなく、匿名化されたカルテ情報、診療報酬点数表における出来高点数等の詳細かつ膨大な診療関連データの収集・分析によって得られた「適切なデータの提出」によって、病院ごとに「良質で効率的な医療を提供する」ことを目的としています。

◎ DPC包括評価の対象患者

包括評価の対象となる患者で、DPC対象病院(2009年7月現在・1,283病院が対象)の一般病棟に入院中の患者のうち、包括点数が設定されている1,572の診断群分類に該当する患者です。ただし、この分類であっても包括対象外となる例があります(事例は略)

◎ DPC包括評価の基本的な仕組み

DPCにおける診療報酬額の算定式は
・包括報酬部分の算定式
「診断群分類ごとの1日当たり点数」×「医療機関別係数」×「入院日数」×10点
・DPC総額報酬(基本)の算定式
「包括報酬部分の評価」+「出来高部分の評価」+「入院時食事療養費」

◎ DPCが医療制度に与える影響

・DPCによる「評価基準」で医療機関の機能・実績が評価され、その結果が情報公開される(透明化)
・DPCによる「全国共通の評価基準」で、施設間比較(ベンチマーク)が容易になる(標準化)
・国、支払側、医療提供側、患者などの利害関係者が、医療制度に関する情報を「相互」に入手できる(共有化)
・このように医療の「透明化」「標準化」「情報の共有化」が進展することによって、結果的には、伸びが著しい医療費の抑制につながってくる
・従って、急性期医療の提供を目指す病院にとってDPCは回避できない制度になっている
※「診断群分類における主要診断群(MDC・18分類)」「DPC診断群分類番号の構成」

「医療機関別調整係数」「包括評価の対象外患者」「包括評価される診療行為」「包括評価されない出来高算定診療行為等」「出来高算定となる検査・画像診断・病理診断」「包括されない1000点以上の処置料」「特定入院料の取り扱い基準」等については紙面の都合上、記載を略しています。

◆ DPC評価の見直し【2010年度診療報酬改定に向けて】

2008年4月の診療報酬改定実施以降、中医協・基本問題小委員会DPC評価分科会で「DPC導入による医療の質等について継続的に注視することが必要である」との指摘がなされ、特別調査やヒアリングが数度にわたって行われてきました。
その結果、2008年5月には、診断群分類の妥当性及び診療内容の変化等を評価するための基礎資料を収集することを目的に行った調査の結果として、2007年度「DPC導入の影響評価に関する調査結果及び評価」の最終報告が成されました(報告内容・略)。また、7月には「DPCのあり方について」と題する総合的な報告資料が公表されています。
その後、中医協での討議結果として多くの報告書が公表されましたが、2009年3月以降、2010年度の診療報酬改定に向けた審議が行われ、7月16日には「DPCのあり方について」、24日には「診断群分類点数表の見直しについて(案)」が報告されました。

ここでは報告書に盛り込まれた内容のなかから、診療報酬改定に向けたポイントの要約をまとめてみました。

◎ 2010年改定に向けて‥DPCの見直し《案》

1.医療の透明化・効率化・標準化・質の向上等の評価について
 (1)透明化の評価
   ア.部位不明・詳細不明コードの発生頻度による評価
 (2)効率化の評価
   ア.効率性指数による評価
   イ.後発医薬品の使用状況による評価
 (3)標準化の評価
   ア.手術症例数又は手術症例割合に応じた評価
   イ.診療ガイドラインに沿った診療の割合による評価
   ウ.標準レジメンによるがん化学療法の割合による評価
 (4)医療の質の評価
   ア.術後合併症の発生頻度による評価
   イ.重症度・看護必要度による改善率
   ウ.医療安全と合併症予防の評価
   エ.退院支援及び再入院の予防の評価

2.社会的に求められている機能・役割の評価について
 (1)特殊な疾病等に係る医療の評価
   ア.複雑性指数による評価
   イ.副傷病による評価
   ウ.診断群分類のカバー率による評価
   エ.希少性指数による評価
    ・難病や特殊な疾患等への対応状況の評価
 (2)高度な機能による評価
   ア.高度な設備による評価
   イ.特定機能病院又は大学病院の評価
   ウ.がん、治験、災害等の拠点病院の評価
   エ.高度医療指数

3.地域医療への貢献の評価について
 (1)地域での役割の評価
   ア.医療計画で定める事業について、地域での実施状況による評価
   イ.救急・小児救急医療の実施状況による評価
   ウ.救急医療における患者の選択機能の評価  
   エ.産科医療の実施状況の評価
   オ.地域医療支援病院の評価
   カ.地域中核病院の評価
   キ.小児科・産科・精神科の重症患者の受け入れ体制の評価
   ク.全診療科の医師が日・当直体制をとっていることの評価

4.その他
 (1)医療提供体制による評価
   ア.医師、看護師、薬剤師等の人員配置による評価
 (2)望ましい5基準に係る評価
   ア.ICU入院患者の重症度による評価
   イ.全身麻酔を実施した患者の割合による評価
   ウ.病理医の数による評価
   エ.術中迅速病理組織標本作製の算定割合による評価

◎DPC対象病院への参加及び退出のルール

【DPC準備病院の基準】
・7対1入院基本料又は10対1入院基本料に係る届出を行っており、急性期入院医療を提供する病院である。7対1入院基本料又は10対1入院基本料に係る届出を行っていない病院については、満たすべく計画を策定していなければならない。
・診療録管理体制加算を算定している、又は、同等の診療録管理体制を有すること。診療録管理体制加算を算定していない病院については、算定すべく計画を策定していなければならない。
・DPCの調査に、標準レセプト電算処理マスターに対応した正確なデータを適切に提出している。
・適切なコーディングに関する委員会を設置しており、年2回以上、当該委員会を開催している。

1)退出の要件
・原則として、DPC対象病院の基準のいずれかを満たせなくなった場合

2)退出の手続き等
・DPC対象病院の基準のいずれかを満たせなくなった場合は、速やかに 厚生労働省に報告し、退出する。なお、1、2、3の基準を満たせない場合は3か月の猶予期間を設け、3か月を超えてもなお基準を満たせない場合には退出する。猶予期間については、マイナスの機能評価係数を算定する。
・DPC対象病院の基準を満たしていても、診療報酬改定の5か月前までにその理由等を添えて厚生労働省に届出を行えば、当該診療報酬改定の前年度末に退出することができる。
届け出られた理由等については、厚生労働省より中医協に報告する。

【退出の特例】
・特別の理由があり、当該診療報酬改定の前年度末以外に、緊急にDPC対象病院から退出する必要がある場合は、退出の認否について、中医協において判断する。
※特別の理由の例
・医師の予期せぬ退職等により、急性期入院医療を提供することが困難となった場合
・当該病院の地域での役割が変化し、慢性期医療を提供する病院となった場合

3)退出する病院の周知、データ提供等
・退出する場合は、速やかに患者及び関係者に周知する。
・DPC対象病院から退出した病院が継続して急性期入院医療を提供する場合は、退出後2年間、引き続きDPCの調査データを提出する。

4)その他
・特定機能病院については、閣議決定により包括評価を実施することが定められており、DPC対象病院から退出することができないため、再度基準を満たすまでの間、マイナスの機能評価係数を算定する。

以上、現在の審議動向等をまとめましたが、次号(その2)ではDPC病院の具体的な事例を中心にまとめてみます。

※引用参考資料

※引用参考資料
1)厚生労働省各種通達資料
2)ユート・ブレーン㈱刊行:すぐわかる診療報酬2008
3)ユート・ブレーン㈱HP:ワールドネット掲載資料
4)ユート・ブレーン㈱調査資料(社内資料)

厳しさを増す公立病院の経営環境 その3(まとめ)

医療業界の基礎知識(36)

「医療業界の基礎知識」の第36回目は、第34回、第35回でご説明した公立病院を取り巻く経営環境について、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、自治体病院の持つ役割と機能的特長を中心にご説明しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2回にわたって自治体病院の厳しい経営環境を記しました。今回は「まとめ」として、公立病院改革ガイドラインに沿って策定されている「公立病院改革プラン」の現況と「持つべき役割や機能的特長等」を、自治体以外の病院と比較しながらまとめてみました。

公立病院改革プランの策定状況

総務省は先に「公立病院改革プラン策定状況等について」と題し、平成20年度末(2009年3月末)現在での各地方公共団体における調査結果を発表しました。その概要は下記のとおりです。

【概要】

Ⅰ. 公立病院改革プランの策定状況

◎プラン策定団体数(調査対象656団体)
 ・プラン策定済み     603団体(837病院) ⇒ 91.9%
 ・2009年度内策定予定   49団体 (96病院) ⇒  7.5%

Ⅱ. 公立病院改革プランの主な内容

◎プラン策定病院数 ⇒ 837病院
◎経営の効率化 ⇒ 544病院が2011年度までに経営収支の黒字化を目標
◎再編・ネットワーク化 ⇒ 159病院が関係団体間で基本的な枠組みまで同意
            ⇒ 435病院が2011年度までに結論取りまとめ予定
◎経営形態の見直し
 1 地方公営企業法の全部適用を新たに78病院が予定(実施済300病院)
 2 地方独立行政法人化を新たに34病院が予定(実施済11病院)
 3 指定管理者制度の導入を新たに10病院が予定(実施済54病院)
 4 民間譲渡を新たに12病院が予定
 ※上記を含め「2011年度までに結論を取りまとめる予定」が553病院に

Ⅲ. 公立病院等の再編・ネットワーク化推進に係る都道府県の取組状況

◎計画・構想等の策定状況(調査対象47団体)
 ・策定済          ⇒ 22団体
 ・2009年度内策定予定     ⇒ 16団体
 ・2010年度以降又は時期未定 ⇒  5団体
 ・検討中・未定       ⇒  4団体
 ※上記の、Ⅰ. Ⅱ. Ⅲに関する詳細は、総務省の公表資料を参照してください。

自治体病院が目指す役割と機能を考える

そのⅠでも記しましたが、自治体病院が担う役割・機能及び必要性は「民間医療機関では対応困難な医療分野を中心に医療圏の地域特性や医療機能に配慮して、公的医療機関としての役割を担う」ことを基本目的とし、次のような事項の遂行を求めています。

Ⅰ)民間医療機関では対応困難な医療の提供

・高度技術や専門的スタッフ及び高度医療機器が必要な医療
・高度医療、特殊医療、地域性や診療報酬体系上の不採算な分野の医療
 (例えば (1)過疎地 (2)救急等不採算部門 (3)高度・先進医療 (4)医師派遣拠点機能)

Ⅱ) 医療圏の地域特性や医療機能を踏まえた医療の提供

・地域内医療機関の整備状況を見て1次医療、2次医療レベルが必要な場合の地域医療の確保
・地域で質的・量的に不足している医療

Ⅲ)公的医療機関として担う必要がある医療の提供

・法令や歴史的経過から、行政が主体的に取り組む必要性がある医療、新たな課題に対する先導的に取り組む医療

Ⅳ)その他

・地域の医療レベル向上のための教育・研修機能
・予防・検診への対応等保健行政的医療の支援

などです。しかし現在の医療提供体制をみると地域によってその提供内容に大きなバラツキがみられます。例えば厚労省が7月8日の中医協で提示した「入院時医学管理加算」の届出病院を地域別届出数などからみると、自治体病院の届出数において地域ごとに大きな違いがあることが分かります。

地域中核病院にみる自治体病院の役割

自治体病院の役割は、地域における中核病院として「高度技術や専門的スタッフ及び高度医療機器が必要な医療や高度医療、特殊医療、地域性や診療報酬体系上の不採算な分野の医療」を担う役割があると記しました。地域中核病院の持つべき代表的な機能や役割の中に、「地域完結型医療の提供を目指す」ための「地域医療連携の中心的な役割を果たす」ことがあります。
この「地域医療連携の中心的な役割」を果たすためにはいくつかの代表的な機能を整備(届出)する必要があります。いわゆる「持つべき機能」ですが、筆者なりに数多くの届出事項の中から急性期中核病院の持つべき機能の代表的な項目として、次の5つを取り上げてみました。

1)DPC対象病院  2)地域医療支援病院  3)救命・救急センター
4)がん診療連携拠点病院  5)入院時医学管理加算届出病院

急性期機能を代表する項目にはこれ等以外にもまだありますが、資料の整理・作成の都合上、上記のようにしています。また、「入院時医学管理加算届出病院」を入れているのは、一般病院において一番レベルの高い「7対1」の入院看護基準を満たし、質の高い医療提供を評価しているためです。
 こうした考えを基に全国の一般病院をブロック別に調査した結果が別表(Ⅰ)です。病院数で突出しているのは、南関東、近畿、九州で、それぞれが200病院を超えており、その中心がDPC対象機能であることが分かります。しかし半面では近畿のように5つの機能の内、DPC対象病院単独が多く、地域の中核的な役割をはたしているか疑問符を付けざる得ない病院も見受けられます。
参考までに、DPC対象病院1283病院の内の831病院(64.8%)が「DPC対象取得のみ」の病院でした。

別表(1)
5つの機能取得一覧

次に、特定機能病院を除く対象5項目の内、3項目以上の機能を取得している病院と、入院時医学管理加算の他に1項目を別途取得している病院を合計すると253病院ありました。この総数は対一般病院7694病院の3.3%を占めています。これ等を開設者別にまとめたのが次の別表(2)です。

別表(2)
開設者別・基幹病院数

自治体病院は三極分化に

では自治体病院はどのような位置にあるのでしょうか。表(2)にみられるように、都道府県立病院288病院に対し30病院が、市町村関係725病院に対し65病院が占めています。これ等を地域別に集計したのが別表(3)の都道府県別・自治体病院中核病院数です。これをより細かく分析してみると地域による差がハッキリ分かります。あわせて地域医療を担う上で自治体病院や日赤、済生会、共済会、厚生連などの他の公立病院などに頼る都道府県(ブロック)と、機能の高い民間病院(私立大学の分院を含む)を加えて医療提供体制を整備するブロックなど、違いが見られます。

別表(3)
都道府県別・自治体病院中核病院数

まとめ

以上、3回に分けて自治体病院の姿をまとめてみました。前号のその2でも記しましたが自治体病院の経営環境は大変厳しい状況にあります。併せて地域住民の自治体病院を見る目はますます厳しくなります。自治体病院の経営環境(収支)が悪化する主な要因についてもその2で述べたとおりですが、これから改革に向けて種々の手が打たれてきます。地域医療を担う自治体病院が今後どの方向(役割等)を目指すのか、経営状況を含め種々の角度から見極めることが大切です。
そうした意味で、病院の経営状況を簡単に把握するのに役立つのが「K点分析法」です。一度、担当病院のK点分析を行ってみるのもよいのではないでしょうか。
以下に簡単な「K点分析法」のポイントを記しましたので参考にしてください。

経営状態を把握するための《K点分析》

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達資料
2)総務省公表資料(HP
3)ユート・ブレーン㈱刊行:通信教育講座「医療制度編2008年-2009年度版」
4)ユート・ブレーン㈱HP:ワールドネット掲載資料
5)ユート・ブレーン㈱調査資料(社内資料)

厳しさを増す公立病院の経営環境 その2

医療業界の基礎知識(35)

「医療業界の基礎知識」の第35回目は、前回に引き続き、実際に進められている公立病院改革について、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、「公立病院改革ガイドライン」を中心にポイントをご説明しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

公立病院(自治体病院)の経営環境が急速に悪化しています。全国公私病院連盟と日本病院協会が実施した「2008年病院運営実態調査の概要」によれば、2006年、2008年の診療報酬改定による平均在院日数の短縮に伴う病床利用率の低下に歯止めがかからないため、70%強の病院が赤字になっています。また2008年6月診療分を対象に調査した「100床当たり総損益差額、医業損益差額別の年次推移」によれば、100床当たり医業損益額のマイナス幅が拡大している状況がわかります。(図1参照)

図1
100床当たり総損益差額、医業損益差額別の年次推移

なかでも地域医療を担う公立病院には、固定費の重荷に耐え得るだけの患者数、つまり病床利用率80%台をキープするだけの新患患者を確保できないため、人件費や設備投資への償却等にかかわる費用増を吸収できず、その存続が危ぶまれる地域も出てきています。
今回は、その1で記した「公立病院改革ガイドライン」の施行を受けて医療現場がどのような影響を受け、また変化しているのか、等をまとめてみました。

公立病院の現状

2009年2月現在、全国に存在する公立(自治体)病院は1,019病院で全病院数(8,781病院)の11.6%を占めています。またその病床数は243,822床で全病床数1,609,052床の15.15%と、大変大きな比重を占めています。(表1参照)

表1
自治体病院数(医療施設動態調査から)

また、都道府県別に見た公立病院数では北海道が最も多く106病院、続いて兵庫県42病院、岩手県と宮城県が39病院、愛知県34病院、青森県33病院、千葉県32病院、新潟県28病院、長野県と大阪府が27病院、静岡県26病院、山形県と長崎県の25病院が上位を占めています。ちなみに最も少ないのは栃木県の6病院で、続いて大分県7病院、福井県と鳥取県が8病院、奈良県と沖縄県が9病院となっています。

反面、公立病院は日赤や済生会病院などの公的病院に比べ病床利用率が低く、2004年度から2006年度の3年間連続で見た病床利用率の現況を調べてみると、再編病院の対象とされる3年連続で70%未満の病院は、

◎ 調査病院924病院中

・ 一般病床利用率が70%以下の病院  208病院 (22.5%)
・ 一般病床利用率が50%医赤の病院   58病院 ( 6.3%)

と、なっています。ちなみに神奈川県、鳥取県、大分県、鹿児島県の4県には3年連続での病床利用率70%以下の病院はありませんでした。

公立(自治体)病院の経営状況

2006年度の地方自治体病院の累積赤字は1兆8736億円で、地方自治体が以前からいってきた「自治体病院の存続が危ぶまれる事態」になっています。また、2008年度以降の世界的な経済危機の中、今迄考えてもみなかった過大な税収の落ち込みから財政難に陥る自治体が増加しています。特に都道府県予算においては財政的地域格差が進み、必然的に市町村への財政援助が厳しさを増し、財政難で病院の赤字補填が難しい自治体が全国的に増加し35道府県にも上っています。その結果、過去、為政者の多くが行ってきた「住民の健康管理を優先する政策」である「自治体病院の存続」から、優先順位を「地方自治体の存続」へと舵をきる市町村が増えてきており、「自治体病院の存続」が危ぶまれる事態になっています。
では、自治体病院の経営はどうして厳しいのでしょうか。いくつかの原因がありますが、代表的なものを取り上げてみます。
医療機関の収入の基本は、日当点(患者一人一日当たりの診療報酬点数)×患者数で得られます。したがって病院経営に必要な収入が得られる基本体制がなされ、収入以下の運営(経営)費用で収支できれば健全な経営ができます。反面、収支のどちらかにマイナス要因となる偏りがあれば経営は厳しくなります。

◎ 公立病院の現状

・病院の75%弱が経常損失を計上
・公立病院全体の平均損益分岐点は120%台(民間は97%台)
・病床利用率70%未満の病院が拡大

◎ 収支悪化になる主な要因

・医師、看護師等のスタッフ不足が日当点の減算に
・地域の民間病院との競争に勝てない組織
・歯止めがかからない患者減少傾向
・職員の高齢化と人件費の硬直(事務職員等、間接部門の職員が多い)
・旧態依然たる総合病院的思考でケアミックスの病院が多い(診療科は多いが医師不足で患者に対応できず)
・投資に見合う設備の活用がされていないケースが多い
・地域内における救急医療の提供が重視されるため「救急告示」ありの病院でも、初期救急、2次救急が主体で、投資コストに見合った診療報酬が得られていない
・補助金頼りの経営に安住し、多くの病院で赤字が当たり前とする考えが蔓延してきた

以上のように公立病院は民間(私的)病院と比較しても大きな違いがあります。ちなみに公表されている「自治体病院と私的病院の経営状況比較」を表2として載せました。この表を見ても分かるとおり、給与費を中心とした医業費用が多く収支のバランスが悪い状況が一目瞭然です。

表2
自治体病院と私的病院との経営状況比較

参考までに、「大阪府自治体病院:病床利用率」と「大阪府自治体病院・2007年度決算状況」を表3及び表4として掲載しました。

表3
大阪府自治体病院:病床利用率

表4
大阪府下自治体病院「2007年度決算状況」

まとめ

今回は公立(自治体)病院の最近の動向にあわせ大阪府の現状を数字で示しながら全体的な姿をまとめてみました。次回は、先に(2009年3月31日)総務省から発表された「公立病院改革プラン策定状況等について」一部を引用しながら今後の方向性等をまとめてみます。

なお、「公立病院改革プラン策定状況等について」については、発表資料が多岐にわたっています。既にご覧になり活用されている方も多いことと思いますが、まだの方は是非、総務省(MIC)のHPをご覧になり、今後の行動に活用してください。

※引用参考資料

 1)厚生労働省各種通達資料
 2)総務省公表資料(HPから)
 3)社会保険旬報 №2359、2008.8.1号。厚労省大臣官房審議官・榮畑 潤氏講演資料
 4)Japan Medicine 2009.4.3号「待ったなしの公立病院改革(大阪府)」
 5)ユート・ブレーン㈱刊行:通信教育講座「医療制度編2008年-2009年度版」
 6)ユート・ブレーン㈱HP:ワールドネット掲載資料
 7)ユート・ブレーン㈱調査資料(社内資料)

厳しさを増す公立病院の経営環境 その1

医療業界の基礎知識(34)

「医療業界の基礎知識」の第34回目は、いま、実際に進められている公立病院改革について、ファーマネットワーク シニアコンサルタントの佐藤章が、「公立病院改革ガイドライン」を中心にポイントをご説明しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2007年6月に成立した「地方公共団体の財政健全化に関する法律(地方公共団体財政健全化法)」の施行に伴い、財政赤字に悩む地方自治体にとって財政負担となっている公立病院(自治体病院)の経営改善が急務になっています。こうした中で総務省は2007年12月に「公立病院改革ガイドライン」を公示し、経営改善の一環として「経営形態の見直し」を選択肢の中心とする指針を打ち出しました。
今回は、今号と次号の2回に分けて「公立病院改革ガイドラインのポイント」及び「経営形態の現状」と「今後の動向」についてまとめてみます。

公立病院ガイドラインの基本

公立病院改革を審議してきた経済財政諮問会議は2007年6月の法案成立に伴い、図1のように「3つの視点に立って公立病院改革を推進する」とした「経済財政改革の基本方針」を公表しました。

【図1】
公立病院ガイドラインの基本

公立病院が担う役割・機能と改革のポイント

あわせて公立病院改革では、公立病院が担う役割と機能について「公立病院は、民間医療機関では対応困難な医療分野を中心に医療圏の地域特性や医療機能に配慮して、公的医療機関としての役割を担う」ことを基本目的として示し、次のような事項の遂行を求めています。

Ⅰ)民間医療機関では対応困難な医療の提供

・高度技術や専門的スタッフ及び高度医療機器が必要な医療
・高度医療、特殊医療、地域性や診療報酬体系上の不採算な分野の医療

Ⅱ) 医療圏の地域特性や医療機能を踏まえた医療の提供

・地域内医療機関の整備状況を見て1次医療、2次医療レベルが必要な場合の地域医療の確保(市町村立は1次、都道府県立は2次中心)
・地域で質的・量的に不足している医療

Ⅲ)公的医療機関として担う必要がある医療の提供

・法令や歴史的経過から、行政が主体的に取り組む必要性がある医療、新たな課題に対する先導的に取り組む医療

Ⅳ)その他

・地域の医療レベル向上のための教育・研修機能
・予防・検診への対応等保健行政的医療の支援

公立病院ガイドラインのポイント

これらを踏まえ国が示した「公立病院改革ガイドライン」では、地方自治体に対し次のような実行項目を示しています。

第1 公立病院改革の必要性

○公立病院の役割は、地域に必要な医療のうち、採算性等の面から民間医療機関による提供が困難な医療を提供すること(例えば ①過疎地 ②救急等不採算部門 ③高度・先進 ④医師派遣拠点機能)
○地域において真に必要な公立病院の持続可能な経営を目指し、経営を効率化すること

第2 公立病院改革プランの策定

○地方公共団体は、平成20年度内に公立病院改革プランを策定
 (経営効率化は3年、再編・ネットワーク化、経営形態見直しは5年程度を標準)
○当該病院の果たすべき役割及び一般会計負担の考え方を明記

○経営の効率化
 ・経営指標に係る数値目標を設定
  1)財務の改善関係(経常収支比率、職員給与費比率、病床利用率など)
  2)公立病院として提供すべき医療機能の確保関係等
 ・一般会計からの所定の繰出後、「経常黒字」が達成される水準を目途
  (地域に民間病院が立地している場合、「民間病院並の効率性」達成を目途)
 ・病床利用率が過去3年連続して70%未満の病院は病床数等を抜本的見直し

○再編・ネットワーク化
 ・都道府県は、医療計画の改定と整合を確保しつつ、主体的に参画
 ・二次医療圏等の単位での経営主体の統合を推進
 ・医師派遣拠点機能整備推進。病院間の機能重複を避け、統合・再編含め検討
 ・モデルパターンを提示

○経営形態の見直し
 ・人事・予算等に係る実質的権限、結果への評価・責任を経営責任者に一体化
 ・選択肢として、
 地方公営企業法全部適用、地方独立行政法人化、指定管理者制度、民間譲渡を提示(図2、表1を参照)
 ・診療所化や老健施設、高齢者住宅事業等への転換なども含め、幅広く見直し

【図2】
見直しが進む公立(自治体)病院の経営形態

【表1】
公立(自治体)病院の経営形態見直しの方向性

第3 公立病院改革プランの実施状況の点検・評価・公表

○プランの実施状況を概ね年1回以上点検・評価・公表
○学識経験者等の参加する委員会等に諮問し、評価の客観性を確保
○遅くとも2年後の時点で、数値目標の達成が困難と認めるときは、プランを全面改定
○総務省はプランの策定・実施状況を概ね年1回以上調査し、公表

第4 財政支援措置

○財政支援措置については、総務省において別途検討し、年末までに決定
 (計画策定費、再編による医療機能整備費、再編等に伴う清算経費など)

以上のようなガイドラインを基に都道府県ごとに改革案が出され実行に移されています。

まとめ

 今回は今、実際に進められている「公立病院改革」についてガイドラインを中心に記しました。これはあくまでも次号で記す「改革の現状や今後の動向」を、より理解していただくための基本的な項目をまとめたものです。
 次号では特定地区の公立病院の実情を数字で示しながら全体的な改革動向をまとめてみます。

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達資料
2)総務省公表資料(HPから)
3)ユート・ブレーン㈱刊行:通信教育講座「医療制度編2008年-2009年度版」

「政管健保」から新しい「協会けんぽ」の保険体制へ そのⅡ

医療業界の基礎知識(33)

「医療業界の基礎知識」33回目は、医療保険制度を理解するための基本知識として、2009年10月からの「協会けんぽ」の都道府県別保険料率についてご説明いたします。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

前回、医療保険の種類とその要点を簡単に記しました。その中で全国一律の組織であった政府管掌健康保険(政管健保)が、新しく発足した全国健康保険協会が運営する「協会けんぽ」の下で、各都道府県の支部ごとに保険運営の企画や保健事業などを行うことになったことを述べました。
新しく創設された「協会けんぽ」は従来の「政管健保」と異なり、保険料も年齢構成や所得水準の違いなどの地域特性を反映した上で、支部ごと(つまり都道府県ごと)に料率を設定する仕組みです(ただし、被保険者の資格取得等の確認、標準報酬月額の設定、保険料の徴収等は引き続き国が行う)。

「政管健保」改革の視点 ⇒「政管健保」から「協会けんぽ」へ 

「政管健保」改革のポイントは、将来にわたって増え続ける国民医療費を今後とも安定的に提供するためにシステムとしてどうあるべきかを検討し、地域によってバラツキのある医療費を適正化するための取組みと将来動向を明示することにあります。厚労省は「医療費適正化のための地域における取組みと保険者の再編・統合」として下記(図Ⅰ)のように示していますが、その中でポイントとなっているのが「政管健保」の見直しでした。国庫負担の大きい政管健保を社会保険庁による全国一律の管理から、国とは切り離した全国単位の公法人(全国健康保険協会)を保険者として設立し、都道府県単位で管理・運営することを目的としています。
「協会けんぽ」の設立にあたって厚労省は、改革の視点・3つのポイントとして図Ⅱのように明示しています。

すなわち
・ 都道府県単位の財政運営
・ 財政運営の安定化
・ 自主・自立の保険運営

です。したがって今後は健康管理や保険運営にゆとりのある都道府県と医療費が高く厳しい財政運営をせざるを得ない都道府県によって保険料率に違いが出てきます。

図 Ⅰ
図Ⅰ:医療費適正化のための地域における取組と保険者の再編・統合

図 Ⅱ
図Ⅱ:政府管掌健康保険の公法人化(協会けんぽの設立)

2009年10月からの初年度・都道府県別料率が決まる

◎ 都道府県単位保険料率設定のプロセス

「協会けんぽ」の保険料率が2009年10月から「政管健保」の全国統一基準8.2%(82.0‰)から都道府県単位の基準に改められます。その設定プロセスをみると、都道府県別料率は年齢構成が高いほど、また所得水準が低いほど保険料率が高くなる不可思議な料率設定方式(図Ⅲ)が採用されています。この設定方式によって都道府県別の料率を算定すると、最も高い北海道では現在の82.0‰から87.5‰となり、最も低い長野県では76.8‰と10.7‰もの地域格差がでることになります。
地域ごとの医療費抑制を促し財政運営の安定化を図るとはいえ、この保険料率をそのまま受け入れる被保険者(標準報酬月額への掛け率を労使折半する)は堪りません。そのため協会発足からの5年間は激変緩和措置を設けることが決められ、厚労省は当初案として次の4案を示しました。

◎09年度における都道府県支部別の保険料率・激変緩和措置(案)

1.全国平均を上回る都道府県は引き上げ幅を0.1%(1.0‰)、下回る都道府県は下げ幅を0.07%(0.7‰)を限度とする
2.全国平均からの乖離幅の5分の1に設定する
3.全国平均を上回る都道府県は上げ幅0.1%の上限、下回る都道府県は全国平均からの乖離幅に応じて調整する
4.全国平均を上回る都道府県は上げ幅0.1%に残りの部分5分の1を上乗せ、下回る都道府県は全国平均からの乖離幅に応じて調整する

この4案をたたき台として政府の最終案として検討してきた結果、負担が増える地域への配慮を求める議員からの影響もあり、最終的に次項でご説明する表Ⅰのように決まりました。

図 Ⅲ
図Ⅲ:都道府県単位保険料率の設定のイメージ

都道府県別料率の変化幅を10分の1に―それでも大きな都道府県格差が―

厚労省が2007年度(平成19年度)の医療費データをベースに試みた試算によると、全国平均は8.35%(83.5‰)ですが、最も高い北海道(8.75%)と最も低い長野県(7.68%)では1.07ポイントの格差が生じます。この格差を緩和する料率が今回の決定内容ですが、2009年度(2009年10月~2010年3月)は積立金を取り崩して、料率格差を0.11%まで圧縮されることになっています。この緩和措置は初年度適用分のみで、2010年度以降は毎年議論し、緩和措置が終わる2013年9月までに段階的に料率を変えることになっています。

表Ⅰ
激変緩和措置に基づく「協会けんぽ」の都道府県単位保険料率(初年度分)

まとめ

前回と今回の2回に分けて新しい「協会けんぽ」の発足について記しました。今までは全国一律の政管健保による保険料率であったものが都道府県単位に変わります。
100年に一度と言われる厳しい経済環境の中で、中小企業の経営は益々厳しくなります。こうした環境の中で中小企業のサラリーマンは勿論のこと、料率の半分を負担する企業経営者にとっては大変厳しい経営を余儀なくされます。この負担が人員整理等に行き着くことのないよう、また巷間伝わる無保険者(保険証を持てない人)が出ないよう、注意深く見守る必要があります。

医療保険制度を理解するための基本知識 そのⅠ

医療業界の基礎知識(32)

「医療業界の基礎知識」32回目は、医療保険制度を理解するための基本知識として、全国同率の政府管掌健康保険(政管健保)から都道府県別保険料率の全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険への見直しについてご説明いたします。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

わが国の医療保険制度の特徴は1961年以来、すべての国民がいずれかの医療保険に加入(強制加入)する「国民皆保険」と、どの医療機関でも受診できる「フリーアクセス」にあります。これによって、国民は「誰でも、いつでも、どこででも所得に見合った費用で、良質な医療を受けることができる」ようになっています。この国民皆保険によって、わが国は世界一の長寿国になりました。
しかし、急速な人口の高齢化、医療の高度化などにより医療費の増大に歯止めがかからなくなってきているうえに、経済基調の変化に伴って、医療費の伸びと経済成長との不均衡が拡大し、このままでは国民皆保険そのものが崩壊の道をたどることにもなりかねないのが現状です。

こうした中で、国民の【1】健康に対する関心の高まり、【2】医療に対するニーズの多様化・高度化、【3】より広範囲で良質なサービスへの欲求の3つに応えることが急務とされ、そのための医療制度の抜本的な構造改革が検討・実施に移されています。

1)医療給付と負担の動向

日本の医療費は、高齢化の進展等に伴い、毎年度3~4%程度(1兆円程度)増加しており、その結果、保険料・税負担といった国民負担も増大してきています。こうした中で、将来にわたり医療保険制度を持続可能なものとするためには、早急に改革に取り組む必要があります。今後、税負担の比重が高まることが見込まれる中で、医療保険制度における保険料・税負担の上昇をできる限り抑制するための見直しについて検討されています。

2)医療給付と負担に関する改革の方向性(基本方針)

現在行われている「基本方針2008」においては、「『医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム(2007年5月)』に沿って、供給コストを最大限低減する努力を行う」とされており、次のような改革の方針が示されています。

・ 国民負担の軽減の観点から、医療サービス提供コストの縮減・合理化を進めること 
・ 保険料及び税で支える公的医療給付については、サービス産業としての総医療費と峻別し、介護給付等との役割分担も踏まえながら、真に必要なものに給付の範囲の重点化を図ること
・ 世代間、世代内の公平を図る観点から、医療費について年齢を問わず負担能力に応じて負担する仕組みとすること

医療保険制度の種類

医療保険制度は、国民が病気やけがをしたとき、その医療にかかわる費用を保障する制度で、以下のものがあります。

(1)「政府管掌健康保険」

(2008年10月からは制度改革の実施によって公法人化され、全国健康保険協会に名称が変わりました)
政府(社会保険庁)が保険者となって直接運営している健康保険を、政府管掌健康保険(政管健保)といいます。常時5人以上の従業員を雇用している事業所(主として中小企業)を対象に、その勤務者を被保険者としています。対象となる事業所は強制的な加入義務を負っています。しかし、5人未満の企業でも国に申請して任意加入することができます。
このほかに、健康保険の中には日雇労働者の保険があり、これも政府が管掌しています。これを日雇特例被保険者(健康保険法第3条第2項の被保険者)といいます。なお、この政管健保は2008年9月末に廃止され、10月からは政府の運営から独立し、新たに設立された公法人「全国健康保険協会」を保険者とした「協会けんぽ」となりました。

(2)「協会けんぽ」

2008年10月から実施された新たな健康保険で、これまでの政管健保の役割を引き継いでいます。保険者は、新たに設立された公法人「全国健康保険協会」が担います。
これまでの政管健保は、保険料や事業運営も全国一律の組織でしたが、全国健康保険協会は各都道府県に支部を持ち、その支部ごとに保険運営の企画や保健事業などを行うことになっています。また、保険料も年齢構成や所得水準の違いなどの地域特性を反映した上で、支部ごと(つまり都道府県ごと)に料率を設定する仕組みです(ただし、被保険者の資格取得等の確認、標準報酬月額の設定、保険料の徴収等は引き続き国が行う)。
このような見直しが行われた背景には、逼迫する医療保険財政を踏まえ、業務の効率化、さらに地域の医療水準に見合った保険料の設定やサービスの向上などを進め、健康保険事業を活性化させるねらいがあります。なお、医療機関受診時の自己負担割合や限度額などの基本的な給付内容や要件等は、これまでの政管健保と変わりません。

(3)組合管掌健康保険

健康保険には、政府管掌健康保険のほかに組合管掌健康保険という制度があり、健康保険組合が保険者となっています。
健康保険組合には、常時700人以上の従業員がいる大企業によって設立されるもの(単一組合)と、同じ業種の企業または業種が異なっても一定地域の企業が集まって3000人以上の従業員がいる場合に設立されるもの(総合組合)とがあります。いずれも厚生労働大臣の認可を得て設立できるもので、政府に代わって独自の立場で健康保険の事業を運営することができます。
また、2006年10月からは、財政状況が厳しかったり、小規模なために安定した運営が困難な健康保険組合などの再編・統合を進める観点から、同一都道府県の中で企業や業種が異なっていても組合が設立できるようになりました。これを「地域型健康保険組合」と言います。

(4)共済組合等

国家公務員、地方公務員、私立学校の教職員とその家族を対象とする被用者保険で、「国家公務員共済組合」、「地方公務員等共済組合」、「私立学校教職員共済」の3種類があります。

(5)国民健康保険

被用者保険(政府管掌健康保険、組合管掌健康保険、共済組合等)の対象者以外の一般国民を対象として、被保険者の疾病、負傷、出産または死亡に関して必要な保険給付を行う保険の一種です。
国民健康保険(以下、国保)には、市町村など地方自治体により管理・運営される、農業や自営業などの人たちを対象にした地域保険(市町村国保)と、医師、薬剤師、理容師など同じ業種の人たちを対象にした国民健康保険組合(国保組合)とがあります。
国保組合は、市町村が行う国保事業に支障を及ぼさないと認められるときのみ設立が認められ、同種の事業または業務に従事する300人以上の人で組織されることになっています。国保組合を設立しているおもな業種を列挙すると、医師、歯科医師、薬剤師、助産師、食品販売業、土木建築業、理美容業、浴場業、弁護士などとなっています。

(6)退職者医療制度

会社を退職したサラリーマンのOBとその家族を対象とした保険制度で、原則として国民健康保険の中で実施されます。退職者医療の対象になるのは、市町村(特別区を含む)の国民健康保険の被保険者のうち、厚生年金保険、共済組合などの被用者年金の老齢(退職)給付を受けられる65歳未満の者です。一部負担金は国民健康保険等と同じく3割(義務教育就学前は2割)です。
なお、退職者医療制度は健康保険法等の改正により、2008年4月より原則廃止されています。ただし、2015年3月末までは経過措置として存続しており、同年4月に完全廃止となります。

(7)後期高齢者医療制度(長寿医療制度)

75歳以上の後期高齢者を対象にした医療制度として、従来の老人保健制度に代わって、2008年4月から実施されている制度です。
保険者は都道府県ごとにすべての市町村(特別区を含む)が加入して設立された「後期高齢者医療広域連合」ですが、保険料の徴収や医療給付の届出に関する事務などは市町村が行います。
被保険者は、[1]75歳以上の人、[2]65歳以上75歳未満で寝たきり等の状態にある人です。保険料は、政令で定められた基準に基づき都道府県単位で決定されますが、特別な理由がある者には、減免や猶予の措置が設けられています。一部負担金は原則1割ですが、現役並みの所得がある人は3割に設定されています。

(8)公費負担医療

医療保険制度のほかに、わが国の医療保障制度のもう一つの柱として公費負担医療があります。これには、[1]国として公衆衛生の向上を図るために特定の病気を対象として、その医療費の全部または一部を公費で負担する制度と、[2]医療保険を優先して治療し、残りの自己負担分を公費でみるというかたちで経済的弱者を救済する(生活保護を中心とする公的扶助等)社会福祉的な制度とに大別されます。
以下に医療保障制度一覧を示しました。

医療保障制度一覧

「政管健保」から「協会けんぽ」へ

「政管健保」から「協会けんぽ」へ厚労省の試算によれば、政管健保(2008年10月より「全国健康保険協会(協会けんぽ)」)の保険財政については、2007年度の決算が単年度赤字となり、2009年度の保険料率(現在82‰)は、何ら対策をとらなければ83‰から85‰程度まで上昇することが見込まれるなど、厳しい状況となっています。
一方、健保組合については、最近、比較的大規模な組合の解散等があったこともあり、高齢者医療制度の創設に伴う負担増が問題となっていますが、標準報酬についての政管健保との格差は拡大傾向にあるほか、健保組合全体としては、近年、被保険者数が増加する中、保険料率も低下を続けています(2007年度の全組合平均は73.1‰)。
さらに、個々の健保組合を見ると、その保険料率には、31‰程度の財政状況の良好な組合から、95‰超の協会けんぽの料率を上回る組合までばらつきがあり、例えば60‰未満の組合も158組合(全体の1割超)存在します。そのほか、保険料率は必ずしも低くなくても、(事業主の負担割合が大きく)被保険者自身の負担割合が低いといった健保組合も多く存在するなど、その状況は様々で、高齢化や所得の差など保険者努力が及ばない部分での保険者間の格差は見過ごせない程度まで拡大しています。
協会けんぽと健保組合の格差は、協会けんぽへの税金の投入(給付費等の13%、後期高齢者支援金の16.4%相当額:8,254億円(平成20年度(2008年度)予算))により調整されていますが、上記のような個々の組合の格差の状況を踏まえれば、税金での調整には限度があることが明白となっています。むしろ、保険者努力が及ばない要因については、各保険者の自主性・自立性には配慮しつつ、保険料によって調整を行うことが適切であり、「協会けんぽ」か「健保組合」かといった区分ではなく、個々の保険者の状況に応じ、きめ細やかな調整を保険料によって行うことが、負担の公平を図り、保険運営を安定させる上で重要になっています。また、結果として、協会けんぽへの税金の投入を縮減することも可能となります。
こうした観点から、2008年度に財政状況の良好な健保組合等により政管健保を支援する措置等を定める法案が国会に提出されました。その結果、2009年10月からは都道府県別に保険料率が変更されることになりました。

※2009年10月から徴収される新しい「協会けんぽ」の都道府県別保険料率は、次回掲載します。

※引用参考資料

1)厚生労働省公表資料及び通達資料
2)ユート・ブレーン㈱発行:通信教育講座『医療制度編2008年-2009年度版』
3)その他

新しい社会医療法人制度(認定医療法人)について その2

医療業界の基礎知識(31)

2007年4月1日から施行された社会医療法人制度。医療業界の基礎知識Vol.31は、前回ご紹介した「新しい社会医療法人の特長と既存医療法人との違い」「認定取得病院名」の後編を解説いたします。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

病院、診療所、介護老人保健施設の開設運営を目的とする医療法人の特徴は”非営利性”で、医療法では営利目的の病院、診療所の開設を許可しない(7条5項)ことに加え、余剰金の配当が禁止(54条)されていますが、実際には個々の医療法人の裁量に委ねられています。そのため、全医療法人数のうち、99%を占める出資持分のある社団医療法人では、社員(出資者)の退社時等に出資額に比例した剰余金の分配が行われるケースもあり、高額な払戻額が医療法人の存続を脅かす事態に発展したりして、政府の規制改革・民間開放推進会議などからは「非営利性の形骸化」が指摘されていました。
このような背景を踏まえ、第5次医療法改正では医療法人の非営利性を高める改革が盛り込まれました。改革の基本は今までの医療法人を、①非営利性を徹底した医療法人(出資額限度法人)、②公益性の高い認定医療法人(社会医療法人)の2類型に整理した上で、剰余金および残余財産を特定の個人や団体に帰属させないこととし、医療法関係法令等に明示されています。
なお、厚生労働省は既存の医療法人が自主的に新制度へ移行できるよう一定の経過措置期間を設けています。

社会医療法人制度の基本

厚生労働省は、2008年3月31日付で医政局長通知「社会医療法人の認定について」を都道府県に送付しています。社会医療法人の要件をみると、理事の定数は6人以上、監事の定数は2人以上で、理事・監事とも、親族が3分の1を超えてはなりません。理事や監事、評議員の報酬は、民間事業者の役員報酬、従業員給与などを考慮して、不当に高額にならないような基準を設定し、それを閲覧できるようにすることが求められています。社会医療法人の収入に対しては、社会保険診療や労災保険、健診、助産による収入が全収入の8割を超えることと規定されました。社会医療法人の認定に当たって厚生労働省は、下記のように5つの認定業務区分を示しています。

● 救急医療(一般救急医療、精神科救急医療)
● 災害医療
● へき地医療
● 周産期医療
● 小児救急医療

第1回目の認定に当たっては「救急医療(精神科救急医療及び小児救急医療を含む)」を主体に、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児救急医療の5業務の受け入れ作業を進めましたが、「救急医療」以外は要件が厳しくなっているため、現時点では多くの民間医療機関が断念しています(2009年1月19日時点における認定病院は別項参照)。
この認定業務社会医療法人が行う「救急医療等確保事業」の実績の基準は、救急医療の場合、過去3年間の平均で、初診件数の2割以上に「時間外等加算」を算定しているか、午後6時~午前8時の夜間や休日に、救急搬送(夜間等救急自動車等搬送件数)を年間750件以上受け入れることのいずれかに該当しなければなりません。
また、当該病院の名称がその所在地の都道府県が定める医療計画において救急医療の確保に関する事業に係る医療連携体制に係る医療提供施設として記載されていることが認定される条件です。

(別表)Ⅰ
改正医療法施行に伴う医療法人の類型

(別表)Ⅱ
社会医療法人制度の仕組み(2008年度から認定開始)

社会医療法人の移行に5年間の経過措置

厚生労働省は社会医療法人の認定にあたって、将来は二次医療圏ごとに1つの社会医療法人の設置を持ちたい考えを示しています。そのため

Ⅰ 非営利性を徹底すること

1.特定医療法人、特別医療法人制度に関する抜本的な改革を通じて、より移行しやすい新たな持分なし医療法人制度を創設する

Ⅱ 公益性を確立すること

1.住民にとって望ましい医療については、医療計画に位置づけ、その医療を認定医療法人が担う
2.積極的な役割を期待し、特定の分野の医療を担う主体として、公的医療機関とともに位置づける    

※ 特別医療法人に5年間の経過措置
「社会医療法人制度」が施行された2007年4月から5年間は、現行の特別医療法人のまま存続できる経過措置を設け、この間に社会医療法人に移行してもらうことを期待しています。また、社会医療法人が担うべき公益性の高い事業の名称を「救急医療等確保事業」に決めました。現行の特別医療法人は、07年4月以降も存続でき、従来通りの収益事業も行うことができますが、5年間で移行できなかった場合は、特別医療法人という類型はなくなるため、一般の「社団医療法人」「財団医療法人」になります。
一方、特定医療法人は租税特別措置法に基づく制度のため、これからも存続します。

※ 社会医療法人の税制優遇措置
自民党税制調査会は昨年12月12日に「2009年度税制改革大綱」をまとめ発表しました。
その中で、社会医療法人の税制優遇措置を次のように示しています、

(1)社会医療法人が運営する医療機関の非課税措置の創設

・社会医療法人が運営する病院や診療所に課せられる固定資産税や都市計画税、不動産取得税は非課税
・社会医療法人は、今迄通り医療保健業に対する法人税の非課税
・付帯業務、収益業務への法人税は22%の軽減税率を継続適用

(2)社会医療法人が運営する全ての医療機関が対象

・病院、診療所
・看護師や助産師などの医療関係者の養成所

◎社会医療法人は地域の機能分担、連携の中心となり、「社会医療法人は認定要件をクリアし、医療計画に基づく救急医療、小児救急医療などで地域内における中核医療機関として機能分担を図り連携の中心を担う」と、位置づけています。

2008年度「社会医療法人」の認定動向

特定医療法人、特別医療法人、社会医療法人の182法人で組織する「社会医療法人協会」が2008年度当初に実施した会員法人調査では、130法人から下記のような回答が寄せられました。

◎ 社会医療法人の認可を目指す  ⇔ 88法人(69%)

・2008年度中の申請予定   ⇔ 30法人
・2009年度に申請予定    ⇔ 11法人
・申請予定(時期未定)    ⇔ 47法人

◎ 社会医療法人を目指さない   ⇔ 26法人(20%)

※「社会医療法人」の認定動向(2009年2月1日現在)

◎ 30社会医療法人・33病院を認定(実際の運営に入っています)

◎ 現行医療法人からの種別移行状況

・特定医療法人からの移行      ⇒  17 病院
・特別医療法人からの移行      ⇒   3 病院
・特定・特別医療法人からの移行   ⇒   8 病院
・一般医療法人からの移行      ⇒   5 病院
今回は、33病院中、5病院が一般医療法人から移行しています。

◎ 都道府県別認可状況

・北海道 2 ・青森県 1 ・秋田県 1 ・福島県 1 ・栃木県 1
・石川県 1 ・長野県 1 ・岐阜県 2 ・滋賀県 1 ・大阪府 7
・鳥取県 2 ・島根県 3 ・香川県 1 ・愛媛県 1 ・福岡県 2 
・佐賀県 1 ・大分県 1 ・宮崎県 1
以上の18道府県33病院で、道府県単位では大阪府が最多の10病院を占めています。

◎ 認定病院名

1 北海道 カレスサッポロ北光記念病院(救急医療・7月認定)
2 滋賀県 誠光会草津総合病院(救急医療・9月認定)
3 岐阜県 厚生会木沢記念病院(救急医療・10月認定)
4 岐阜県 蘇西厚生会松波総合病院(救急医療10月認定)
5 鳥取県 明和会渡辺病院医療福祉センター(精神科救急医療)
6 鳥取県 仁厚会医療福祉センター倉吉病院(精神科救急医療)
7 香川県 大樹会総合病院回生病院(災害医療・10月認定)
8 大分県 天心堂へつぎ病院(救急医療・10月認定)
9 石川県 薫仙会恵寿総合病院(救急医療・11月認定)
10 福岡県 大成会福岡記念病院(救急医療・11月認定)
11 北海道 函館渡辺病院(精神科救急医療)
12 福島県 福島厚生会福島第一病院(救急医療・11月認定)
13 島根県 昌林会安来第一病院(精神科救急医療・11月認定) 
14 長野県 慈泉会相沢病院(救急医療・12月認定)
15 愛媛県 更正会村上記念病院(救急医療・12月認定)
16 青森県 博進会南部病院(救急医療・12月認定)
17 福岡県 至誠界木村病院(救急医療・1月認定)
18 島根県 石州会六日市病院(救急医療・1月認定)
19 島根県 清和会西川病院(精神科救急医療・1月認定)
20 大阪府 愛仁会千船病院(救急医療・小児救急医療・1月認定)
21 大阪府 協和会加納総合病院(救急医療・1月認定)
22 大阪府 真美会中野こども病院(小児救急医療・1月認定)
23 大阪府 生長会府中病院(救急医療・1月認定)
24 大阪府 栄光会佐野記念病院(救急医療・1月認定)
25 大阪府 きっこう会多根総合病院(救急医療・1月認定)
26 大阪府 ペガサス馬場記念病院(救急医療・1月認定)
27 栃木県 博愛会菅間記念病院(救急医療・1月認定)
28 佐賀県 謙仁会山元記念病院(救急医療・1月認定)
29 宮崎県 泉和会千代田病院(救急医療・1月認定)
30 秋田県 明和会中通総合病院(救急医療・2月認定)

以上、2回にわたって「社会医療法人」の現況を記しました。認定要項や設置基準等の細部については厚生労働省からの公表資料を参照してください。

※引用参考資料

1)厚生労働省公表資料及び通達資料
2)ユート・ブレーン(株)発行:通信教育講座『医療制度編2008年-2009年度版』
3)その他

新しい社会医療法人制度(認定医療法人)について その1

医療業界の基礎知識(30)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2007年4月1日から施行された社会医療法人制度。医療業界の基礎知識Vol.30は、2回に分けて、「新しい社会医療法人の特長と既存医療法人との違い」「認定取得病院名」について解説します。

医療業界の基礎知識(44)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

医療法人制度改革に伴い2007年4月1日から新しく社会医療法人制度が施行されました。実際には、2008年3月26日付けで公布された「医療法施行規則の一部を改正する省令」により、第5次改正医療法の一部として「社会医療法人の公的な運営に関する要件規定」を整備し2008年4月1日から施行されています。
社会医療法人は既存の特定医療法人の要件に加え、救急医療等の確保事業の実績等により都道府県から認定を受けて設立される法人です。
今回から2回に分けて、「新しい社会医療法人の特長と既存医療法人との違い」「認定取得病院名」等について解説します。

医療法人とは

医療法人とは医療法人は、病院、診療所または介護老人保健施設の3つを本来業務としての開設運営を目的とする法人です。医療法人制度は1950年の医療法改正で創設され、医療事業の経営主体が医業の非営利性を損なうことなく法人格を取得する道を開くことによって、資金の取得を容易にするとともに、医療機関の経営に永続性を与え、私人としての医療機関経営の困難さを緩和することを主旨としています。
当初、医療法人は、医師または歯科医師が常時3人以上勤務する病院・診療所のみに認められていましたが、1985年の第1次医療法改正で、「一人医師医療法人制度」が創設され、医師または歯科医師が常時1人ないし2人勤務する診療所を開設する場合も医療法人が設立できることになりました。この「一人医師医療法人」が認められたことによって、医療法人の設立件数は急速に増え、2007年3月31日現在、医療法人の総数は4万4027(うち一人医師医療法人は3万6973)にのぼり、医療提供体制の重要な主体施設となっています。

◎ 附帯業務の拡大

医療法人の業務には、本来業務以外に、主とする附帯業務として保健衛生に関する業務が認められています。その中に、保健・医療・福祉の連携を図るという観点から、訪問看護ステーションの開設、在宅介護支援センターの設置、ケアハウスの経営など一部の在宅福祉事業が認められていました。
それに加えて第3次改正医療法で、介護保険実施に伴う受け皿整備の一環として、在宅サービスなどに通じた人材やノウハウをもっている医療法人が、さらに在宅福祉事業を展開していけるように、ショートステイやホームヘルプ事業などの附帯業務が拡大されました。医療法人の附帯業務については、それを行うことで、本来業務である病院、診療所または介護老人保健施設の業務に支障のないことが条件となっています。また、附帯業務を行う場合は、必ず定款または寄付行為にその旨を定めておかなくてはなりません。
現在、医療法人には、附帯業務として次のような業務の全部または一部を行うことが認められています(医療法第42条第1項第1~8号)。

(1)医療関係者の養成または再教育(看護師養成所、臨床検査技師養成所、歯科衛生士養成所など)
(2)医学または歯学に関する研究所の設置
(3)医師もしくは歯科医師が常時勤務しない診療所の開設
(4)疾病予防のための有酸素運動施設(いわゆるアスレチッククラブ)
(5)疾病予防のための温泉利用施設(いわゆるクアハウス)
(6)保健衛生に関する業務
(7)社会福祉法第2条第2項及び第3項に掲げる事業のうち厚生労働大臣が定めるものの実施
(8)有料老人ホームの設置(老人福祉法に規定するもの)

 このほかに附属する多くの付帯行為がありますが、紙面の都合上、ここでは略しました。

医療法人の種類

(1)医療法人(一人医療法人を含む)

医療法人制度が創設された時に設立が認められた通常の医療法人で、医療法第39条に基づいて都道府県知事(2つ以上の県にまたがる場合は厚生労働大臣)によって許可されます。多くの法人がこれに該当します。
法人税法上では「普通法人」とされ、一般企業の株式会社などの営利法人と同一の30%の法人税率が(1999年4月1日以降の事業年度から)適用されています。

(2)特定医療法人

医療法第39条に基づく医療法人であって、なおかつ、租税特別措置法に基づいて国税庁長官の承認を得て設立される医療法人です。
医師による持分(財産権)の放棄が必要となるなど承認要件が厳しいため、2007年3月31日現在、407法人(財団64、社団343)が承認されているだけです。ちなみに、都道府県別では大阪府の26法人が最多です。
特定医療法人の法人税は、公益法人の収益業並みの軽減税率22%が適用され優遇措置が図られています。
・承認基準 …… 略

(3)特別医療法人

特別医療法人は、従来認められていなかった収益事業を解禁することを主な狙いとして、第3次医療法改正で創設された医療法人です。しかし医療法人制度改革に基づく第5次医療法改正によって2007年4月1日以降、新たに特別医療法人になることは認められなくなりました。既存の特別医療法人(2007年3月31日現在、79法人)については改正法附則により、2012年3月31日まで存続可能となっています。
特別医療法人の法人税は通常の医療法人と同じ30%の税率が適用されています。
・承認基準 …… 略

(4)社会医療法人

社会医療法人は、特別医療法人に変わる公益性の高い認定医療法人で、第5次医療法改正の一環として施行された医療法人制度改革で創設された医療法人です。
社会医療法人については、「医療保健業」に係る法人税が”非課税”となり、それ以外の収益事業の法人税率は22%となりました。また、既に2008年4月1日から都道府県ごとの認定が始まっており、2008年12月現在、全国で13病院が認定を受けています。

今回は、医療法人制度の概要を記しました。次回は社会医療法人について、その動向をまとめます。

※引用参考資料

1)厚生労働省各種通達資料
2)ユート・ブレーン㈱刊行:通信教育講座「医療制度編2008年-2009年度版」

2008年を振り返って―医療制度改革・最近の動き―

医療業界の基礎知識(29)

国内外の景気がかってない速さで悪化している2008年が暮れようとしています。今回は、厳しい環境変化の中で進められている「医療制度改革」と「医療費適正化計画」についての概要を記し、次回からそのポイントを3回にわたってまとめてみます。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

医療機関および医療関係者の「関心事と話題」(最近の講演から)

医療機関および医療関係者の「関心事と話題」現在、月に5~6回の講演を行っていますが、今年下半期の実績を依頼内容別にまとめてみると、下記のようなタイトルが主題になっています。

  • 公立病院改革の動向と役割変化(特に自治体病院の機能別変化や地域での果たすべき役割等について→自治体病院単独の場合と県や市町村の管理部門等からの依頼)
  • 改正医療法施行に伴う医療法人制度改革のポイント(2008年4月1日に施行された新しい認定社会医療法人についての基本と移行のメリット等について→都道府県病院協会や民間病院等からの依頼)
  • 医療費適正化対策や保険者の再編・統合(協会けんぽの設立)が地域医療に与える影響(→各地の医師会や民間病院等からの依頼)
  • 広告規制緩和のポイントと対策(広告規制の緩和が地域医療提供体制に与える影響など、具体例をまじえての話→医師会及び民間病院等からの依頼)

以上の他に、院内職員研修(職員の果たすべき役割→ホスピタリティーの発揮等)などがあります。

このように医療機関および医療関係者の関心事は多岐にわたっており、財政危機の中で社会保障予算抑制策が今後の医療経営にどのような影響を与えるのか、種々研究しながら検討しています。

社会保障制度下における医療制度改革

では、社会保障制度下における医療制度改革のポイントはどこにあるのでしょうか。次にいくつかのポイントを挙げてみます。

Ⅰ 社会保険庁の改革(独立行政法人化)

・「政府管掌健康保険」から「協会けんぽ」へ(2008年10月スタート)
 → 国の管轄から都道府県の管轄へ
 → 一律の保険料から都道府県単位の保険料へ
・社会保険病院、厚生年金病院の独立法人化と統廃合の進展

Ⅱ 医療法改正と薬事法改正

・社会医療法人制度(認定医療法人)の導入スタート(2008年4月から)
・一般用医薬品販売のあり方の見直し(登録販売者制度の導入・2009年度から)

Ⅲ 健康保険法改正

・国民医療費適正化対策5ヶ年計画のスタート( 2008年4月から)
・後期高齢者医療保険制度のスタート(現時点では中途半端のまま) 他

Ⅳ 医療提供体制の見直しと公立病院改革(主として自治体病院の統廃合を含めた見直し)

「社会保障の機能強化」に重点を

こうした流れの中で社会保障国民会議が11月19日にまとめ報告書したのが下記の項目です。

◎ 今までの抑制路線(社会保障費の当該年度2200億円抑制策)の修正を促す

→厳しい中でこそ必要な財源確保を

・社会保障の機能強化に重点を置いた改革が必要
・低所得者への保険料免除の積極活用、厚生年金適用拡大など未納対策の徹底
・基礎年金の最低保障額設定を検討
・医療・介護のサービス提供体制を改革。報酬体系の見直しを検討
・一元的に育児支援サービスを提供する新制度の構築
・社会保障番号の導入検討
・負担の国民合意を形成し、国・地方の財源を確保

現在、内閣と与党との間で多くの問題点が討議・検討されていますが、現在の臨時国会でどこまで合意できるか、また新年からの通常国会で予算がどうなるのか、今後の新聞報道等に関心を持っていくことが必要です。

※次回は、新しい社会医療法人制度(認定医療法人)の現状をまとめてみます。

医療費適正化政策の促進と後発医薬品の使用促進策…その3

医療業界の基礎知識(28)

医療業界の基礎知識 Vol.28は、前回に引き続き「後発医薬品の現況と今後の動向」等について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくまとめてみました。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

後発医薬品の使用促進が厚労省経済課における2009年度の大きな課題に

後発医薬品の使用促進が厚労省経済課における2009年度の大きな課題に厚労省医政局経済課が2009年度の予算概算要求に、後発医薬品(ジェネリック医薬品⇒以下、GEと表示)の使用促進策として9,100万円を計上しています。これは2007年10月に策定し2008年度から具体的に進められている「GEの安心使用促進アクションプログラム」を、より積極的に打ち出しGEの使用促進を図るためのものです。
では「GEの安心使用促進アクションプログラム」とは、どのような内容でどのように進められているのでしょうか。
厚労省は2008年7月9日、昨年10月の策定後に行った実施状況をまとめ、発表しています。それによれば、安定供給や品質確保、情報提供においてGEメーカーに2007年度末までの実施を求めていた課題はほぼ達成された、と報告しています。一方、2008年度以降の目標については計画を遂行することで順次達成されるものとみており、GEの数量ベースシェアを2012年度までに30%以上に拡大する目標を、是が非でも達成させたい、としています。

「GEの安心使用促進アクションプログラム」の実施状況

7月9日に発表された「GEの安心使用促進アクションプログラム」の実施状況の概要は次のとおりです。(調査対象会社:40社、対象期間:2007年10月1日~2008年3月31日)

2007年度の取り組み項目と実施状況

Ⅰ. 後発医薬品メーカーの取組み
・ 安定供給 
・ 品質確保
・ 情報提供 ⇒ 略

Ⅱ. 国の取組み
・ 使用促進に係る環境整備
  ⇒ 一般向けポスター、医療関係者向けパンフレットを作成・配布
・医療保険制度上の事項
  ⇒ 2008年度診療報酬改定において、処方せん様式の変更等の措置を講じた

2008年度の取組みと2008年4月現在の実施状況)

Ⅰ. 安定供給等に関する事項
 ⅰ 国の取組み
   ⇒ 安定供給の確保に関するこれまでの取組みを周知徹底・指導
 ⅱ 後発医薬品メーカーの取り組み ⇒ 略

Ⅱ. 品質確保に関する事項
 ⅰ 国の取組み
   ⇒ 「後発医薬品品質情報検討会」の設置と試験検査(別記参照)一部略
 ⅱ 後発医薬品メーカーの取組み ⇒ 略

Ⅲ. 後発品メーカーによる情報提供に関する事項
 ⅰ 国の取組み ⇒ GEの情報提供の充実を指導 他
 ⅱ 後発医薬品メーカーの取り組み ⇒ 略

Ⅳ. 使用促進に係る環境整備に関する事項
 ⅰ 国の取組み
   ⇒ 厚労省ホームページに状況を一元的に提供するページを開設 他
 ⅱ 関係者の取り組み
   ⇒ 日本薬剤師会より都道府県薬剤師会にGEリストのひな形を提供し、地域レベルで使用されているGEリストを医療機関等に配布するよう準備・作成

Ⅴ. 医療保険制度上の事項
 ⅰ 国の取組み
   ⇒ 2008年度診療報酬改定において、GEの使用促進のための措置を講じた(措置項目は略)

(※ここではポイント事項の項目のみ記しました。細部については厚労省のホームページを参照してください)

GE市場は拡大しているか

――GE使用促進のカギは「医師の認識と薬剤師からの積極的な情報提供」に2008年度の診療報酬改定で「処方せん様式の見直し」等、調剤報酬をベースとした多くのGE使用促進策が打ち出されています。しかし4月~8月までの間、厚労省やGEメーカーが当初期待したほどには伸張していないのが実情です。
こうした現況はGEメーカーの2009年3月期の第1四半期決算報告にもみられ、増収増益ではあっても当初の計画を達成できず、7月のアムロジピン等の大型製品を含むGE新規収載以降も、新薬兼業メーカーやGEメーカーの競争が熾烈さを増し、製薬企業の株価の中でも頭打ちの状況にあるとアナリストは分析しています。
何故、厚労省やGEメーカーが期待したほどには伸びていないのか。いくつかの理由が考えられます。

  • 先発品から後発品への変更を「原則不可」として抑制している医療機関が多い
  • 病院勤務医師のGEアレルギーがまだ根強い
  • 保険調剤薬局における薬剤師の意識不足や情報不足(処方医や患者に対して)
  • 薬価差から見て先発品から後発品へ変更するメリットが少ない
  • 先発メーカー及びMRの防衛意識が強い  等

調剤薬局チェーン大手の日本調剤は自社で行った調査で、受け入れた処方せんの4割に、特許の切れた先発医薬品より安い後発医薬品への調剤変更を不可とする医師の署名があることが分った、と発表しています。特に公立病院や公的病院の多くに「変更不可」の処方せんが目立っています。
また、北海道では多くの病院で「病院ぐるみの後発品規制」が行われていると報道されており、北海道社会保険事務局は「GEへの変更規制があるなら適正に指導する」として、GEへの変更を「原則不可」としている病院に対して、書面や口頭で事情説明を求めています(9月8日付・リスファックス5185号から引用)。
 こうした問題とは別に大きなポイントとしては、「医師の認識と薬剤師からの積極的な情報提供が不十分」とする意見があり、今後の課題として、医師や薬剤師への意識改革等を含めたアプローチの強化がより必要になっています。

GEに関する最近の動向

最後に、GEの使用促進を図るための措置として、2008年4月以降に公表されたり報道されたいくつかの項目をまとめてみました。

・GE使用促進のための「後発品促進協議会」を都道府県毎に設置

 ⇒北海道他、30道府県が2008年度中に設置、活動開始

・財政の厳しい健保組合(保険者)運営の改善策として、被保険者に対するGE使用を要請(通知)する健保組合が増加

・厚労省が2年連続で6月・7月の「薬価経変調査」を実施

 ⇒7月追補収載GEの実勢価把握(特にアムロピジン) 等

・GE使用促進へ参照価格制度導入の検討を(7月の規制改革会議で提言)

・「GE品質情報検討会」を設置

 ⇒国立医薬品食品研究所が主催(有識者12名で開催)・GEの溶出性試験など、主に品質面の検証作業を行う。結果は順次「医薬品医療機器総合機構」のホームページで公表

 ⇒今回の実施該当医薬品(10成分)
・プラバスタチンナトリウム ・クラリスロマイシン ・ノルフロキサシン
・アマンタジン塩酸塩 ・トリアゾラム ・ブロチゾラム ・ロキソプロフェンナトリウム ・イオパミドール

まとめ

GEの使用拡大は厚労省医政局経済課における「医療費適正化政策」の最大の課題と言えます。したがって現在審議が進められている「薬価制度見直し」とも絡んで種々の論議や検討が行われるのは必至です。その動向は医薬品業界の再編問題や外資による攻勢などとも絡みますので今後とも注視する必要があります。

医療費適正化政策の促進と後発医薬品の使用促進策…その2

医療業界の基礎知識(27)

今回は、「後発医薬品の現況と今後の動向」として、医療費適正化対策の目玉と位置づけられる「後発医薬品の使用促進策」等についてまとめてみました

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

厚生労働省が2012年度末までに後発医薬品シェア30%超を目標に掲げる

後発医薬品〔(ジェネリック医薬品)以下、GEと表示〕の使用促進にあたっては、これまでもいくつかの対応策がとられてきましたが、行政側が思ったほどの進捗が得られず、2006年度のGEシェアは数量ベースで16.9%、金額ベースで5.7%となっています。表Ⅰにみられるとおり欧米4カ国と比較して日本のGEの使用は非常に少なく、医療費に占める薬剤比率の高さの本になっているとみられており(2005年度推定比率22.1%→表Ⅱ参照)、これに業を煮やした経済財政諮問会議の民間議員の中には、6月10日の会議で医療費の伸び率を抑制するためにもGEのシェアを40%にまで高め薬剤比率を引き下げるよう求めています。

表Ⅰ 各国の後発医薬品シェア
各国の後発医薬品シェア
表Ⅱ 薬剤費および推定乖離率の年次推移(出典:厚労省資料)
薬剤費および推定乖離率の年次推移

厚労省が打ち出したGEの使用促進策

(1)厚労省が打ち出したGEメーカーに対する使用促進策は、「品質確保、情報提供、安定供給」が基本の3本柱

○ 品質の確保
 ・品質再評価による先発医薬品と同等の溶出性の確認
 ・GMP基準に基づく生産体制のチェック
 ・承認審査時のチェック

○ 情報提供の充実
 ・後発医薬品の添付文書に記載する情報を充実するよう関係団体等に依頼
 ・安全性情報の収集や提供の促進
 ・医療機関等からの情報提供要請に対し、対応可能な情報提供体制の整備の充実

○ 安定供給の指導
 ・薬価収載時における指導
 ・保険医療機関や保険薬局からの苦情を受け付け
 ・必要に応じてメーカーを調査・指導

以上の3つに加え、「後発医薬品の保険収載に当たり必要な規格を全種類揃えるよう関係団体等に対し依頼する」こととしています。

(2)診療報酬改定等による医療機関に対する処方促進のインセンティブ

○ 処方せん料の加算

○ 処方せん様式の再変更
 ・GEへの変更不可の場合、備考欄に署名または記名・捺印

○ 保険調剤薬局における技術料の評価
 ・患者に対する説明を行い同意を得た場合、薬局での銘柄変更調剤が可能
 ・GE調剤体制加算
 ・GEの分割調剤(いわゆる「お試し調剤」)を認める
 ・処方せんを発行する医療機関への情報提供
 ・保険薬局および保険薬剤師療養担当規則等の改正(薬剤師の役割を明確化)

○ 国立病院におけるGEの使用促進

(3)その他

○ 国民・医療関係者への普及啓発
 ・患者向けのパンフレットやポスターの作成等を通じ広報活動の拡大

○ オレンジブック「医薬品情報提供HP」による情報の提供

○ GE使用促進のための「後発品使用協議会」を都道府県ごとに設置
 ・GE使用における現状分析や各都道府県の実情に応じた使用促進策の検討
 ・北海道、福岡県など30道府県が2008年度中に設置または設置予定

以上のように、処方せんを発行する医療機関、調剤にあわせ情報を提供する保険薬局(薬剤師)、患者など、それぞれに対する種々の評価やアプローチを行い、使用促進を図っています。

〈参考資料1〉2007年社会医療診療行為別調査の結果概況にみるGEの状況

厚生労働省は6月20日、2007年6月度の審査分における診療行為別調査の結果概要を公表しました。ここではその中から後発品に関係する事項を選び掲載しましたので参考にしてください。

表Ⅲ 後発品の使用状況
後発品の使用状況
表Ⅳ 主な後発医薬品の焼こう分類別薬剤点数の割合
主な後発医薬品の焼こう分類別薬剤点数の割合

〈参考資料2〉

表Ⅴ 2008年7月4日付・後発医薬品の薬価収載状況
2008年7月4日付・後発医薬品の薬価収載状況
表Ⅵ 後発品が初めて収載された医薬品(成分一覧)
後発品が初めて収載された医薬品(成分一覧)

次回は、そのⅢとして「後発医薬品の現況と今後の動向」についてのべます。

医療費適正化政策の促進と後発医薬品の使用促進策…その1

医療業界の基礎知識(26)

2008年度の診療報酬改定が行われて3ヶ月が経過しました。この間、「後期高齢者医療制度」の施行に伴う種々の問題点が発生し、厚生行政が混沌としているため、日医の「緊急調査報告」を始め各団体の報告が出されているにも係らず、一般的にはあまり大きな声にはなっていないようです。今回は2008年度から具体的に動き出した「医療費適正化計画」の動向と、社会保障費の伸び率抑制策の手段として大きく動き出した「後発医薬品の使用促進策」にポイントをしぼり、まとめてみました。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

2008年度:医療制度改革10のポイント

2008年度:医療制度改革10のポイント2008年度の診療報酬改定は、2006年度の経済財政諮問会議で決められた「骨太の方針2006」にのっとって、社会保障費自然増の中、2200億円の伸び率を抑制することが大きなポイントとなっていました。特に社会保障費全般にメスを入れることに反対する意見が多かったこともあり、2200億円の殆どを診療報酬改定に求めざるを得なかったのが実情でした。
その結果行われたのが、2006年度の「医療制度改革大綱の基本的な考え方」の中で示された次の3つをベースにした実行策です。

1.安心・信頼の医療の確保と予防の重視
2.医療費適正化の総合的な推進
3.超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現

中でも(2)の「医療費適正化の総合的な推進」が中心になっているため、内容的には大変厳しい改定になっています。2008年度からスタートした医療制度改革をまとめてみると次のような10項目が挙げられます。

Ⅰ「医療費適正化計画」の一斉スタート

・医療費適正化の総合的な推進(都道府県ごとに作成)
  ・4疾病(脳卒中、がん、急性心筋梗塞、糖尿病)
5事業(小児医療対策、救急対策、周産期対策、災害対策、へき地医療対策)
による医療連携の構築等、新医療計画の策定実施

・医療療養病床転換(再編)計画の、本格的取組み…35万床⇒15万~20万床
・健診、生活習慣病対策の取組み策定と実施

Ⅱ「後期高齢者医療制度」のスタート

Ⅲ「2200億円の伸び率抑制予算」による厳しい医療費抑制策の実施

Ⅳ「診療報酬改定⇒メリハリのある厳しい診療報酬見直しに」

Ⅴ「薬価基準制度の見直しと薬価改定による薬剤費の見直し」

・イノベーションを創出するための取組みと新規開発品の評価
・長期収載医薬品(特許切れ)の薬価の見直し検討
後発医薬品使用促進策(2008年度診療報酬改定で実施)

Ⅵ「第5次医療法改正」の本格的なスタート

・良質な医療を効率よく提供するための施策の具体的な実行
・安心・安全で質の高い医療の基盤整備(診療報酬改定に反映させる)

Ⅶ「広告規制の緩和と医療機関の役割の明確化」

・2008年度から本格実施、医療機関の持つ機能がオープンに
・4月1日から医療機関の標榜診療科名を拡大(前号で詳細を解説)

Ⅷ「公立病院改革がもたらす地域医療機能の大変革」

・病院の集約や規模縮小が進む(統合化)
・病院⇒介護や保健施設また診療所への転換で、地域医療ネットワークが大きく変化

Ⅸ「減少が進む病院数と病床数⇒特に療養病床の減少が顕著に」

・病院から診療所や介護・福祉施設への移行が進む
・地域間格差の拡大
 (参考リンク:厚生労働省の医療施設動態調査(平成20年3月末概数))

Ⅹ「混合診療の拡大」⇒公的給付の見直し

・規制改革会議⇒全面解禁を視野に(08年は見送り)
・民間保険(第3分野の保険)市場の拡大で、患者の医療機関選択が進む

などです。特にⅠの「医療費適正化計画」については、診療報酬改定への影響はもとより、地域の「医療提供体制」に大きな影響を与えることが予想されています。

具体的に動き出した「医療費適正化計画」

医療費適正化計画は都道府県毎に「医療費適正化5ヶ年計画」として2008年4月からスタートし、2012年度(2012年3月末)に終了することになっています。あわせて計画最終年度の翌2014年度に都道府県別の実績を集計し評価をすることが決められています。したがって都道府県はそれぞれに目標を立て実行しますので、都道府県によっては医療政策に大きな差が現れてくる可能性があります。
また、予定通り進んだ地域と進まなかった地域に対する評価や適正化(ペナルティーなど)が、将来の個人負担の差となって出てくることも考えられ、都道府県の今後の取組みに目が離せなくなってきています。

2008年度診療報酬改定にみる「適正化計画の具体的項目」

Ⅰ 疾患別医療連携対策による「平均在院日数の短縮」
 ・連携パスの追加(大腿骨頸部骨折 に 脳卒中を追加

Ⅱ 急性期入院医療における各種点数評価

Ⅲ 生活習慣病の患者・予備軍の減少率目標値の設置

Ⅳ 4疾病5事業に特化した医療連携対策の組み上げ

Ⅴ 急性期病院における外来診療の縮小と入院医療に特化を条件とした「入院時医学管理
料加算」の新設

Ⅵ 急性期に連動した亜急性期・回復期病床の整備と評価

Ⅶ 急性期後の入院機能の評価(200床以下病院に亜急性期入院医療管理料2の新設)

適正化・見直し等を行った主な項目

外来管理加算 ⇒ 患者への説明(患者に対する症状の再確認を行いつつ、療養上の注意点等の説明)及び患者の疑問や不安を解消するための取組を行うこととするとともに、そのための時間の目安を設ける

7:1入院基本料 ⇒ 「看護必要度」による基準を設けるとともに、医師数が一定数に満たない場合の減算を行う

外来精神療法 ⇒ 通院精神療法について、診療に要した時間が5分を超えたときに限り算定するものとする

後発医薬品の使用促進 ⇒ 後発医薬品の使用を促進するため、所要の措置(※)を講ずる
※①処方せん様式の変更、②後発医薬品の調剤率30%以上の薬局の評価、③「お試し」のための分割調剤を可とすることなど

処置の見直し ⇒ 軽微な処置(※)について、基本診療料に包括する

 ※医師による診断と適切な指導があれば患者本人又は家人により行うことが可能であり、必ずしも医師等の医療従事者による高度な技術を必要としない処置

コンタクトレンズ検査料 ⇒ コンタクトレンズ検査料について、不適切な診療報酬請求事例が多く見られたことから、更に適正化を図る

◎こうした項目の評価により、各医療機関に対し地域医療の中で手薄な医療機能に対する「選択と集中」を促し、医療の効率化(適正化)図ろうとしています。(以下、次号に)

参考資料

図Ⅰ「4疾病5事業の医療連携対策の基本」
図Ⅱ「急性期病院における各種取組みと医療費適正化の関係」
図Ⅲ「病院機能区分・急性期医療⇒慢性期・在宅への流れ」

4疾病5事業の医療連携対策の基本

急性期病院における各種取組みと医療費適正化の関係

病院機能区分・急性期医療⇒慢性期・在宅への流れ

次回はそのⅡとして、医療費適正化対策の目玉と位置づけられる「後発医薬品の使用促進策」等について、「後発医薬品の現況と今後の動向」をまとめてみます。

2008年4月1日から、医療機関の標榜診療科名を拡大

医療業界の基礎知識(25)

既にお気づきの方もいると思いますが、4月から医療機関の「標榜診療科名」が大幅に拡大されています。厚生労働省は2月25日の全国医療関係主管課長会議で、標榜診療科名の拡大を図るため医療法施行令などの関係法令を改正し、4月1日から新診療科名の広告を認めました。以下に医療法施行令の一部を改正する基本内容に併せ、改正内容についてまとめてみました。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

改正の背景

2006年に第5次医療法が改正され、2007年4月から施行されました。第5次医療法の改正は「過去、最大の改正」と言われているように、数多くの重要項目がありました。特に「患者等への医療に関する情報提供の推進を図るために」として施行された広告規制の見直しは、都道府県を通じた情報公表制度の確立を通して、住民の誰でもが「安全、安心、迅速」な医療を選択できるようにすることを目的としています。
今回の医療法施行令の一部改正も、広告規制の見直しを進め「患者や住民自身が自分の病状に合った適切な医療機関の選択を支援する」ことを目的としています。特に診療科名については、これまでの「広告可能な診療科名を限定列挙する方式」から、「一定の性質を有する事項を包括的に規定する方式」に改め、医療機関が標榜できる診療科名を、「患者や地域住民に分りやすい形で示す」柔軟な方式にし、相当程度の拡大を図っています。

政令の概要…科名限定列挙から科名と臓器名称等との組合せが可能に

今回の改正では、今までの政令で規定する診療科のうち「内科」「外科」を単独で広告可能とする規定に加え、1)臓器や体の部位の名称 2)患者の特性 3)診療方法の名称 4)症状、疾患の名称……を内科と外科に組合せた診療科名として認めるなど、標榜可能な診療科名を拡大しています。
また、次の診療科名については単独の名称を診療科名とするほか、ルールA及びBに基づき上記の1)から4)までに掲げる事項と組み合わせたものを新たな診療科名として認めるとしています。

※ 精神科、アレルギー科、リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、病理診断科、臨床検査科、救急科 

・ルールA

(例) 「内科」と「2)老人」と「3)心療」とを組み合わせ、「老人心療内科」と広告することは可能。

・ルールB

上記に掲げる1)から4)までの事項について、同じ分類に属するもの同士を複数組み合わせることは出来ない。 (例) 「外科」と「2)老人」と「2)小児」とを組み合わせ、「老人小児外科」と広告することはできない。→ 代わりに、「外科(老人・小児)」・「老人外科・小児外科」という形で広告することは可能

なお、改正前から広告している神経科、循環器科、呼吸器科、消化器科、胃腸科、気管食道科、皮膚泌尿器科、性病科、肛門科の診療科名については、今回の改正により単独での診療科名として新たな広告が認められなくなりますが、4月1日以前から広告している場合は改正後も広告を続けることは可能です。ただ、広告を改める際は、新しい診療科名とする手続が必要になります。
 また、組合せの結果、不合理な内容等であるものについては、診療科名として広告してはならないものとして、厚生労働省令に規定されています。

内科、外科等と組合せることのできる標榜可能な診療科名

1)臓器や体の部位の名称

(※)具体的には、頭頸部、胸部、腹部、呼吸器、消化器、循環器、気管食道、肛門、血管、心臓血管、腎臓、脳神経、神経、血液、乳腺、内分泌もしくは代謝又はこれらを構成する人体の組織、器官、臓器若しくは身体の部位又はこれらの臓器等が果たす機能の一部であって、厚生労働省令で定めるものとする。

2)患者の特性

(※)具体的には、男性、女性、小児若しくは老人又は患者の性別、年齢を示す名称であって、これらに類するものとして厚生労働省令で定めるものとする。

3)診療方法の名称

(※)具体的には、整形、形成、美容、心療、薬物療法、透析、移植、光学医療、生殖医療若しくは疼痛緩和又はこれらの分野に属する医学的処置のうち、医学的知見及び社会通念に照らし特定の領域を表す用語として厚生労働省令で定めるものとする。

4)症状、疾患の名称

(※)具体的には、感染症、腫瘍、糖尿病若しくはアレルギー疾患又はこれらの疾病若しくは病態に属する特定の疾病若しくは病態であって、厚生労働省令で定めるものとする。

標榜診療科名の改正について

標榜診療科の見直し後の例

2008年度:診療報酬改定のポイント そのⅡ

医療業界の基礎知識(24)

厚生労働省は3月5日、2月13日に中医協から答申を受けた「2008年度診療報酬改定」を官報で告示しました。これにより医療機関(保険薬局を含む)は4月1日からの実施に向けて、新しい点数への対応準備等、急ピッチで整備を進めています。今回は2008年度診療報酬改定の基本内容を中心に、いくつかのポイントをまとめて解説します。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

病院・診療所間の再診料点数格差は病院点数の引き上げで調整

今回の診療報酬改定案の中で、支払い側と診療側で意見の対立がみられていた「再診料問題」は、土田中医協会長の裁定で「既存点数のまま」に据え置かれ一件落着しました。
・診療所における「再診料関連点数」は次のとおりです。

<一般患者の場合>
■再診料:71点(据置) ⇒ 病院の再診料は 57点→60点に3点引き上げ
■外来管理加算:52点(据置)
■特定疾患療養管理料:225点(据置)
■処方せん料:70点→68点(引下げ)

合計点数 418点→416点

<後期高齢者の場合>
■再診料:71点(据置) ⇒ 病院の再診料は 57点→60点に3点引き上げ
■外来管理加算:57点→52点(引下げ) ⇒ 病院の外来管理加算は 47点→52点に
■特定疾患療養管理料:225点(据置)
■処方せん料:70点→68点(引下げ)

合計点数 423点→416点

※特定疾患療養管理料の代わりに”1患者1医療機関”限定で「後期高齢者診療料」(月1回:600点)が算定可能

2008年度診療報酬改定の特徴は「医療費適正化計画」に向けた具体的なスタート

前回、医療産業に影響を与える「医療制度改革10のポイント」の中で、「医療費適正化計画の一斉スタート」として、代表的な4つの実施項目を記しました。「医療費適正化」は5ヵ年計画として2008年4月をスタートに、2013年3月で終了させ、計画最終年度の翌2014年度に都道府県別の実績を評価することになっています。
今回の診療報酬改定における「医療費適正化計画」の具体策として、最も大きなウエイトとして考えられるのが、疾患別医療連携対策による「平均在院日数の短縮」で、次のような項目が代表的な施策として点数評価されています。

1.急性期系入院医療における各種点数評価
2.生活習慣病の患者・予備軍の減少率目標値の設置
3.4疾病5事業に特化した医療連携対策の組み上げ
4.急性期病院における外来診療の縮小(入院医療に特化)を条件とした「入院時医学管理加算」(1日につき120点、14日を限度)の新設
5.急性期病床の整備に連動した、亜急性期・回復期病床の整備(評価)
6.高齢者医療制度の創設に併せた在宅医療の充実と評価 等

があげられ、医療機関に対し、地域医療の中で手薄な医療機能に対する「選択と集中」を求めています。

国民や患者からの意見(パブリックコメント)を参考にした医療評価の実施

今回の診療報酬改定でも患者や医療関係者を含む有識者からの意見を活かした点数評価がなされています。その中のいくつかをあげてみます。

1.リハビリテーション料の見直し(標準的リハビリテーション実施日数を超えた患者に対する、1ヶ月当たり算定単位の上限日数の可能期間措置及び選定療養費への拡大)
2.回復期リハビリテーション病棟に対する評価
3.人工透析を受けるにあたり長時間を要する患者が一定数いる実態にあわせ、長時間の人工透析を行った場合の評価
4.地域連携パスによる医療機関の連携体制評価(脳卒中の追加)
5.その他

DPC制度運用の改善と拡大

2008年度DPC対象病院として新たに358病院が認められ、合計718病院が対象施設になりました。今回の拡大にあたっては次のような基準が事前に示されています。

【1】DPC対象病院の拡大について

1.平成19年度DPC対象病院の基準として、平成18年度基準のほかに、2年間の適切なデータの提出及び(データ/病床)比が10ヶ月で8.75以上という要件を加える。
2.平成20年度に新たにDPCの対象となる医療機関は平成18年度・DPC準備病院(371病院)のうち、基準を満たしたものとする。⇒ 358病院に
3.平成19年度・DPC準備病院については、平成21年度にDPCの対象とすべきか検討することとするが、その基準は、その時点におけるDPC対象病院に適用される基準と同じものとする。

【2】算定ルール及び診断群分類の見直しについて

1.算定ルールの見直しについて
・3日以内の再入院については、1入院として取り扱う等の算定ルールの見直しを行う。
・DPCにおける診療報酬明細書の提出時に、包括評価部分に係る診療行為の内容が分かる情報も加える。
2.診断群分類の見直し等について(略)

【3】調整係数について

1.調整係数の算出については、2年間(10か月分)のデータを用いることとする。
調整係数は既存の対象病院と新規対象病院に対し、既に3月3日までに内示されています。
2.平成20年度診療報酬改定率をDPCの包括部分についても適切に反映するため、DPCの包括部分に係る収入が全体改定率の▲0.82%となるよう、調整係数を設定する。 ただし、10:1入院基本料及び特定機能病院・専門病院における14日以内の加算の見直しに伴う係数については適切に反映されるよう図ることとする。

【4】平成20年度以降のDPC制度運用の留意事項

1.平成19年度末時点で、既にDPCの対象となっている病院について、平成18年度から導入された基準(望ましい基準を除く。)を満たせない場合については、DPC対象病院としない。
2.平成20年3月31日時点でDPCの対象となっている病院について、平成20年度から新たに設けられた基準を満たすことができない場合については、平成20年度は、1-①の基準は適用しない。
3.平成20年度以降に看護配置基準を満たせなくなった病院については、再び要件を満たすことができるか判断するため3か月間の猶予期間を設け、3か月を超えても要件を満たせない場合はDPC対象病院から除外する。
4.DPC対象病院から除外された場合は、医療機関の希望に応じて、引き続きDPC準備病院として調査に参加し、次回のDPC対象病院拡大の際に、基準を満たした場合には再度DPC対象病院とすることができる。
※DPC制度のあり方や調整係数の廃止に伴う新たな機能評価係数等について速やかに検討する。

1手術当たりの支払方式の試行的導入

今回の診療報酬改定におけるポイント(目玉とも考えられる)の一つに「1手術当たりの支払方式の試行的導があります。これは将来のDPC制度のあり方を見据えた点数評価の試行といわれており、今後の医療のあり方のモデルになる可能性が考えられます。その基本は、標準的な治療法が確立されており、手術にともなう入院期間及び費用に大きな変動のないものについて、1手術当たりの支払方式(定額制)とするものです。

【新設】
◎ 短期滞在手術基本料3  1手術当たり  5,670点(4泊5日までの場合)
・15歳未満の鼠径ヘルニア手術に係る5日以内の入院を対象
(小児入院医療管理料、特別入院基本料算定患者は除く)
・算定要件
・入院基本料及び入院基本料等加算
(臨床研修病院入院診療、地域、離島、医療安全対策、栄養管理実施の各加算は除く)
・検査 ・画像診断 ・投薬 ・注射 ・1000点未満の処置等を包括

以上、今回は限られた範囲のものを掲載しました。

2008年度:医療制度改革の動向と診療報酬改定のポイント

医療業界の基礎知識(23)

医療業界の基礎知識 Vol.23は、医療産業に影響を与える、2008年度の医療制度改革の動向と診療報酬改定のポイントを、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

医療産業に影響を与える医療制度改革の動向と診療報酬改定のポイント

厚生労働省は2月13日、当日の中医協総会においてまとめられた「2008年度診療報酬改定案」の答申を受け、3月上旬の告示を前に即日その内容の概要をホームページ上に公表しました。
今回は2008年度医療制度改革の動向と診療報酬改定案を中心に、医療産業にどのような影響があるのか、いくつかのポイントにまとめて解説します。

医療産業に影響を与える「医療制度改革10のポイント」

医療制度改革法の基本は「医療制度改革大綱の基本的な考え方」の中で示されていますが、そのポイントは

1.安心・信頼の医療の確保と予防の重視
2.医療費適正化の総合的な推進
3.超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現

の考え方をベースに、次の二つの法律からなっています。

◎ 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律
◎ 健康保険法等の一部を改正する法律

この二つの法律は既にそれぞれが施行されていますが、より具体的な運用と目されるのが2008年度からになります。その結果、2008年度は次のようないろいろな事例が医療産業に影響与えてきます。

Ⅰ 「医療費適正化計画」の一斉スタート

 ・医療費適正化の総合的な推進(都道府県ごとに作成)
 ・4疾病(脳卒中、がん、急性心筋梗塞、糖尿病)、5事業(小児医療対策、救急対策、周産期対策、災害対策、へき地医療対策)による医療連携の構築等、新医療計画の策定実施
 ・医療療養病床転換(再編)計画の、本格的取組み…35万床⇒15万~20万床
 ・健診、生活習慣病対策の取組み策定と実施

Ⅱ 「後期高齢者医療制度」のスタート

Ⅲ 「2200億円の伸び率抑制予算」による厳しい医療費抑制策の実施<

Ⅳ 「診療報酬改定⇒メリハリのある厳しい診療報酬見直しに」

Ⅴ 「薬価基準制度の見直しと薬価改定による薬剤費の見直し」

  ・イノベーションを創出するための取組みと新規開発品の評価(研究開発力の差が大きく影響)
  ・長期収載医薬品(特許切れ)の薬価の見直し検討
  ・後発医薬品使用促進策(2008年度診療報酬改定で実施)

Ⅵ 「第5次医療法改正」の本格的なスタート

・良質な医療を効率よく提供するための施策の具体的な実行
・安心・安全で質の高い医療の基盤整備(診療報酬改定に反映させる)

Ⅶ 「広告規制の緩和と医療機関の役割の明確化」

  ・2008年度から本格実施、医療機関の持つ機能がオープンに

Ⅷ 「公立病院改革がもたらす医療市場の大変革」

  ・病院の集約や規模縮小が進む(統合化)
  ・病院⇒介護や保健施設また診療所への転換で、地域医療ネットワークが大きく変化

Ⅸ 「減少が進む病院数と病床数⇒特に療養病床の減少が顕著に」

  ・病院から診療所や介護・福祉施設への移行が進む
  ・地域間格差の拡大

Ⅹ 「混合診療の拡大」⇒公的給付の見直し

  ・規制改革会議⇒全面解禁を視野に(08年は見送り)
  ・民間保険(第3分野の保険)市場の拡大で、患者の医療機関選択が進む

◆ 診療報酬改定のポイント

2008年度診療報酬改定は下記のとおりですが、焦点となっていた診療報酬本体の改定率が0.38%の引き上げで決着し、あわせて「一物二価」の代表的な点数であった診療所と病院の再診料の見直しは、病院の再診料のみ現行の57点から3点引き上げ、点数格差を現行の14点から11点に縮めています。(厚労省によると、この3点の引き上げで約75億円の増額になると見積もられています)

◎診療報酬本体の引上げ率は0.38%
  ・国庫負担増 304億円 ⇒ 医療費で1250億円
  ・医科・歯科の引上げ率  ⇒ 0.42%
  ・調剤の引上げ率     ⇒ 0.17%

◎薬価及び医療材料の引下げ率は1.20%
  ・薬価改定 ▲1.1%(薬価ベース ▲5.7%)       
    (薬価調査の最終集計結果⇒乖離率 6.9%、引下げ原資4.9%)
  ・材料改定 ▲0.1%

◎診療報酬全体では0.82%の引下げ

◆ 2008年度診療報酬改定における緊急課題は次のとおりです

Ⅰ 産科や小児科を始めとする病院勤務医の負担軽減

 ・産科・小児科への重点評価
 ・診療所・病院の役割分担等   
 ・病院勤務医の事務負担の軽減(事務職員の活用等)

①患者から見て分りやすくQOLを高める医療を実現

 ・医療費の内容の情報提供
 ・分りやすい診療報酬体系
 ・生活を重視した医療
 ・保険薬局の機能強化

②医療機能の分化・連携の推進

 ※地域医療機能の適切な分化・連携を進め、急性期⇒回復期⇒慢性期⇒在宅療養への
切れ目のない医療の流れを充実
 ・質が高い効率的な入院医療の推進
 ・質の評価手法の検討
 ・医療行為や7対1入院等医療ニーズに着目した評価
 ・在宅療養支援診医療等を中心とした医療関係者間の連携等による在宅医療の推進
    ⇒介護・福祉関係者、訪問薬剤指導、訪問看護等
 ・歯科医療の充実

③今後重点的に対応していくべき領域の評価

 ※国民の安心・納得や制度の持続可能性を確保し、経済・財政とも均衡が取れたものとする観点を踏まえた評価のあり方
 ・放射線療法や化学療法の普及等、がん医療の推進
 ・発症後早期の治療対策等、脳卒中対策の評価
 ・自殺対策・こどもの心の対策
 ・医療安全の推進と新しい技術等の評価
    ⇒新しい技術の医療給付と治療効果の低い技術の置換
 ・医薬品及び医療機器のイノベーション等の評価
 ・オンライン化・I T化の推進

④医療費配分において効率化余地のある領域見直し

※今後重点的に対応すべき療養の適切な評価と効率化余地がある領域の適正化
 ・新しい技術への置換え
 ・後発品の使用促進等
 ・市場実勢価格の反映(医薬品、医療材料、検査等の適正化)
 ・医療ニーズに着目した評価
 ・その他、効率化や適正化すべき項目の検討と適正評価
◎後期高齢者医療の診療報酬体系

◆ 診療報酬改定の主な新設項目と評価項目

◎10対1 入院基本料の見直し
  ※一般病棟入院基本料 1,269点⇒1,300点に
◎医師事務作業補助体制加算の新設
◎生活習慣病管理料の普及に向けた取組みの評価
◎糖尿病の重症化予防に係る評価
◎急性期後の入院機能の評価
  ※亜急性期入院医療管理料2の新設
◎有床診療所の評価
◎回復期リハビリテーション病棟に対する質の評価の導入
◎医療療養病棟等の医療の質への取組み評価
◎7対1 入院基本料の基準見直し
◎在宅療養支援病院の新設
◎超急性期脳卒中加算の創設
◎子どもの心の診療に関する評価の充実
◎ハイリスク薬等に関する薬学的管理の評価等
  ※薬剤管理指導料の改正
◎画像診断等の評価の見直し
◎後期高齢者の退院後の生活を見通した入院医療の評価
◎在宅医療におけるカンファレンス等の情報共有の評価
  ※在宅患者連携指導料等、各種新設
◎24時間体制の訪問看護の推進
◎訪問薬剤管理指導の充実
※在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の新設

◆ 診療報酬改定の主な新設項目と評価項目

◎開業時間内に行う夜間、早朝等における初・再診料の加算の創設

(1)初診料 夜間・早期等加算 50点
(2)再診料 夜間・早朝等加算 50点
[算定要件]
  ・開業時間であって、以下の時間帯に診療が行われた場合
   1 平日の夜間(18~22時)、早朝(6~8時)の診療
   2 土曜の夜間等(12~22時)、早朝(6~8時)の診療
   3 日曜、祝日の深夜以外(6~22時)の診療
[施設基準]
   1 週30時間以上開業している診療所であること
   2 開業時間を分かりやすい場所に掲示していること

1 地域連携小児夜間・休日診療料の評価の引上げ
   ・地域連携小児夜間・休日診療料(1) 300点 → 350点
   ・地域連携小児夜間・休日診療料(2) 450点 → 500点
2 小児科外来診療料の引上げ
    1 処方せんを交付する場合
      イ 初診時 550点 → 560点
      ロ 再診時 370点 → 380点
    2 1以外の場合
      イ 初診時 660点 → 670点
      ロ 再診時 480点 → 490点

以上、今回は紙面お都合上、基本項目にあわせ代表的な評価項目を載せました。
次回は、いくつかの診療科に絞ってポイントをまとめてみます。

大きく変わる老人医療制度―老人保健制度から高齢者医療保険制度へ―

医療業界の基礎知識(22)

医療業界の基礎知識 Vol.22は、2008年4月からスタートする、、現行の老人保健制度に変わる新たな「後期高齢者医療保険制度」について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

2008年4月から、現行の老人保健制度に変わる新たな「後期高齢者医療保険制度」がスタートします。今回はこの「後期高齢者医療保険制度」を理解するための、いくつかのポイントをまとめてみました。
この後期高齢者医療保険制度は、2005年12月に政府・与党改革協議会が策定した 「医療制度改革大綱」を受けて医療制度改革関連法案としてまとめられ、2006年の第164通常国会で6月14日に可決・成立したことから、後期高齢者医療制度の2008年度4月創設が決定、あわせて、現行の老人保健制度が廃止されることになったものです

後期高齢者医療制度

「後期高齢者医療制度」の基本は下図のとおりです。

医療費適正化のための地域における取組と保険者の再編・統合

後期高齢者医療制度

高齢者医療保険制度と「医療費適正化計画」

この制度の最大のポイントは、厳しい国家財政の中で伸びが顕著な社会保障財政の見直し、特に医療費の適正化にあります。
医療費には地域格差があり、その要因には、その地域の年齢構成などが考えられますが、人口当たり病床数が多く、平均在院日数が長いほど1人当たりの総医療費や老人医療費が高くなる傾向が見受けられます。そのため、地域の医療サービスが需要に見合った適正なものかどうか、よく検証し、見直すことが必要です。現行の老人保健制度には老人医療費の負担を現役世代に割り振る財政調整の仕組みしかなく、増え続ける老人医療費を「誰が適正化するのか」があいまいでした。
この点を踏まえ、国が定めた「医療費適正化基本方針」に基づき、都道府県が地域の実情に応じた「医療費適正化計画」を定め、計画に掲げる目標の達成状況および施策の実施状況に関する評価が行われることになっています。つまり、医療費適正化の責任主体が都道府県にあることが明確化されたわけです。

また、医療費適正化の実効性を高めるため、都道府県ごとの医療費格差が保険料率に跳ね返ってくる仕組みが採り入れられています。たとえば、現行の政管健保の保険料率は、40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者に該当する場合が94.3‰(うち、介護保険料率12.3‰)、該当しない場合が82‰と一律に設定されていましたが、2008年10月からは都道府県別の医療給付費等をベースに年齢調整と所得調整が行われた調整後保険料率に老健拠出金等を加えたものが最終的な保険料率になります。
そのため、医療の地域特性を調査・分析、そしてベンチマークすることで、①生活習慣病対策の推進、②医療機能の分化・連携の推進、③平均在院日数の短縮、④在宅医療および居宅系サービスの推進など地域にあった医療費適正化策が推し進められるようになります。

2008年度を初年度とする医療費適正化計画(5カ年計画)は都道府県が策定しますが、その実績評価次第では都道府県ごとの特例的な診療報酬の設定(たとえば1点単価の引下げ)も認められています。

高齢者医療保険制度と「医療費適正化計画」

後期高齢者医療制度の仕組

現行の老人保健制度では、後期高齢者がサラリーマンの扶養家族になっている場合、保険料を支払わなくて済みますが、新制度では加入者全員が保険料を支払うことになります。財源には、後期高齢者の保険料(1割)、現役世代(国保・被用者保険)からの支援(約4割)、公費(約5割)が充てられ、財政運営は都道府県単位で全市町村が加入する広域連合が担当します。したがって保険料も広域連合が決めることになっています。

◎都道府県によって大きな差がある保険料

厚生労働省は、算定中の岐阜県を除く11月26日現在の保険料設定状況をまとめ公表しました(別表参照)。それによると、1人当たり保険料の平均額は、神奈川県と東京都が年間9万円超になる一方、宮城県を除く東北4県では4万円台になることがわかりました。最も高い神奈川県の9万2750円と最も低い青森県の4万6374円とでは、2倍(差額は4万6376円)の格差があります(別表1参照)。
地域の所得差に影響されない平均的な厚生年金(年額201万円)受給者の保険料額で比較すると、福岡県の8万5100円が最高額となり、次いで高知県の8万1500円、香川県の8万1300円などが高くなっています。最低額は長野県の6万円で、岩手県の6万400円や静岡県の6万1600円が低額に設定されています(別表1参照)。
なお、保険料額は都道府県広域連合ごとの条例の制定によって正式に決まりますが、11月26日時点で制定済みなのは、33広域連合にとどまっています。

後期高齢者医療条例の制定状況(11月26日現在)

◎制定済み 33広域連合
11/2  長崎県
11/13 群馬県、千葉県
11/16 神奈川県、福井県、岐阜県、鳥取県、徳島県
11/19 岩手県、宮城県、熊本県、大分県
11/20 東京都、富山県、愛知県、和歌山県
11/21 埼玉県
11/22 北海道、福島県、山梨県、大阪府、岡山県、福岡県、宮崎県
11/23 静岡県
11/26 秋田県、石川県、三重県、滋賀県、兵庫県、奈良県、香川県、佐賀県

◎議案発送済み 14広域連合
青森県、山形県、茨城県、栃木県、新潟県、長野県、京都府、島根県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、鹿児島県、沖縄県

後期高齢者医療制度の運営の仕組

後期高齢者医療制度の運営の仕組

後期高齢者医療制度の概要

後期高齢者医療制度の概要

◎保険料および自己負担額を凍結

2008年度の実施にあたって与党は、この保険料および自己負担限度額の増加について当分の間、凍結することを決定し、下記のようにまとめ政府に提出しました。
⇒ 凍結部分は別表2参照

高齢者医療の負担のあり方について

平成19年10月30日 与党高齢者医療制度に関するプロジェクトチーム

今後、高齢化に伴い医療費の一層の増大が見込まれる中、国民皆保険制度を将来にわたり持続可能なものとするため、負担能力を勘案しつつ、現役世代と高齢者でともに支え合う高齢者医療制度が設けられることとなった。
今般の連立政権合意において、構造改革路線の継続と、セーフティネットの整備、負担増・格差の緩和など国民生活に重きを置いた方向の政策が必要との認識に立って、高齢者医療制度の負担のあり方について早急に検討することとされた。
これを受け、具体的な措置を検討するため、本プロジェクトチームにおいて精力的に議論を重ねた結果、本制度を円滑に施行するため、高齢者の置かれている状況に配慮し、激変緩和を図りつつ進めるべきとの結論を得た。
こうした考え方の下、平成20年度において講ずる措置につき、次のとおりとりまとめた。なお、政府においては、上記趣旨につき広く国民に周知を図るよう努めるべきである。

1 70歳から74歳の医療費自己負担増(1割→2割)を、平成20年4月から平成21年3月までの1年間凍結する。保険給付は8割とし、この措置に係る財源については国が負担する。

2 後期高齢者医療制度で新たに保険料を負担することとなる者(被用者保険の被扶養者)の保険料負担については、制度加入時から2年間の軽減措置を講ずることとしているが、さらに、平成20年4月から9月までの6ヶ月間これを凍結し、10月から平成21年3月までの6ヶ月間9割軽減する。この措置に係る財源については国が負担する。

3 以上の予算措置については、1及び2に対応するための保険者・地方自治体のシステム改修経費等の取扱いや概算要求基準との関係を含め、予算編成過程で検討し、適切に対処する。

なお、平成21年4月以降の高齢者医療制度については、世代間・世代内の公平、制度の持続可能性の確保や財政健全化との整合性の観点も踏まえつつ、給付と負担のあり方も含めて、本プロジェクトチームで引き続き検討する。

まとめ

後期高齢者医療制度の導入は、結果として医療機関はもとより医薬品メーカーや卸の経営に大きな影響を与えます。
昨年11月28日の中医協・診療報酬基本問題小委員会で、外来主治医による後期高齢者の継続的な医学管理への評価などについて、具体案を示しています。
今回は紙面の都合で制度についての概要を解説しましたが、診療報酬については1月下旬までにより具体化した内容が新聞等で公表されます。先ず、高齢者医療制度の仕組みを十分に理解し、これから発表される診療報酬点数等の運営内容や情報を活用できる下地として活用してください。

【別表】

1.後期高齢者医療保険料の設定状況(11月26日現在)→ファイルをダウンロード※PDF

2.後期高齢者医療制度の凍結部分
後期高齢者医療制度の凍結部分1

後期高齢者医療制度の凍結部分2

08年度診療報酬改定は「マイナス改定を行う状況にない」とする意見書を提出

医療業界の基礎知識(21)

医療業界の基礎知識 Vol.21は、11月28日に中医協・総会で提出された、08年度診療報酬改定に関する「本体部分については更なるマイナス改定を行う状況にはない」とする意見書について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

2008年度の診療報酬改定は「マイナス改定を行う状況にない」とする意見書を提出

中医協・総会は11月28日、08年度診療報酬改定に関して「本体部分については更なるマイナス改定を行う状況にはない」とする意見書を「平成20年度診療報酬改定について」としてまとめ、舛添厚労大臣に提出しました。
意見書は、9月19日の中医協・総会で提示された「10月、11月の検討項目」に沿って議論を重ねてきた内容をまとめたもので、当初、多くの意見として出されていたマイナス改定意見から、「引上げ環境にない」としながらもマイナス意見を主張しなかった健保連に代表される意見に集約されています。
そのほか、診療側と支払側の意見が一致した点として、質の高い医療を効率的に提供する医療提供体制の構築と国民皆保険制度の堅持、勤務医対策、後発医薬品の使用促進等が上げられています。ただ、これらの課題に対する取り組み方は、診療側が大幅な引き上げを求めているのに対して、支払側は資源配分の歪みやムダの是正による範囲内で行うべきとしており、意見書には両論が併記されました。

中医協が提出した意見者の全文は下記のとおりです。

平成20年度診療報酬改定について

平成19年11月28日
中央社会保険医療協議会

本協議会は、平成19年10月26日の調査実施小委員会並びに同月31日、11月14日、21日及び28日の総会の計5回にわたり、医療経済実態調査の結果、平成18年度診療報酬改定以降の賃金・物価の動向、薬価調査及び材料価格調査の結果等を踏まえつつ、平成20年度診療報酬改定について審議を行ってきたところであるが、その結果を下記の通り整理したので、報告する。

1 医療経済実態調査の結果について
 ◎ 本協議会は、医業経営の実態等を明らかにし、診療報酬に関する基礎資料を整備することを目的として、第16回医療経済実態調査を実施し、その結果等について検討した。

2 平成18年度診療報酬改定以降の賃金・物価の動向について
 ◎ 平成18年度診療報酬改定以降の平成18年度から平成19年度までの2年間における賃金・物価の動向を見ると、人事院勧告による賃金の動向は+0.7%、消費者物価指数による物価の動向は、本年度分について、政府経済見通し(平成19年1月25日間議決定)を用いた場合+0.7%、本年9月までの消費者物価指数の実績を用いた場合+0.1%であった。

3 薬価調査及び材料価格調査の結果について
 ◎ 薬価調査の速報値として、薬価の平均乖離率は約6.5%であったことが、また、材料価格調査の速報値として、特定保険医療材料価格の平均乖離率は約8.9%であったことが、それぞれ報告された。

4 平成20年度診療報酬改定について
 ◎ 我が国が厳しい財政状況にある中で、国民が安心できる生活環境を整えるためには、地域医療の確保を含め質の高い医療を効率的に提供する医療提供体制の構築と将来にわたる国民皆保険制度の堅持が不可欠であること、現下の勤務医の過酷な業務実態、とりわけ産科・小児科や救急医療等の実情等に照らして、次期診療報酬改定においては勤務医対策を重点課題として診療報酬の評価を行うべきであり、また、本体部分については更なるマイナス改定を行う状況にはないこと、一方、後発医薬品の使用促進を着実に推進すること、という基本的認識については、意見の一致を見た。

 ◎ しかし、このような基本認識の下で、どのように平成20年度診療報酬改定に臨むべきであるか、については、次のような意見の食い違いがあった。すなわち、上述の課題について、支払側は、医療における資源配分の歪みやムダの是正による範囲内で行うべきとの意見であったのに対して、診療側は、地域医療を守るために診療報酬の大幅な引上げの実現を行うべきとの意見であった。

 ◎ 本協議会としては、厚生労働省が、平成20年度予算編成に当たって、財源の確保に努めつつ、平成20年度診療報酬改定に係る改定率の設定について、本意見の趣旨を十分に踏まえて対応することを求めるものである。あわせて、本意見の趣旨に照らして、診療報酬のみならず、幅広い医療施策を講ずることを望むものである。

平成20年度診療報酬改定に係る基本的考え方

こうした流れの中で11月29日、医療部会は厚労省が修正を加えた「平成20年度診療報酬改定の基本方針(案)」をおおむね了承しました。
特に11月22日の部会で「前回の方向性や視点を継承するということは、マイナス改定も継承するのか」と強く反発が出された前文は、方向性や視点を『基本的に継承しつつ、現状を十分に認識して対応するべき』と改められました。また、多数の委員から「地域医療の崩壊を明らかにすべき」と意見が上がったことから、「産科や小児科をはじめとする医師不足により、地域で必要な医療が受けられないとの不安が国民にある」などと大幅に加筆されています。
あわせて、診療所・病院の役割分担について、当初の案で「開業時間の夜間への延長」とされていた部分は「夜間開業の評価の在り方」に修正し、”延長”ではなく”夜間開業の評価”であることを明確化しました。

これまで厚労省は、初再診料を引き下げた分で夜間に加算する方針を示していましたが、「勤務医の負担軽減につながる夜間の診療のみ着目して評価を考えている。夜間の加算と初再診料を関連して点数を動かすことは考えていない」と方針転換しています。

医療部会での議論が終了したことから、医療保険部会であがった意見も勘案して最終的な文言修正を行い、両部会連名で中医協に提出することになっています。
今回まとめられた基本的考え方のポイントは下記のとおりです。

「平成20年度診療報酬改定に係る基本的考え方」の主なポイント

(1) 国民の健康・長寿という人間にとって一番大事な価値を実現するためには、国民の安心の基盤として、質の高い医療を効率的に提供する医療提供体制の構築と、将来にわたる国民皆保険制度の堅持とが不可欠であり、そのための不断の取組が求められる。

(2) したがって、今回改定においても、前回改定に際して当部会が策定した「平成18年度診療報酬改定の基本方針」(平成17年11月)に示した「基本的な医療政策の方向性」、「4つの視点」等を基本的に継承しつつ、以下の現状を十分に認識して対応するべきである。

(3) すなわち、現在、産科や小児科をはじめとする医師不足により、地域で必要な医療が受けられないとの不安が国民にある。医療は地域生活に欠くべからざるものであり、誰もが安心・納得して地域で必要な医療を受けられるよう、また、地域の医療に従事する方々が働きがいのある医療現場を作っていけるよう、万全を期す必要がある。

(4) 平成20年度診療報酬改定においては、保険財政の状況、物価・賃金等のマクロの経済指標の動向、全国の医療機関の収支状況等を踏まえつつ、基本的な医療政策の方向性や地域医療を巡る厳しい現状を十分に認識した上で行う必要がある。具体的には、地域医療の現状を踏まえ、医師確保対策として、産科や小児科をはじめとする病院勤務医の負担軽減を重点的に図ることについて、今回診療報酬改定における全体を通じた緊急課題として位置付けるべきである。

◎ 今回改定の基本方針(緊急課題と4つの視点から)の全文は紙面の都合で略しています。厚労省のホームページ等で確認してください。

2008年度診療報酬改定に向けた審議動向と今後の環境変化

医療業界の基礎知識(20)

前号までの2回に分けて、2008年度診療報酬改定に向けた検討スケジュールを記しました。医療業界の基礎知識 Vol.20は、今回は10月の審議状況の概要について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

2008年度診療報酬改定に向けた審議動向と今後の環境変化

前号で記したとおり10月の中医協基本問題小委員会の審議は、水曜日午前及び金曜日午前を定例日として、ほぼ予定通り週2回の開催で進められています。

◎ 10月度の月別検討課題項目は

 ・ 入院医療に係る評価の在り方について
 ・ 産科医療、小児医療、救急医療に係る評価の在り方について
 ・ がん対策の推進について
 ・ 心の問題への対応
 ・ 後期高齢者医療の診療報酬について
 ・ 後発医薬品使用促進のための環境整備について
 ・ 患者の視点の重視について
 ・ 訪問看護に係る評価の在り方について
 ・ 検査・処置等の医療技術に係る評価の在り方について

等で、10月22日現在、代表的な事項として次のような審議がなされています。

◆産科医療について
 1.ハイリスク分娩管理加算の対象拡大を図るべきではないか
 2.緊急の母体搬送の受入れが円滑に行われるよう、診療報酬で評価すべきでは
 3.緊急医師確保対策(女性医師バンク等)
 4.NICU(新生児集中治療室管理)の評価見直し

◆がん対策
 1.放射線・化学療法の施設整備と技術評価(必要な人材の適切な評価)など

◆緩和ケア
 1.計画的な医学管理を継続して行うための療養上の指導評価など

◆ がん診療連携拠点病院
1.機能強化の適切な評価と指定要件緩和の検討

◆2006年度診療報酬改定の結果検証(2007年度特別調査)の資料検討
 1.セカンドオピニオン外来実施医療機関の利用状況調査 結果概要(速報)
 2.生活習慣病管理料算定保険医療機関における患者状況調査 結果概要(速報)
 3.地域連携診療計画管理料算定保険医療機関における連携体制等の状況調査 結果概要(速報)
  ※地域連携パスは今後重要なファクター。拡大すべきではないか
 4.紹介率要件の廃止に伴う保険医療機関への影響調査 結果概要(速報)
 5.医療安全管理対策の実施状況調査 結果概要(速報)
 6.褥瘡管理対策の実施状況調査 結果概要(速報)
 7.透析医療に係る改定の影響調査 結果概要(速報)
 8.ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査結果概要(速報)

◆2007年度薬価本調査及び特定保険医療材料価格調査の実施について

◆2006年度診療報酬改定の結果検証資料

◆後期高齢者医療について
※後期高齢者の入院は
①退院後の生活を見越した計画的な入院医療:情報共有を評価、「退院支援計画」の作成を評価
②入院中の評価とその結果の共有:退院時共同指導で歯科医と薬剤師を評価、入院中の薬剤関連情報の提供を評価
③退院前後の支援:退院後に主治医が引き続き外来で診た場合を評価、訪問看護ステーションの退院当日の支援を評価

 上記①~③を基本に検討

※後期高齢者の外来は主治医の3つの役割
①病歴、受診歴、服薬状況、他の医療機関の受診状況などを集約して把握する
②日常生活能力や認知機能、意欲などについて総合的な評価を行い、療養や生活指導で活用する
③専門的な治療が必要な場合には適切な医療機関を紹介し、治療内容を共有する
上記①~③を基本に検討

◆ 後発医薬品使用促進のための環境整備について(検討内容)
 ① 銘柄処方⇒一般名処方にする
 ② 処方せん様式を変更して、GEに変更不可のものを指定する方法にする
 ③・GEの調剤が進むように調剤報酬にインセンティブ
   ・GEの銘柄指定の処方せんを受け付けた薬剤師は、疑義照会なしで別のGEに変更OKにする
 ④ 剤形が違うGEに変更可能にする(先発品Aの口腔内崩壊錠→後発品Bの普通錠)
 ⑤ 初めてGEに変更する患者に”お試し期間”(分割調剤)
 ⑥ 薬局でのGEの調剤促進の仕組み及び医師のGE処方を促す仕組みを検討する
 ⑦ その他、検討すべきこと

◆ 患者の視点の重視について
 1.患者の視点の重視について(明細書等)
  ●大病院に明細書発行を義務付ける方向へ
 2.医療安全対策に係る評価について
 3.医療安全管理対策の実施状況調査 結果概要(速報)
 
◆ 救急医療について
 1.ドクターヘリについて
 2.脳卒中発症早期の対応(検討議題)
  ① t-PA投与できる施設の評価
  ② 脳卒中では、脳梗塞か脳出血かの見極めが重要⇒そのための24時間体制が必要
   ●脳卒中学会の下記基準を参考にしながら、診療報酬として基準を決める必要がある
・CT・MRI検査が24時間可能
・集中治療のため十分な人員を中心とするストロークチームおよびSCUまたはそれに準ずる設備がある事
・脳内出血などの不慮の事故に際し、脳神経外科的処置が迅速に行える体制
・急性期脳梗塞(発症後24時間以内)治療の経験が十分(例えば年間50例以上)あること

◆ 心の問題(医療課が提示した論点)
 ① 内科を受診したうつ病患者を精神科医に紹介することを評価する
 ② 救急に搬送された自殺企図者に対し、精神科医が精神症状を診断・治療することを評価(再度の防止)
 ③ 子どもの患者については診療時間に応じて評価する(加算)
 ④ 子どもの場合は、通院精神療法の算定期間(現行は6月)を延長する
 ⑤ 児童・思春期精神科入院医療管理加算の算定数(H18年:9施設)を増やす

今迄に以上のような審議が進められていますが、11月は、より多くの項目で具体的な審議が行われる予定になっています。次回は、11月の審議動向と医療制度改革によって予想される環境変化についてまとめる予定です。

2008年度診療報酬改定に向けた検討スケジュールの概要

医療業界の基礎知識(19)

医療業界の基礎知識 Vol.19は、2008年度診療報酬改定に向けた検討スケジュールの概要について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が医療業界が初めての方でも分かりやすく、データを元にご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

2008年度診療報酬改定に向けた検討スケジュールの概要

2008年度の診療報酬改定に向けて中医協の審議が本格化してきました。前号で述べたように8月に検討項目(案)がまとめられ、夏休み後の8月29日に開催された中医協で再度提出され、9月から具体的な議論がなされています。
こうした中で厚労省は次期改定に向けて10月及び11月に議論する検討項目をまとめ、9月19日の中医協・総会に提示しました。
今回は、審議の中から「2008年度改定に向けた検討スケジュール」の月別基本項目について、事務局から提出された資料の項目についてまとめてみました。

2008年度改定に向けた検討スケジュール

◎基本的な考え方

■2008年度診療報酬改定に向けて、本年秋以降、社会保障審議会の医療保険部会及び医療部会において、診療報酬改定に係る基本方針について審議が行われ、取りまとめられる予定。

■中医協は、年明け以降、厚生労働大臣から、予算編成過程を通じて内閣が決定した改定率を所与の前提として、社会保障審議会において策定された基本方針に基づき、診療報酬点数の改定案の調査・審議を行うよう諮問を受けてから、具体的な診療報酬点数の設定に係る調査・審議を行うこととなる。

■一方で、中医協においても、2008年度診療報酬改定を視野に入れ、本年秋より、以下のような項目・スケジュールを一つの目安として、基本問題小委員会において調査・審議を行うこととしてはどうか。このため、当面、水曜日午前及び金曜日午前を定例日として、週2回程度の開催としてはどうか。

◎月別検討課題

10月

  • 入院医療に係る評価の在り方について
  • 産科医療、小児医療、救急医療に係る評価の在り方について
  • がん対策の推進について
  • 心の問題への対応
  • 後期高齢者医療の診療報酬について
  • 後発医薬品使用促進のための環境整備について
  • 患者の視点の重視について
  • 訪問看護に係る評価の在り方について
  • 検査・処置等の医療技術に係る評価の在り方について  等

11月

  • 勤務医の負担軽減策について
  • 初診料・再診料の体系等の外来医療に係る評価の在り方について
  • 地域における医療機関の機能分化及び連携の推進について
  • 有床診療所に係る評価の在り方
  • リハビリテーションに係る評価の在り方について
  • 歯科診療報酬の見直しについて
  • 調剤報酬の見直しについて
  • 手術、麻酔、病理等の医療技術に係る評価の在り方について
  • DPCの在り方について
  • 精神医療に係る評価の在り方について  等

(注1)上記検討項目は、検討のスケジュールの目安とするために記載したものであり、網羅的なものではない。中医協における議論を踏まえ、適宜追加していくことを前提としている。
(注2)上記検討項目の審議時期として記載されている月は、当該項目に係る審議を開始する月の目安を意味している。また、中医協における議論の状況を踏ま
え、必要に応じて複数回審議を行うことを前提としている。
(注3)なお、薬価制度の見直しについては薬価専門部会、保険医療材料価格制度の見直しについては保険医療材料専門部会において調査審議を行うこととしている。

 改定率等は年末の予算編成過程を通じて内閣が決めることになっていますが、安倍内閣の総辞職に伴う福田内閣による新政権の発足が9月末になったこともあり、国会審議の遅れや衆参ねじれ国会などによる課題山積がこれからの社会保障予算にどのような影響を与えるか、2008年度の中医協の診療報酬改定審議の動向を見つめる必要があります。

社会保障予算の基本的な考え方と診療報酬改定に向けた検討項目例

医療業界の基礎知識(18)

医療業界の基礎知識 Vol.18は、平成20年度予算における社会保障経費概算要求の基本方針と、平成20年度診療報酬改定に向けた検討項目例(議論のためのたたき台)の概要について、そのポイントをまとめてみました。ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

平成20年度予算における社会保障経費概算要求の基本方針と、平成20年度診療報酬改定に向けた検討項目例(議論のためのたたき台)の概要

政府の経済財政諮問会議は9日、一般歳出の上限を47兆3000億円とする2008年度の概算要求基準(シーリング)を了承し、10日に政府与党及び閣議の了解を得ました。
その内、医療費に最も影響を与える社会保障経費予算は、先の6月19日に「骨太方針2007」として政府決定が図られた「高齢化に伴う自然増分のうち2,200億円を抑制する」方針をベースに、全体で5,300億円を増額することになっています。
シーリングでまとめられた社会保障予算の基本的な考え方は次のとおりです。

◆ 年金・医療等に係る経費

補充費途として指定されている経費等のうち、年金、医療等に係る経費(以下「年金・医療等に係る経費」という)については、高齢化等に伴う増加等から各般にわたる制度・施策の見直しによる削減・合理化を図り、その増(各所管計 5,300 億円)を前年度当初予算における年金・医療等に係る経費に相当する額に加算した額の範囲内において、各所管ごとに、要求する。

また、次期診療報酬改定に向けた本格的な議論が8月8日の中医協からスタートしました。厚労省が同日の中医協・総会に提示した検討項目例では、勤務医の負担軽減が最初に挙げられているほか、医師不足が深刻化している救急医療や産科医療、小児医療等を重点的に評価する方針が明確に示されています。
こうした中で委員からは、「勤務医対策と救急医療等の評価は一緒に議論すべき」など、地域医療の視点から総合的な検討を行う必要性が相次いで指摘されました。
当日、厚労省から「平成20年度診療報酬改定に向けた検討項目例(案)」(議論のためのたたき台)として提示された項目は次のとおりです。

◆ 審議の基本

平成20年度診療報酬改定に向けた検討については、今後社会保障審議会においてとりまとめられる基本方針や内閣において決定される改定率を踏まえて行われることとなるが、一定の地域や産科・小児科などの診療科において必要な医師が確保できず、医療の提供や患者の受療に支障が生じている状況もある中で、地域医療の確保・充実に特に配慮を行うとともに、具体的な検討項目例としては、以下としてはどうか。
また、新たに創設される後期高齢者医療制度の検討については、外来・入院・在宅といった場面に応じた医療の在り方について社会保障審議会で行われている検討を踏まえて進めることとする。

◆ 平成20年度診療報酬改定に向けた検討項目例(案)・議論のためのたたき台

1 より良い医療の提供を目指すための評価
 ① 医療の実情を踏まえた視点からの検討
  ア 勤務医の負担軽減のための方策
  イ 救急医療、産科医療、小児医療等の重点的な評価
 ② 医療機関・薬局の機能を踏まえた視点からの検討
  ア 初診料・再診料体系等の外来医療の評価の在り方の検討
  イ 入院医療の評価の在り方の検討
 ③ 個別の医療施策を推進する視点からの検討
  ア がん対策を推進するための評価の検討
  イ 心の問題等への対応と適正な評価の検討

2 患者の視点の重視
 ○ 安心・納得できる医療の評価の検討

3 医療技術の適正な評価
 ① 真の医療ニーズに沿った医療の評価
 ② 医療技術の評価・再評価
 ③ 医療の質の評価

4 革新的新薬・医療機器等イノベーションの適切な評価と後発品の使用促進

5 上記以外の重要項目
 ① 歯科診療の特性を踏まえた適正な評価の検討
 ② DPCの在り方の検討
 ③ 診療報酬改定結果検証を踏まえた検討
 ④ その他

以上のような項目を中心に、これから中医協が開催される都度、細部の審議が進められ、公表されることになっています。あわせて、当日の中医協・総会で示された「2008年度診療報酬改定に向けた今後のスケジュール」は、次のとおりです。

2008年度診療報酬改定に向けた今後のスケジュール

患者等への医療に関する情報提供の推進を図るために:その2

医療業界の基礎知識(17)

医療業界の基礎知識 Vol.17は、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告しうる事項及び広告適正化のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)」のうち、今回は禁止される広告について、そのポイントをまとめてみました。ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

患者等への医療に関する情報提供の推進を図るために:その2-禁止の対象となる広告の内容-

1 禁止の対象となる広告の内容

医療法第6条の5第1項には「法又は広告告示により広告が可能とされた事項以外は、文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も広告をしてはならない」と規定されています。また、広告可能な事項を広告する場合においても、同条第3項の規定により、患者等に著しく事実に相違する情報を与え、適切な受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けさせるおそれがあることから、内容が虚偽にわたる広告は、罰則付きで禁じられています。
同様に、同条第4項の規定により、患者等に対して医療に関する適切な選択に関し必要な基準として、省令で広告の方法及び内容に関する基準が定められ、いわゆる比較広告、誇大広告の他、客観的事実であることを証明できない内容の広告、公序良俗に反する内容の広告が禁止され、当該基準に適合しなければならないこととされています。

(1)広告が可能とされていない事項の広告

医療に関する広告は、法又は広告告示により広告可能とされた事項を除いては、広告が禁じられており、次のような事例が示されています。

(例)
・専門外来
→ 専門外来については、標榜診療科名と誤認を与える事項であり、広告可能な事項ではない。(ただし、保険診療や健康診査等の広告可能な範囲であれば、例えば、「糖尿病」、「花粉症」、「乳腺検査」等の特定の治療や検査を外来の患者に実施する旨の広告は可能であり、専門外来に相当する内容を一律に禁止するものではない。)

・死亡率、術後生存率等
→ 医療の提供の結果としては、医療機能情報提供制度において報告が義務付けられた事項以外は、対象となった患者の状態等による影響も大きく、適切な選択に資する情報であるとの評価がなされる段階にはないことから、広告可能な事項ではない。

・未承認医薬品(海外の医薬品やいわゆる健康食品等)による治療の内容
→ 治療の方法については、広告告示で認められた保険診療で可能なものや薬事法で承認された医薬品による治療等に限定されており、未承認医薬品による治療は、広告可能な事項ではない。

・著名人も当院で治療を受けております
→ 優良誤認(他の医療機関より著しく優れているとの誤認)を与えるおそれがあり、芸能人等が受診している旨は、事実であっても、広告可能な事項ではない。

(2)内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)

広告に示された内容が虚偽である場合、患者等に著しく事実に相違する情報を与え、適切な受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けるおそれがあることから、罰則付きで禁じられている事例。

(例)
・絶対安全な手術です!
→ 絶対安全な手術は、医学上あり得ないので、虚偽広告として扱うこと。

・厚生労働省の認可した○○専門医
→ 専門医の資格認定は学会が実施するものであり、厚生労働省が認可した資格ではない。

(3)他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較広告)

特定又は不特定の他の医療機関と自ら(複数の場合を含む)を比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を広告することを意味するものであり、医療に関する広告としては認められないことになっています。
これは、事実であったとしても、優秀性について、著しく誤認を与える恐れがあるために禁止されるものであり、例えば、「日本一」「No.1」「最高」等の表現は、客観的な事実であったとしても、禁止される表現に該当します。

(例)
・肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。
・当院は県内一の医師数を誇ります。
・本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。

(4)誇大な広告(誇大広告)

「誇大な広告」とは、必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告を意味するものであり、医療に関する広告としては認められていません。
「人を誤認させる」とは、一般人が広告内容から認識する「印象」や「期待感」と実際の内容に相違があることを常識的判断として言えれば足り、誤認することを証明したり、実際に誤認したという結果までは必要としません。

(例)
・知事の許可を取得した病院です!(「許可」を強調表示する事例)
→ 病院が都道府県知事の許可を得て開設することは、法における義務であり当然のことであるが、知事の許可を得たことをことさらに強調し、あたかも特別な許可を得た病院であるかの誤認を与える場合には、誇大広告として扱う。

・医師数○名(〇年〇月現在)
→ 示された年月の時点では、常勤換算で○名であることが事実であったが、その後の状況の変化により医師数が大きく減少した場合には、誇大広告として扱う。

・(美容外科の自由診療の際の費用として)顔面の○○術 1カ所〇〇円
→ 例えば、当該費用について、大きく表示された値段は5カ所以上同時に実施したときの費用であり、1カ所のみの場合等には、倍近い費用がかかる場合等、小さな文字で注釈が付されていたとしても、当該広告物からは注釈を見落とすものと常識的判断から認識できる場合には、誇大広告として扱う。

(5)客観的事実であることを証明することができない内容の広告

これは、広告する内容が客観性・正確性をもったものであることを、広告を実施する者が自ら証明する必要があることも意味しており、患者等から質問がなされた場合には、その内容が事実であることを説明できなければなりません。

(例)
・患者の体験談の紹介
→ 患者の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、患者の主観であり、広告は認められない。

・理想的な医療提供環境です。
→ 「理想的」であるかは客観的な証明はできないことから、広告は認められない。

・比較的安全な手術です。
→ 何と比較して安全であるか不明であり、客観的な事実と証明できない事項。

・伝聞や科学的根拠に乏しい情報の引用
→ 医学的・科学的な根拠に乏しい文献やテレビの健康番組での紹介による治療や生活改善法等の紹介は、それらだけをもっては客観的な事実であるとは証明できない事項として扱うべきであり、広告は認められない。

(6)公序良俗に反する内容の広告

わいせつ若しくは残虐な図画や映像又は差別を助長する表現等を使用した広告など、公序良俗に反する内容の広告は、医療に関する広告としては認められません。

(7)その他

品位を損ねる内容の広告、他法令又は他法令に関連する広告ガイドラインで禁止される内容の広告は、医療に関する広告として適切ではなく、厳に慎むべきものです。

ア 品位を損ねる内容の広告
医療に関する広告は、患者や地域住民等が広告内容を適切に理解し、治療等の選択に資するよう、客観的で正確な情報の伝達に努めなければならないものであることから、医療機関や医療の内容について品位を損ねる、あるいはそのおそれがある広告は、行わないものとすること。

①費用を強調した広告 (例)今なら〇円でキャンペーン実施中!
②ふざけたもの、ドタバタ的な表現による広告

イ 他法令又は他法令に関する広告ガイドラインで禁止される内容の広告
 他法令に抵触する広告を行わないことは当然として、他法令に関する広告ガイドラインも遵守すること。また、広告は通常、医療機関が自らの意思により、患者等の選択に資するために実施するものであり、例えば、医薬品又は医療機器の販売会社等からの依頼により、金銭の授与等の便宜を受けて、特定の疾病を治療できる旨等について広告することは、厳に慎むべきである。

(例)
・医薬品「○○錠」を処方できます。
→ 医薬品の商品名は、薬事法の広告規制の趣旨に鑑み、広告を行わないこと。

・当院ではジェネリック医薬品を採用しております。
→ 医薬品が特定されないため、薬事法上の医薬品の広告には該当せず、医療の内容に関する事項として広告可能である。

・ED治療薬を取り扱っております。
→ 医薬品が特定されないため、自由診療である旨と標準的な費用を併せて示してあれば、薬事法の承認を得た医薬品による治療の内容に関する事項として広告可能である。

以上、2回にわたって「医療広告ガイドライン」のポイントを記しました。
厚生労働省が示した「ガイドライン」のボリュームはこの5倍以上もあり、ここでは筆者なりにまとめた、あくまでも要約した内容に過ぎません。「もっと細部まで具体的に」知りたい方は、ガイドラインの本文をお読みください。
なお、参考までに「患者等への情報提供」について、その全体像の基本を下図で示しました。

患者等への情報提供

「患者等への情報提供」全体像の基本

患者等への医療に関する情報提供の推進を図るために

医療業界の基礎知識(16)

医療業界の基礎知識 Vol.16は、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告しうる事項及び広告適正化のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)」のポイントを、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

患者等への医療に関する情報提供の推進を図るために-広告規制の見直しによる広告可能な事項の拡大-

第5次改正医療法が施行され2ヶ月が経過しました。今回の改正は「過去、最大の改正」と言われているように、数多くの重要項目があります。特に「患者等への医療に関する情報提供の推進を図るために」として施行された広告規制の見直しは、都道府県を通じた情報公表制度の確立を通して、住民の誰でもが「安全、安心、迅速」な医療を選択できるようにすることを目的としています。
その基本は、都道府県ごとに、日常医療圏内の医療機能、患者の疾病動向を把握した上で、診療ネットワークを構築することとし、同時に医療機関の管理者に対しては、

  1. 管理・運営及びサービスやアメニティー等の体制に関する事項
  2. 情報提供や医療連携体制に関する事項
  3. 医療の内容や実績・結果に関する事項

などの「一定の情報」を都道府県に報告することが義務付けられ、あわせてこの医療機能に関する情報は、都道府県の”お墨付き情報”として地域住民や他の医療機関に公表されるようになっています(下図参照)。

医療機能情報の公表制度の創設(医療法・薬事法)

厚生労働省は、医療機能情報公表制度の施行にあたり「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告しうる事項及び広告適正化のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)」をまとめ、都道府県を通じ公表しています。今回は、この「医療広告ガイドライン」について、そのポイントをまとめてみました。

医療機能情報公表制度に基づく「医療広告ガイドライン」のポイント

Ⅰ-1 広告規制の基本的な考え方

医療に関する広告は、患者等の利用者保護の観点から、次のような考え方に基づき限定的に認められた事項以外は、原則として広告が禁止されている。

  1. 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと。
  2. 医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。

今回の広告規制の見直しに当たっては、こうした基本的な考え方は引き続き堅持しつつも、患者等に正確な情報が提供されその選択を支援する観点から、客観性・正確性を確保し得る事項については、広告事項としてできる限り幅広く認めることとした。

Ⅰ-2 禁止される広告の基本的な考え方

(ⅰ)比較広告
(ⅱ)誇大広告
(ⅲ)広告を行う者が客観的事実であることを証明できない内容の広告
(ⅳ)公序良俗に反する内容の広告

さらに、医療法施行規則の他に、薬事法等の他法令やそれら法令に関連する広告の指針に抵触する内容について広告しないことは当然のことであり、それらの他法令等による広告規制の趣旨に反する広告についても、行わないこととする。

Ⅱ 広告規制の対象範囲

Ⅱ-1 広告の定義

医療に関する広告の該当性については、次の①~③のいずれの要件も満たす場合に、広告に該当するものと判断される。

  1. 患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
  2. 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
  3. 一般人が認知できる状態にあること(認知性)

なお、①でいう「誘因性」は、広告に該当するか否かを判断する情報物の客体の利益を期待して誘因しているか否かにより判断することとし、例えば患者による体験手記や新聞記事等は、特定の病院等を推薦している内容であったとしても、①でいう「誘因性」の要件を満たさないものとして取り扱うこと。
また、②でいう「特定性」については、複数の提供者又は医療機関を対象としている場合も該当するものであること。

Ⅱ-2 実質的に広告と判断されるもの

広告規制の対象となることを避ける意図をもって外形的に上記1の①~③に該当することを回避するための表現を行うことも予想される。しかしながら、例えば、

 「これは広告ではありません」、「これは、取材に基づく記事であり、患者を誘引するものではありません」との記述があるが、病院名等が記載されている

 「医療法の広告規制のため、具体的な病院名は記載できません」といった表示をしているが、住所や電話番号等から病院等が特定可能である

 治療法等を紹介する書籍や冊子等の形態をとっているが、特定(複数の場合も含む)の病院等の名称が記載されていたり、電話番号やホームページアドレスが記載されていることで、一般人が容易に特定の病院等を認知できる

等のような場合には、実質的に上記1に掲げた①~③の要件を全て満たす場合には、広告に該当するものとして取り扱うことが適当である。

Ⅱ-3 暗示的又は間接的な表現の扱い

医療に関する広告については、直接的に表現しているものだけではなく、当該情報物を全体でみた場合に、暗示的や間接的に医療に関する広告であると一般人が認識し得るものも含まれる。このため、例えば、次のようものは、医療に関する広告に該当するので、広告可能とされていない事項や虚偽・誇大広告等に該当する場合には、認められないものである。

 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
(例)①最高の医療の提供を約束!
 「最高」は最上級の比較表現であり、認められない。また、「最高の医療の提供は客観的な事実であると証明できない事項でもある。

 写真、イラスト、絵文字によるもの
(例)①病院の建物の写真
   当該病院の写真であれば、広告可能であるが、他の病院の写真は認められない。
   ②病人が回復して元気になる姿のイラスト
   効果に関する事項は広告可能な事項ではなく、また、回復を保障すると誤認を与えるおそれがあり、誇大広告に該当するので、認められない。

 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、体験談などを引用又は掲載することによるもの
(例)①新聞が特集した治療法の記事を引用するもの
    法第6条の5第1項第11号で認められた「治療の内容」の範囲であり、改善率等の広告が認められていない事項が含まれていない場合には、引用可能である。
   ②雑誌や新聞で紹介された旨の記載
自らの医療機関や勤務する医師等が新聞や雑誌等で紹介された旨は、広告可能な事項ではないので、広告は認められない。
   ③専門家の談話を引用するもの
専門家の談話は、その内容が保障されたものと著しい誤認を患者等に与える恐れがあるものであり、広告可能な事項ではない。また、薬事法上の未承認医薬品を使用した治療の内容も、広告可能な事項ではなく、広告は認められない。

Ⅱ-4 医療に関する広告規制の対象者

(1)医療に関する広告規制の対象者
医師若しくは歯科医師又は病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、患者又は一般人等、何人も広告規制の対象とされる。また、日本国内向けの広告であれば、外国人や海外の事業者等による広告(海外から発送されるダイレクトメールやEメール等)も規制の対象になる。

(2)広告媒体との関係
広告依頼者から依頼を受けて、広告を企画・制作する広告代理店や広告を掲載する新聞、雑誌、テレビ、出版等の業務に携わる者は、依頼を受けて広告依頼者の責任により作成又は作成された広告を掲載、放送等するにあたっては、当該広告の内容が虚偽誇大なもの等、法や本指針に違反する内容となっていないか十分留意する必要があり、違反等があった場合には、広告依頼者とともに法や本指針による指導等の対象となり得る。

Ⅱ-5 広告に該当する媒体の具体例

広告の規制対象となる媒体の具体例としては、例えば、次に掲げるものが挙げられる。

 チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む)

 ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの

 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む)、映写又は電光によるもの

 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上のバナー広告等)

 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの

Ⅱ-6 通常、医療に関する広告とは見なされないものの具体例

(1)学術論文、学術発表等
学会や専門誌等で発表される学術論文、ポスター、講演等は、社会通念上、広告と見なされることはない。これらは、本指針第2の1に掲げた①~③の要件のうち、①の「誘因性」を有さないため、本指針上も原則として、広告に該当しない。
ただし、学術論文等を装いつつ、不特定多数にダイレクトメールで送る等により、実際には特定の医療機関(複数の場合を含む。)に対する患者の受診等を増やすことを目的としていると認められる場合には、①の「誘因性」を有すると判断し、①~③の全ての要件を満たす場合には、広告として扱うことが適当である。

(2)新聞や雑誌等での記事
新聞や雑誌等での記事は、本指針第2の1に掲げた①~③の要件のうち、①の「誘因性」を通常は有さないため、本指針上も原則として、広告に該当しないが、費用を負担して記事の掲載を依頼することにより、患者等を誘因するいわゆる記事風広告は、広告規制の対象となる。

(3)体験談、手記等
自らや家族等からの伝聞により、実際の体験に基づいて、例えば、A病院を推薦する手記を個人Xが作成し、出版物やしおり等により公表した場合や口頭で評判を広める場合には、一見すると本指針第2の1に掲げた①~③の要件を満たすが、この場合には、個人XがA病院を推薦したにすぎず、①の「誘因性」の要件を満たさないため広告とは見なさない。
ただし、A病院からの依頼に基づく手記であったり、A病院から金銭等の謝礼を受けている又はその約束がある場合には、①の「誘因性」を有するものとして扱うことが適当である。また、個人XがA病院の経営に関与する者の家族等である場合にも、病院の利益のためと認められる場合には、①の「誘因性」を有するものとして扱う。

(4)院内掲示、院内で配布するパンフレット等
院内掲示、院内で配布するパンフレット等はその情報の受け手が、現に受診している患者等に限定されるため、本指針第2の1に掲げた①~③の要件のうち、③「一般人が認知できる状態にあること」(認知性)を満たすものではなく、情報提供や広報と解される。ただし、希望していない者にダイレクトメールで郵送されるパンフレット等については、③の一般人への認知性に関する要件を満たすものとして取り扱う。

(5)患者等からの申し出に応じて送付するパンフレットやEメール
患者等からの申し出に応じて送付するパンフレットやEメールは、本指針第2の1に掲げた①~③の要件のうち、③の「認知性」を満たすものではなく、医療機関に関する情報や当該医療機関での治療法等に関する情報を入手しようとする特定の者に向けた情報提供や広報と解されるため、広告とは見なされない。
病院等のメールマガジンも、その病院等から送られてくることを希望した患者等へ送信される場合には、広告とは見なされないが、病院等とは直接関係がないメールマガジンは、当該メールマガジンの配信希望者や会員に限定されるとしても、当該病院等とは関係のない一般人向けとなるので、③の一般人への認知性に関する要件を満たすものとして扱うことができる。

(6)医療機関の職員募集に関する広告……(略)

(7)インターネット上のホームページ
インターネット上の病院等のホームページは、当該病院等の情報を得ようとの目的を有する者が、URLを入力したり、検索サイトで検索した上で、閲覧するものであり、従来より情報提供や広報として扱ってきており、引き続き、原則として広告とは見なさない。
また、インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にした場合などでは、バナーに表示される内容や検索結果として画面上に表示される内容等については、実質的に本指針第2の1に掲げた①~③のいずれの要件も満たす場合には、広告として取り扱う。

以下、次号へ

厳しさを増す医療環境を乗り切るための提案 その2

医療業界の基礎知識(15)

医療業界の基礎知識 Vol.15は、前回に引き続き、 「厳しさを増す医療環境を乗り切るための提案」と題し、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

18年度改定時の付帯事項から見た20年度診療報酬改定等の方向性

厳しさを増す医療環境を乗り切るための提案18年度診療報酬改定の答申にあたって次のような付帯事項が記されています。代表的な項目を挙げると

  • 手術に係る施設基準については、再び診療報酬上の評価を行うことを視野に入れて、速やかに調査及び検証を実施する
  • 医療機能の分化・連携については、今回改定の影響を継続的に検証し、その結果を踏まえ、診療報酬体系における急性期医療の評価のあり方について引き続き検討する
  • DPCについては、円滑導入への配慮から制度の安定的な配慮に重点を移す観点も踏まえ、適切な算定ルールの構築について検討する
  • 慢性期入院医療については、診療報酬調査専門組織を通じて客観的なデータを収集し検証を行い、難病患者や障害者に対し、必要な医療の確保に十分配慮する
  • 新設項目や改定項目に係る検証を確実に行い、あわせて国民からの意見募集、公聴会の開催など、国民の意見を募集する仕組みの改善について検討する

等があります。

20年度・診療報酬改定のキーワード

上記のような付帯事項や改定内容及び最近の中医協等の審議動向から、20年度改定のキーワードとして次のような項目を読むことができます。

  1. 20年度の点数改定は、医療制度改革のポイントの一つである「高齢者医療制度の創設」と同時期に行われる見込み
  2. 医療と介護の役割を明確化し、医療から介護等への誘導が成される可能性が高い
  3. 患者の視点を重視するために、患者自身が選択や内容確認できる情報開示の推進を図り、地域完結型医療を目指した地域医療機能の分化と連携体制(自院の役割の明確化)の評価と確立を図る
  4. DPCによる診療(治療)情報の開示
  5. IT化の推進と急性期病院への評価(DPC制度等)
  6. 生活習慣病の重症化予防のための健診等への取組み評価
  7. 新しい医療計画制度の主要9事業の推進と評価
  8. 高齢者医療制度の創設を踏まえ、多様な居住の場を確立(長期療養中心の入院患者を誘導、24時間診療可能な在宅医療の評価、訪問診療・訪問看護体制の評価・充実、終末期医療への対応 等)
  9. 急性期入院医療の質の確保と慢性期入院医療(精神科を含む)の必要な患者の容態に応じた評価(急性期医療患者と慢性期医療患者の症状別見極め等)
  10. 外来診療のあり方と病診の役割分担の評価見直し
  11. 医療従事者の質と数の確保(看護師、薬剤師、PT・OT等)
  12. 診療データ情報を基にした医療の標準化(包括化?)の推進

4月以降、以上のような基本項目をベースに中医協の審議が活発化しますが、大きな課題は「高齢者医療制度の創設」と同時期の改定見込みから、医療と介護の役割を明確化し、医療保険から介護保険等への誘導が成される可能性が高い、と考えられます。特にリハビリテーションにおいては次のようなことが検討されており、リハビリを提供する医療機関にとっては、今後の審議動向を的確に捉え対応することが大切です。

【参考資料】

厳しさを増す医療環境を乗り切るための提案 その1

医療業界の基礎知識(14)

医療業界の基礎知識 Vol.14は、前回に引き続き、2007年度の医療提供体制のあり方について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

厳しさを増す医療環境を乗り切るための提案 その1

4月から昨年の第164通常国会で成立した医療制度改革関連法案に伴う新しい医療計画が具体的に始動します。最大のポイントは、第5次医療法改正による諸事項の施行と、これによって起こる医療提供体制の変化及び平成20年度の診療報酬改定に対する審議動向です。
平成17年度に策定された「医療制度改革の基本的視点」が、「国民に安心で良質な医療提供体制を確保して行くことがいまや国民的な緊急の課題である」として、①患者の視点の尊重 ②質が高く効率的な医療の提供 ③医療の基盤整備 に重点を置き、診療報酬と介護報酬の同時改定や健保法改正の一部先取り施行、第5次医療法改正など諸制度の見直しが行われたのが平成18年でした。

今後の医療提供体制のあり方

これらを受けた平成19年度は、これまでの医療提供体制のあり方を大きく見直し、「患者の視点に立った質の高い医療を効率的に提供する」医療連携体制(診療ネットワーク)の構築を積極的に行う年になります。
医療計画の見直しの狙いは「自分が住んでいる地域の医療機関で現在どのような診療が行われているのか、住民や患者の視点に立ってわかりやすく示す」ことを前提に、住民や患者への積極的な情報提供を行うことにあります。
ある識者は、現在の医療環境を「4P時代に入った」と言い、次のように解説しています。

  1. Prediction   ⇒ 多くの疾患で予測が可能になった
  2. Prevention  ⇒ 予防を重点とした政策で、医療費の抑制・削減策が進む
  3. Participation ⇒ 地域医療への参加、疾病ごとの協同への参加
  4. Personal    ⇒ 個別化による患者個々に対応した医療、相互選択へ

こうした医療環境を的確に捉え、いかに対応するかが重要なポイントであることは論を待ちません。前回も記しましたが、日本の医療は「国民皆保険制度」の中で「公定価格」として守られ、「いつでも、誰でも、同じ医療が公定価格で受診できる」ことが基本です。しかし現在のようなフラットな社会で情報過多の時代は患者の選択肢も多様化しています。

こうした中で識者の方々の代表的な言葉として言われるのが

  1. 価格が同一であるならば、技術(サイエンスの進歩にあわせたアートで)とサービスで競争すべきだ
  2. 医療機関は、地域の住民や患者が期待する役割を明確化し、専門性と機能の充実を図るべきではないか
  3. 住民や患者に対し、どのような医療が提供できるのか、提供できない場合はどう対応するのか。積極的に情報提供すべきではないか

などです。

「選び、選ばれる相互シェアリングの時代」へ

選び、選ばれる相互シェアリングの時代第5次医療法改正では、こうした識者の意見を取り入れながら、医師や看護師及びPT・OTなどのコ・メディカルを中心としたマンパワーの充実と施設基準の見直しによる役割の明確化を図り、住民や患者が期待する医療提供体制の確立を目指しています。この結果、医療も「選び、選ばれる相互シェアリングの時代」に入ることになります。即ち、

  1. 医療機関は専門性や機能、技術に応じた対応やネットワークにおける役割の発揮を通して患者を選ぶ時代に
  2. 患者はセカンド・オピニオンの活用や、公私にわたる幅広い情報ソースを活用した情報内容の選択を通して、医療機関を選ぶ時代に

なってきます。
近い将来、行政が特定の医療機関名の入った医療連携体制を公開することが考えられます。こうなれば医療機関のブランド化が進むことは必至で、否応なしに地域の医療提供体制に変化が起きてきます。

以下、次号に続きます。

医療も選び、選ばれる相互シェアリングの時代へ 2

医療業界の基礎知識(13)

医療業界の基礎知識 Vol.13は、前回に引き続き、2007年度の医療提供体制のあり方について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。(2007年2月6日更新)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

医療も選び、選ばれる相互シェアリングの時代へこの連載を通じて「医療環境が大きく変わってきた」ことを何度も記しました。2007年度は診療報酬改定もなく、医療機関によっては「この1年間は何にも変わらない」と安閑としているところも見受けられます。また、MRやMSにしても「今年は細かい診療報酬点数などを気にせず仕事ができる」と、のんびり構えている人が少なからずいます。
しかし医療機関の多くは、「第5次医療法改正が施行される今年が最も重要な年」と捉え院内研修会は勿論のこと、医師会や病院協会等の会合や催しに積極的に参加しています。

医療人の関心事は何か

こうした中で昨年の10月以降、医師会、学会地方部会、病院等から要請される主な講演テーマやメール等を通じて寄せられる関心事の多くが次のような項目に集約されています。

  • 第5次医療法改正が今後の医療経営に与える影響
       (第6次以降の改正に向けて予想されるポイントと新しい医療提供体制について)
  • 今後の医療提供体制と急性期病院の方向性及び医療従事者のあるべき姿
  • 医療法人制度改正のポイントと影響
       (社会医療法人設立の意味するもの等)
  • 在宅医療のあり方と医療連携の進め方
       (在宅療養支援診療所の今後等)
  • 保険者機能の強化と政管健保改革の動向及び医療への影響
  • 2008年度診療報酬改定を踏まえた医療経営環境変化への対応

ある識者は、現在の医療環境を「4P時代に入った」と言い、次のように解説しています。

1.Prediction ⇒ 多くの疾患で予測が可能になった
2.Prevention ⇒ 予防を重点とした政策で、医療費の抑制・削減策が進む
3.Participation ⇒ 地域医療への参加、疾病ごとの協同への参加
4.Personal ⇒ 個別化による患者個々に対応した医療、相互選択へ

こうした医療環境を的確に捉え、いかに対応するかが重要なポイントであることは論を待ちません。

新たな視点による医療機能の分化と連携の促進策

昨年の診療報酬改定では「新たな視点による医療機能の分化と連携の促進策」として、

  • 連携パスの評価
  • 地域医療支援病院の評価
  • 在宅療養支援診療所の新設

など、地域医療に貢献する医療機関に対する診療報酬のあり方を検討し評価しました。併せて改定答申時の付帯事項の中にも「質の高い医療を効率的に提供するための医療機能の分化・連携については、今回改定の影響について継続的に検証を行い、その結果を踏まえ、診療報酬体系における急性期医療の評価のあり方について、引き続き検討を行うこと」と記されています。

また、昨年12月25日に「規制改革・民間開放推進会議」が政府に最終答申した中においても同じ文言(地域医療に貢献する医療機関に対する診療報酬のあり方)を入れ、2007年度に結論を出し2008年度の診療報酬改定で評価する方向を打ち出しています。

医療は患者が主体

より患者の立場に立った医療へこのように医療が、患者を主体とした「連携と選択」を評価する方向に進んでいます。医療経営における収入は「日当点(患者一人1日当たりの診療点数)× 患者数」が基本です。なかでも大切なことは、患者に来院してもらえるかどうかであり、「患者のために何が提供できるか」が基本であることは論をまちません。
こうした流れの中、日病の山本会長は新年恒例の会合で、「第5次医療法改正を通して、医療機関の情報開示制度が重要な役割を果たす。病院の信頼を取り戻す非常に良い機会。しっかり取り組むべきだ」と述べ、地域における他の医療機関との連携強化の重要性や、「地域チーム医療=ネットワーク型医療」の中で患者情報の共有化をとおし、それぞれの医療機関が患者のために課せられた役割を果たす時代になってきたことを強調しています。

すでにこうした取組みは各地域や多くの医療機関に見られます。ここでは具体例を挙げればきりがないので避けますが、「医療は公定価格で守られている」ことから、

  • 「価格が同一であるならば技術と(サイエンスの進歩にあわせたアートで)サービスで競争すべきだ」
  • 「医療機関は、地域(住まう患者)が期待する役割を明確化し、専門性と機能の充実を図るべきではないか」
  • 「患者にどのような医療が提供できるのか、提供できない場合はどう対応するのか情報提供すべきではないか」

とする多くの識者の論を重視すると同時に、患者のために「課せられた役割」を果たすためにも、自院としてどう対応するのか。明確に打ち出し評価を得る努力をなすべき時代である、といえるのです。

医療も選び、選ばれる相互シェアリングの時代へ 1

医療業界の基礎知識(12)

医療業界の基礎知識 Vol.12は、2007年度の医療提供体制のあり方について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が分かりやすくご紹介しています。(2007年1月10日更新)

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

新しい医療計画の始動

明けましておめでとうございます。2007年が明けて4月から新しい医療計画が始動します。最大のポイントは第5次医療法改正にともなう医療提供体制の変化です。こうしたことから今、各地医師会、学会地方部会、病院等からの講演要請テーマも

1.第5次医療法改正が今後の医療経営に与える影響
2.医療提供体制の変化が医療機関の機能と役割に与える影響
3.医療連携体制のあり方と進め方(フラット型連携体制と診療ネットワーク 等)
4.患者さんから選ばれる医療機関になるために
5.医療法人制度改正のポイントと影響(社会医療法人設立の意味するもの 等)

などがあり、テーマにあわせて送られてくる事前の質問も多岐に亘っています。2005年度に策定された「医療制度改革の基本的視点」が、「国民に安心で良質な医療提供体制を確保して行くことがいまや国民的な緊急の課題である」として、

1.患者の視点の尊重
2.質が高く効率的な医療の提供
3.医療の基盤整備

に重点を置き、診療報酬と介護報酬の同時改定や健保法改正の一部先取り施行、第5次医療法改正など諸制度の見直しが行われたのが2006年でした。

より患者の立場に立った医療へ

より患者の立場に立った医療へこれらを受けた2007年度は、これまでの医療提供体制のあり方を大きく見直し、「患者の視点に立った質の高い医療を効率的に提供する」医療連携体制(診療ネットワーク)の構築を積極的に行う初年度になります。
医療計画の見直しの狙いは「自分が住んでいる地域の医療機関で現在どのような診療が行われているのか、住民や患者の視点に立ってわかりやすく示す」ことを前提に、住民や患者への積極的な情報提供を行うことにあります(情報提供の内容については前2回の内容を参考にしてください)。 

日本の医療は「国民皆保険制度」の中で「公定価格」として守られ、「いつでも、誰でも、同じ医療が公定価格で受診できる」ことが基本です。しかし現在のようなフラットな社会で情報過多の時代は患者の選択肢も多様化しています。
 こうした中で識者の方々の代表的な言葉として言われるのが、

  • 価格が同一であるならば、技術とサービスで競争すべきだ
  • 医療機関は、地域の住民や患者が期待する役割を明確化し、専門性と機能の充実を図るべきではないか?
  • 住民や患者に対し、どのような医療が提供できるのか?提供できない場合はどう対応するのか?積極的に情報提供すべきではないか?

などです。

相互シェアリングの時代

第5次医療法改正では、こうした識者の意見を取り入れながら、医師や看護師を中心としたマンパワーの充実と施設基準の見直しによる役割の明確化を図り、住民や患者が期待する医療提供体制の確立を目指しています。この結果、医療も「選び、選ばれる相互シェアリングの時代」に入ることになります。即ち、

  • 医療機関は専門性や機能、技術に応じた対応やネットワークにおける役割の発揮を通して患者を選ぶ時代に
  • 患者はセカンド・オピニオンの活用や、公私にわたる幅広い情報ソースを活用した情報内容の選択を通して、医療機関を選ぶ時代になってきます。

近い将来、行政が特定の医療機関名の入った医療連携体制を公開することが考えられます。こうなれば医療機関のブランド化が進むことは必至で、否応なしに地域の医療提供体制に変化が起きてきます。
次回は、こうした変化への対応について、いくつかの事例を加えてまとめてみます。

追記)通常国会に提出する「2007年度国家予算案」の政府原案がまとまりました。医療費の1/4を国家予算で対応することから、こうした数値を整理することが重要であると考えます。参考までに「2007年度予算案の概要と主要経済指標の政府見通し」を掲載しました。

第5次医療法改正のポイント その4

医療業界の基礎知識(11)

医療業界の基礎知識 Vol.11は、引き続き第5次医療法改正について、薬局における「機能情報公表制度」の要点を、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章がまとめてみました。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

第5次医療法改正のポイント前回の③で、第5次医療法改正の中で最も重要な改正ポイントの一つが「患者に対する情報提供の推進」にあると記し、併せて住民・患者の視点に立った情報公表制度の確立について、厚労省が(案)としてまとめた『医療機関の医療機能に関する「一定の情報」のあり方』の要点を記しました。
今回は、第5次医療法改正で「医療提供施設」としての役割が明確化された薬局における「機能情報公表制度」の要点をまとめてみました。

薬局機能情報公表制度について(案)(項目ごとの細部は略)

1. 目的

薬局に対し、当該薬局の有する機能に関する情報(薬局機能情報)について都道府県への報告を義務付け、都道府県において住民・患者への情報提供を実施する体制を整備し、報告を受けた情報を集約化するとともに、住民・患者に対しわかりやすい形で提供することにより、住民・患者の適切な選択を支援することを目的とする。

2.情報の性格

  薬局が自らの責任において薬局機能情報を都道府県知事に対して報告し、報告を受けた都道府県知事は、基本的に当該薬局機能情報をそのまま公表するものである。
  薬局は、正確かつ適切な情報を提供するとともに、当該薬局又はかかりつけ薬剤師等が、住民・患者からの相談等に適切に応じるよう努めなければならない。
  また、薬局機能情報について誤りがあった場合、当該薬局は速やかにその訂正を申し出ることとし、都道府県知事は所要の是正措置を行うものとする。

3.実施主体

(医療機関と同じのため3を参照してください)

4.実施体制

(1)都道府県における運営体制(一部略)
・住民・患者からの薬局機能情報についての質問・相談及びそれに対する助言等については案内体制を整備するなどの必要な措置を講じて、適切に行うものとする。

・本制度は、薬局機能情報について、都道府県が報告を受け、公表することを義務付けるものであるが、各都道府県で救急・災害医療情報を含む独自の情報提供体制を既に実施している場合において、これと別に整備を行うことを求めるものではない。
また、情報の範囲についても、国で定める範囲を超える情報提供について認めないものではなく各都道府県が独自に、より積極的な情報の提供を行う場合には、その積極的な活用を図られたい。

(2)薬局機能情報の報告手続

1.薬局機能情報の報告時期
・薬局の開設者は、当該薬局の所在地の都道府県知事に対し、別に定める薬局機能情報について、毎年都道府県において定める時点における情報の報告を行うものとする。

・薬局の開設者は、報告した薬局機能情報のうち一定のものに修正又は変更があった場合には、都道府県知事に対して修正又は変更の報告を行うものとする。

2.薬局機能情報の報告方法
第5次医療法改正のポイント・都道府県は、薬局からの定期的な報告に際して、薬局機能情報に関する調査票を薬局に送付することとし、薬局は当該薬局の機能に関する情報を調査票に記載し書面又は電子媒体により提出することとする。
都道府県知事は、情報の正確性を確保する観点から、定期的な報告に際して、保健所設置市・特別区に対し、当該保健所設置市・特別区の区域内に所在する薬局の情報について、照会を行うことができることとする。
なお、調査票の様式については、別に定める事項を全て報告させる事項として含む限りにおいて、各都道府県の任意とする。また、2回目以降の記入方法については、前回報告のあった調査票の修正・変更をもって行うことができることとする。
 
・薬局機能情報の修正又は変更の報告については、

 薬局の名称、開設者、所在地、電話番号・FAX番号、開局日、開局時間については薬局の基本情報として重要な事項であるため、修正又は変更のあった時に、書面又は電子媒体で都道府県知事に対して報告を行わなければならない情報とする。
なお、薬事法第10条に基づく開設許可等の事項の変更の届出については、本制度に基づく修正又は変更の報告とは別に行うものとする。

 基本情報以外の情報については、年1回の定期的な報告で足りることとするが都道府県独自の取組により、変更時の随時更新を認めることとしても差し支えない。

 都道府県が、薬局自らがシステムにアクセスして薬局機能情報を変更できるシステムを有する場合には、情報の管理・運営の観点から、薬局が自ら変更した事項については、月1回を基本に、まとめて書面又は電子媒体で都道府県知事に報告することとする。

3.薬局機能情報の確認
・都道府県知事は、薬局から報告された薬局機能情報の内容について、確認が必要と認める場合には、保健所設置市・特別区等に対し、当該薬局に関する必要な情報の提供を求めることができる。

・都道府県知事は、薬局が報告を行わない場合や誤った報告を行ったと認める場合には、当該薬局の開設者に対し、当該薬局に関する必要な情報の提供を求めることができる。
なお、上記指導に従わない場合や故意に虚偽の報告を行うなど悪質であると認められる場合には、薬事法第72条の3に基づき、期間を定めて、薬局の開設者に対し、その報告又はその報告内容の是正を行わせることを命ずることができる。(以下 略)

(3)薬局機能情報の公表手続
1.薬局機能情報の公表時期
・都道府県知事は、薬局から報告された薬局機能情報については、速やかに公表しなければならない。

2.薬局機能情報の公表方法
・都道府県知事は、原則としてインターネットにより、薬局から報告された薬局機能情報を公表するものとする。(以下、略)

(4)薬局による情報提供
・薬局は、都道府県知事へ報告した事項について、当該薬局において閲覧に供しなければならない。その際、書面による閲覧に代えて、電子媒体による情報の提供を行うことができるものとする。

・薬局がこれらの提供を行っていない場合には、都道府県知事は、提供するよう指導することができるものとする。

・また、薬局においても、住民・患者からの当該薬局の薬局機能情報に関する相談・照会等に対して、適切に対応するよう努めるものとするとともに、身近なかかりつけ薬剤師においても、患者から他の薬局に対する相談・質問等があった場合は、適切に対応するよう努めるものとする。

(5)経過措置等
・本制度は、平成19年4月1日より施行されるが、各都道府県におけるシステム開発・改変時の準備が必要となることも踏まえ、平成19年度においては、平成19年度中に、薬局の名称、開設者、所在地、電話番号・FAX番号、開局日、開局時間の基本情報について公表することで足りることとし、公表方法としては、インターネットによる検索機能を有するシステムによって公表することに努めることとする。(以下、略)

  
【表1】 薬局機能に関する「一定の情報」(案)
(厚生労働省:「第2回医療情報の提供のあり方検討会」資料から)
第5次医療法改正のポイント

第5次医療法改正のポイント その3

医療業界の基礎知識(10)

医療業界の基礎知識 Vol.10は、引き続き第5次医療法改正について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が医療業界がポイントをまとめました。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

はじめに

このシリーズの1で、第5次医療法改正の基本が「良質で安心・信頼のできる医療サービスの提供」を図ることを目的に、次のような7つの項目からなっていることを記しました。

1:患者等への医療に関する情報提供の推進
2:医療計画の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進
  ・退院時調整等、在宅医療推進のための規定整備
3:地域や診療科による医師不足問題への対応・都道府県の「医療対策協議会」を制度化
4:医療安全の確保(医療安全支援センターの制度化)
5:医療法人制度改革(非営利性の徹底と社会医療法人の創設)
6:有床診療所に対する規制の見直し
7:その他

今回はこの項目のうちの1についてその概略をまとめてみました。

患者等への医療に関する情報提供の推進

第5次医療法改正の中で最も重要な改正ポイントがこの情報提供の推進にあるといっても過言ではありません。特に、患者等への情報提供をとおして、住民・患者の視点に立った「日常医療圏を単位とする医療連携体制」の確立が重要になってきました。過去の医療提供体制は医療機関個々の力量に任せた「一医療機関完結型医療」が主流でしたが、現在は連携を中心とした「地域完結型医療」に移っており、こうした流れの中で第5次医療法改正では、都道府県を通じた情報公表制度の確立が図られることになっています。

その基本は、都道府県ごとに、日常医療圏内の医療機能、患者の疾病動向を把握した上で、診療ネットワークを構築することとし、同時に医療機関の管理者に対しては、

1:管理・運営及びサービスやアメニティー等の体制に関する事項
2:情報提供や医療連携体制に関する事項
3:医療の内容や実績・結果に関する事項

などの「一定の情報」を都道府県に報告することが義務付けられます。あわせてこの医療機能に関する情報は、都道府県の“お墨付き情報”として地域住民や他の医療機関に公表されるようになっています。

医療機能情報公表制度の実施要領(案)

第5次医療法改正を受けて厚生労働省は9月22日に「第1回医療情報の提供のあり方検討会」を開催し「医療機能情報公表制度の実施要領案」をまとめ公表しました。その概要は次のとおりです(項目ごとの細部は略)。

1.目的

  医療機関に対し、当該医療機関の有する医療機能情報について都道府県への報告を義務付け、都道府県は報告を受けた情報を集約化するとともに、住民・患者に対し分りやすい形で提供することにより、医療機関の適切な選択を支援することを目的とする。

2. 実施主体

  都道府県を実施主体とする。

3. 実施体制(※図1の制度開始時のフローチャート参照)

(1)都道府県における運営体制

(2)医療機能の報告手続き
1.医療機能情報の報告時期(別に定める医療機能情報について毎年報告する)
2.医療機能情報の報告方法(医療機関は、機能情報を規定の調査票に記載し書面又は 電子媒体により提出する)
 3.医療機能情報の確認(都道府県知事は、医療機関から報告された医療機能情報の内容について、保健所設置市・特別区等に対し当該医療機関に関する必要な情報の提供を求めることができる)

(3)医療機能情報の公表手続
1.医療機能情報の公表時期(医療機関から報告された情報は速やかに公表する)
2.医療機能情報の公表方法(原則としてインターネットにより公表する)

(4)医療機能情報の集約
 ・国への報告(2次医療圏毎に集計し、毎年1回厚生労働大臣に報告する)

(5)医療機関による情報提供
 ・医療機関は、都道府県知事に報告した事項について、当該医療機関において書面又は電子媒体による閲覧に供すること。
 ・ 医療機関が提供を行っていない場合には、都道府県知事は指導することができる

(6)経過措置等
 ・平成19年4月1日より施行されるが、各都道府県におけるシステム開発・改変等の準備が必要となることも踏まえ、平成19年度においては、年度中に、医療機関の名称、開設者、所在地、電話番号、診療科目、診療日、診療時間、病床種別及び届出・許可病床数の基幹情報について、検索機能を有するシステムによって公表することをもって足りることとする。

第1回検討会では厚生労働省から示された医療機能に関する情報について検討が重ねられましたが、今後、年度末までの検討会を通して医療機能に関する情報内容が整理され、より明確な情報が公表されることになっています。

図1 情報公表制度の概要(制度開始時のフローチャート)     
   (厚生労働省:「第1回医療情報の提供のあり方検討会」資料から)
第1回医療情報の提供のあり方検討会

表1 医療機関の医療機能に関する「一定の情報」
   (厚生労働省:「第1回医療情報の提供のあり方検討会」資料から)
  (資料出典:厚生労働省発表資料より作成)

医療機関の医療機能に関する情報【病院】

第5次医療法改正のポイント その2

医療業界の基礎知識(9)

今回は第5次医療法改正の中から「医療計画制度の見直し等を通じた医療機能の分化・連携」について、そのポイントと改正が与える医療市場への影響について解説します。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

医療機能の分化と役割の明確化

「医療計画制度の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進」の最大のポイントは、現行の医療計画制度を見直し、今までの急性期病院⇒亜急性期病院⇒慢性期病院⇒診療所⇒在宅といった病院の規模や患者の受療行動による流れを、患者のシェアリングに基づき地域内で医療が完結できるシステムの構築、すなわち地域連携パス等を通じ医療機能の分化・連携を推進することで、患者に切れ目のない医療を提供することにあります。

特に脳卒中やがん、小児救急医療など(※)、患者が期待する医療を切れ目のない的確な提供体制の中で行い、患者の転院・退院後も考慮した適切な医療提供体制の確保と早期に在宅生活へ復帰できるようにすることがポイントになっています。

医療計画と連動する医療連携体制の構築

このような体制を考慮し厚生労働省が示した疾病別の医療連携体制のイメージは図のとおりで、疾患別に次の9つの対策が示されています。
(※)①脳卒中対策 ②がん対策 ③急性心筋梗塞対策 ④糖尿病対策 ⑤小児救急医療対策   ⑥救急対策 ⑦災害対策 ⑧周産期対策 ⑨へき地医療対策 

図Ⅰ第5次医療法改正のポイント図1

図Ⅱ第5次医療法改正のポイント図2

医療法の看護師配置標準等の見直しと保険の適用関係

また、厚労省は「良質で安心・信頼のできる医療サービスの提供」を図る一環として、医療施設別・病床区分別の新人員配置基準(図Ⅲ)を設定すると同時に、図Ⅳのように「医療法の看護師配置標準等の見直しと保険の適用関係(案)」を明示しています。これによって現行の療養病床の看護配置基準が厳しくなると同時に、介護療養病床など看護配置基準を満たさない病院は経過措置期間を経たあと介護施設へ移行させるなど「医療の必要性に応じた療養病床の再編成」を行い、2011年度末には現在ある38万床の療養病床を15万床までに減床することになっています。
(この問題については次回、解説します)

図Ⅲ第5次医療法改正のポイント図3

図Ⅳ第5次医療法改正のポイント図4

大きく変わる医療提供体制

2006年度の診療報酬改定が医療経営に大きな影響を与えたことは既に報告しましたが、第5次医療法改正は施設基準や施設機能の大幅見直しにあり、医療機関にとって、より大きな影響と負担を与える可能性があります。

現在の医療環境は医療機関に「良質な医療を効率よく提供する」ことを求めています。そのため、過去の医療供給体制⇒現在の医療提供体制⇒を経て、これからは制度改革で、より充実した医療提供体制を確保する時代に入ります。そのため医療施設は、

(1) 絶対必要な(伸びて欲しい)医療機関
(2) 育てるべき(政策医療等)医療機関
(3) 継続・維持すべき(へき地医療等)医療機関
(4) あれば便利な(現状でよい)医療機関
(5) 無くなっても仕方がない(他の施設へ移って欲しい)医療機関

のように、行政側が政策的に(診療報酬改定や第6次、7次の医療法改正等で)誘導する可能性が高く、その動向を見誤ると存在価値そのものを失することにもなりかねません。次回は、これらのことを含め医療提供体制の変化について、より具体的に解説します。
(資料出典:厚生労働省発表資料より作成)

第5次医療法改正のポイント その1

医療業界の基礎知識(8)

医療業界の基礎知識 Vol.8は、今後の医療提供体制に直接影響を与える「第5次医療法改正」について、ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章が医療業界がポイントをまとめました。

ファーマネットワーク シニアコンサルタント 佐藤 章(さとう あきら)

製薬会社にて約30年プロパー(MR)と教育研修部門を担当。 1991年株式会社ユート・ブレーン入社、同社役員を歴任後、同社顧問に就任。現在に至る。著書に「医薬品流通の打つべき手」(ユートブレーン刊)他多数。また、医師会・病院職員関係・薬剤師会関係・学会その他において講演など幅広く活躍中。

第5次医療法改正のポイント・・・その1

第5次医療法改正のポイント6月20日に閉会した第164通常国会で、今後の医療動向を左右する二つの大きな医療制度改革法案(①健康保険法等の一部を改正する法律 ②良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律)が成立しました。
今回はこの二つの法案の中から、今後の医療提供体制に直接影響を与える「第5次医療法改正」について、そのポイントをまとめてみました(なお、改正医療法の施行は2007年4月1日からになっています)。
今回の改正は過去最大の改正になるといわれ、改正法案名も「医療法等改正案―良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律―」にあるように大変長い名称が使われています。
第5次医療法改正の基本は「良質で安心・信頼のできる医療サービスの提供」を図ることを目的に、次のような7つの基本項目からなっています。

1.患者等への医療に関する情報提供の推進
2.医療計画の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進
  ・退院時調整等、在宅医療推進のための規定整備
3.地域や診療科による医師不足問題への対応
  ・都道府県の「医療対策協議会」を制度化
4.医療安全の確保(医療安全支援センターの制度化)
5.医療法人制度改革(非営利性の徹底と社会医療法人の創設)
6.有床診療所に対する規制の見直し
7.その他

患者への情報提供、医療機能の分化・連携、医療従事者の配置基準、医療法人制度改革等が改正のポイント

改正の基本は上記のとおりですが、その中から代表的な項目を取り上げ、ポイントをまとめてみると次のようになります。

1 患者等への医療に関する情報提供の推進

患者等が医療に関する情報を十分に得られ、適切な医療を選択できるよう支援する。

 ・都道府県が医療機関等に関する情報を集約し、分かりやすく住民に情報提供し、住民からの相談等に適切に応じる仕組みの制度化
 ・入退院時における治療計画等の文書による説明の位置付け
 ・広告規制の見直しによる広告できる事項の拡大

2 医療計画制度の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進

医療計画制度を見直し、地域連携クリティカルパスの普及等を通じ、医療機能の分化・連携を推進し、切れ目のない医療を提供する。早期に在宅生活へ復帰できるよう在宅医療の充実を図る。

 ・医療計画に、脳卒中、がん、小児救急医療等事業別の具体的な医療連携体制を位置付け
 ・医療計画に分かりやすい指標と数値目標を明示し、事後評価できる仕組みとすること
 ・退院時調整等在宅医療の推進のための規定整備

5 医療法人制度改革

医業経営の透明性や効率性の向上を目指す。また、公立病院等が担ってきた分野を扱う医療法人制度を創設する。

 ・解散時の残余財産の帰属先の制限等医療法人の非営利性の徹底
 ・医療計画に位置付けられたへき地医療、小児救急医療等(社会医療事業)を担うべき新たな医療法人類型(「社会医療法人」)の創設等

6 有床診療所に対する規制の見直し

 ・有床診療所のこれまで果たしてきた役割や今日提供している医療の状況等を踏まえ、48時間の入院期間制限規定を廃止する
 ・上記規定の廃止に伴い、患者の緊急時に対応する体制確保の義務づけや医療従事者の配置等の情報開示を行わせるとともに、医療計画の基準病床数制限の対象とする
  (新制度施行後に新設される施設)
 ・他の医療機関の医師との連携等、患者の緊急時に対応する体制確保を管理者に義務づけ
 ・医療従事者の配置等一定の情報についての院内掲示の義務づけ
   ⇒ 情報開示を通じた医療の質の確保 
  ※ 有床診療所の見直しは、平成19年1月1日から

7 その他(薬局を医療提供施設として位置づける)

医療提供施設に位置付けることで、薬局に対して、調剤を中心とする質の高い医療サービスを提供し、地域医療に貢献する責務を求める
 ・薬局は、今回の改正において、
  ①都道府県を通じた薬局に関する一定の情報の公表制度、
  ②医薬品等の安全管理体制の整備など、医療機関に求められることと同様の措置を講ずる、
  ③調剤を含めた医薬品の販売等に当たっての情報提供・相談体制の整備を図ること

 以上のような改正基本項目が施行・実施されることにより、2007年4月以降、医療提供体制に大きな変化が起きてきます。次回のその②では、医療機関の機能分化・連携や人員配置基準の見直し等によって医療市場はどう変化するのか、解説します。